第8話 パーティ初依頼

 森に行く前に一応。


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 生命リバイブ魔法保険

  死ぬと一度だけ生き返りのリバイブ魔法が掛かります。


  保険料:金貨5枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:リバイブ魔法

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 これを3人前ね。

 なんでかというと前回、ドラゴンが出たからだ。

 初依頼は危ないって言うしな。


 ターラの武器リペア魔法保険は9口余っているから今回は良いだろう。


 フォレストウルフの出現場所に肉屋で貰った食えない内臓を撒く。

 さて、いつでも来い。

 血の匂いに誘われて来たよフォレストウルフ。


「シンディやってみろ」

「ふはははっ、たぎるぜ。ファイヤーアロー」


 丸太ほどのファイヤーアローがフォレストウルフの脇を通り過ぎる。

 威力もさる事ながらシンディの性格が一変してる。


「ちっちぇ的だな。バリバリ行くぜ。ファイヤーアロー、ファイヤーアロー、ファイヤーアロー」

「キャイン」


 魔法は全て外れ、フォレストウルフが怯え始めた。


「どたまに来たぜ。ファイヤーアロー、ファイヤーアロー、ファイヤーアロー」

「ちょっと、どこに向かって撃ってるんだ。やめろ。あっ」


 丸太ほどのファイヤーアローが俺に当たる。

 俺は消し炭になり、すっぽんぽんで復活した。


「むっかっー。動くなよ犬っころ。ファイヤーアロー、ファイヤーアロー、ファイヤーアロー」

「えっ、次は私? あれっ?」


 ターラもすっぽんぽんになった。


「きゃ、きゃー、見ないで」


 俺はおもいっきりシンディの頭をパコーンと叩いた。


「ノーコンですみません」


 フォレストウルフはキャンキャン吠えながら、一目散に逃げて行った。

 この辺りは焼け野原になってるし、災害の二つ名に相応しい奴だ。


「シンディは罰として、街まで駆け足で行って、服を買ってくる事」

「はい、すいません」


 まったく、服代も馬鹿にならないな。


「なによ」


 ターラの裸身を目に焼き付けていたら、とがめられた。

 ターラは片腕で胸を、もう片方の手で股間を隠している。

 隙間からチラチラと見えて、とっても目の毒、いや薬だ。


「いやなんでも」

「裸を見られたからには私もうお嫁にいけない。責任取ってよ」

「ちょっと待て。今回の責任はシンディにあると思わないか」

「思うけど。今、見ているのはあなた」

「俺はまだ独身でいたいんだ」

「それは私もよ」

「じゃ具体的にどうしたらいいんだ」

「記憶を消させなさい。大槌でこつんとするだけだから」

「こつんで済むか。馬鹿野郎」

「何よ。馬鹿野郎はないでしょ」


「はっくしょん」

「くちゅん」


 俺は盛大に、ターラは可愛く、くしゃみした。

 プチキャアが発動したのが分かる。

 保険を掛けてて良かったよ。


 何故か二人して大笑いして微妙な空気が吹き飛んだ。


 一時間ぐらい経って、シンディが息を切らして服を買って戻ってきた。


「今回の事は問題点を先に聞かなかった俺が悪かったな。問題が分かれば対処は容易い」


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 魔法流れ弾損害保険

  魔法の流れ弾で、誰かに損害を与えた場合に魔法で補填します。


  保険料:銀貨1枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:人一人の魔法一回

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:損害に応じて

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 これだ。

 この保険をシンディに掛ける。

 これをそうだな。

 100回ぐらいかければいいか。


「よし、これでもう流れ弾は怖くないぞ」

「本当に大丈夫なんでしょうね。またすっぽんぽんは嫌よ」

「外しちゃってすいません」


「おあつらえ向きにジェノサイドベアーが来たぞ。シンディ、ゴー」

「へへへっ、俺の時代が来たぜ。消し炭になりな。ファイヤーアロー、……ファイヤーアロー。ひゃっはー、まだまだ行くぜ。ファイヤーアロー、……ファイヤーアロー」


 流れ弾に当たり、何度も俺達は生き返った。

 損害に服も含まれるのが嬉しい。

 すっぽんぽんは情けないからな。


 ジェノサイドベアーはというとよけるのに必死だ。

 近づくと当たり易くなる為に随分と距離が離れた。


「馬鹿やめろ」


 俺はシンディの頭をパコーンと叩いた。


「外して、すいません」

「分かってるなら良い」


 ジェノサイドベアーはと言うと突然の出来事に立ち尽くしている。

 俺>シンディ>ジェノサイドベアーの図式が出来たようだ。

 丸太ほどの魔法を乱射してればシンディが上位にくるのも頷ける。

 それより上位の俺の一挙手一投足をジェノサイドベアーは目を凝らして見ている。


「仕方ない俺がやる。シンディは見てろ。そうだ付与魔法は出来るか」

「得意で、すみません。シャープエッジ」


 距離がなければ外さないのか。

 シンディには悪いが最悪はシンディに接近戦をさせよう。

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