第9話 シンディの実力

 俺の今回の保険はこれだ。


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 軽傷プチヒール魔法保険ロング

  怪我に対して何度でもプチヒール魔法が掛かります。


  保険料:銀貨1枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一年

  払い戻し:プチヒールを何度でも

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 傷害ヒール魔法保険ロング

  怪我に対して何度でもヒール魔法が掛かります。


  保険料:銀貨10枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一年

  払い戻し:ヒール魔法を何度でも

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 傷害ハイヒール魔法保険ロング

  怪我に対して何度でもハイヒール魔法が掛かります。


  保険料:金貨1枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一年

  払い戻し:ハイヒール魔法を何度でも

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 重傷エクストラヒール魔法保険ロング

  重傷を負った時にエクストラヒールが何度も掛かります。


  保険料:金貨10枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一年

  払い戻し:エクストラヒール魔法を何度でも

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 ふふふ、ゾンビになってやる。

 名付けてゾンビセット。

 軽傷から重傷までを幅広くカバー。

 行くぞ熊野郎。


 俺はジェノサイドベアーに愛用の短剣を抜いて突撃した。

 ジェノサイドベアーは前足で俺を肩口から切り裂く。

 エクストラヒールが掛かる。


「いてぇなこの野郎。お返しだ」


 俺は短剣でジェノサイドベアーの腕を切り落とした。

 うそーん、物凄い切れ味だ。

 魔法威力爆上げってのは伊達じゃない。


 シンディは付与師として生きたらいいんじゃないだろうか。


 痛みで半狂乱になるジェノサイドベアー。

 俺の体は擦り傷から骨が見える傷まで多様な傷が出来ては消えていく。


 大振りの隙をついて、もう片方の腕も切り落とした。

 目にハイライトの消えたジェノサイドベアー。

 更に首筋に切りつけて首をはね戦闘は終わった。


 ゾンビ戦法の不味い点は血が戻って来ない事と痛みがある事だ。

 ターラとシンディには勧められないな。


「シンディ、お前は当分の間、付与師をやれ」

「嫌です、すいません」


「理由を聞いても良いか」

「魔法使いは恰好良いと思って、すみません。憧れて、すいません」


 あー、モチベーションは大事だな。

 付与師を強制的にやらせたら、パーティを抜けそうだ。


 ノーコンの原因があるはずなんだが。

 まあ、しょっちゅう天井に矢を突きさしていた弓道部の部員もいたっけな。

 そいつはたまに後ろに矢を放つ事もした。

 注意力が散漫なんだろうと思う。


 でもそれだけだと説明がつかないな。

 もしかして目が悪いのか。


「これは何本に見える」


 俺は指でチョキを作った。


「馬鹿にしてるなんて思って、すみません。二本です、すみません」


 乱視ではないのか。

 目は悪くなさそうだ。


「ステータスの器用は幾つだ」

「5ですみません」


 おー、不器用なのが判明。

 魔道具の設計は天才なんだから、頭は良いって事だよな。

 設計には集中力も要るだろう。

 ただ、不器用なだけか。

 レベルを上げれば人並みにはなるだろうが、手っ取り早く解決したい。


「魔道具設計の天才だったよな。器用さを増す魔道具は作れないのか」

「設計だけならできちゃって、すいません。過負荷で私が使うと一回しか持たなくて、すみません」

「幾らだ」

「高くて、すみません。金貨50枚ですみません」


 高いな。

 壊れるのは武器リペア魔法保険でなんとかなるとしても現状では如何ともしがたい。


 目算はたったから良いだろう。

 後はお金を貯めるだけだ。


 運搬の依頼を冒険者ギルドに出しジェノサイドベアーの死骸を運んでもらった。


 ええと依頼料が銀貨1枚でこれは失敗だからゼロ。

 ジェノサイドベアーの素材が金貨11枚の収入。

 服代で銀貨20枚の支出。

 復活保険が三人分で金貨15枚の支出。

 流れ弾損害保険が100回で金貨1枚の支出。

 ゾンビセットが約金貨11枚の支出。

 初依頼は失敗で、大赤字で終わった。

 まあ、予期してた事だから良いんだけどね。


 シンディの問題もなんとかなったし。

 ただこれだとドラゴンクラスの大物を狙わないと厳しいな。

 お守りの販売という副収入があるとは言え、ちょっとな。


 はっ、俺の周りの女って俺がカバーして成り立つようになってる。

 もしかしてシンディが運命の人。

 いやないな。

 ターラが運命の人ってのもないような気がしてきた。

 大穴でミリーか。

 本命? 本命はいないな。

 まだ運命の人は現れてないんだ。

 きっとそう。

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