シンディとの出会い編

第6話 シンディとの出会い

「ドラゴン奇裸ーさん」


 朝の冒険者ギルドで受付のミリーからそう呼ばれた。


「なんかイントネーションが微妙に違うのだけど」

「気にしないの。お大尽様なんでしょ」

「おごってやらないぞ」

「期待してないわ。ぷぷぷ、全裸でドラゴンアタック。俺の股間の剣はドラゴンキラーだ。わははは。受ける。はらわたよじれそう」

「そんな事いっても良いのかなぁ」

「何よ。気になるじゃない早く言いなさいよ」

「この時期からだろ、鼻水が垂れまくりになるのは」

「何よ。馬鹿にしようっての。全裸を馬鹿にされたからって」

「奥さん奥さんちょっと聞いて良い保険があるの」


「今度は女の真似。保険って何よ」

「保険とは損害を補填してくれる制度だ。つまり鼻水という損害を補填してくれる」

「そんな事ができる訳ないでしょ」

「それが、出来るんだな。じゃじゃーん、保険」


 今回のチョイスはこれだ。


――――――――――――――――――――

 病状封印シール魔法保険

  病状が出た時にそれを魔法で封印します。


  保険料:金貨1枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:シール魔法

――――――――――――――――――――


「ほれ、金貨3枚。特に鼻水が酷くなる花があるだろ。そこに行って試して駄目だったらお金は返すよ」

「ほんとね。騙したら承知しないんだから」

「まいど」


 彼女からお金を貰ったので、俺はスキルを掛けた。


「見てなさい試してくるから。受付の交替をお願い」


 ミリーはそう言うとカウンターを飛び越え走って行ってしまった。

 そして速攻で戻ってきた。

 早いな、おい。


「どうやったのよ。教えないさい」

「教えて下さいカケル様だろ」

「ぐぬぬ。教えて下さいカケル様」

「封印魔法を使った」

「封印魔法って凶悪なアンデッドとかを封印するあれ」

「そうそう」

「病気を封印するなんて、どれだけ緻密な魔力操作が必要なのか分かってるの」

「うん、大魔導士でも無理かも。魔法系のスキル持っている覚醒者ならありえるかな」

「ふーん、ただの変態じゃないって事ね」


「そうだよ。ただの変態じゃない」

「いうなれば超ど級変態ね」

「変態は余分だ」

「はいはい。お仲間が呼んでるわよ。葉っぱの女と。暴力馬鹿が」

「言いたい放題だな」


 俺はターラとエリナの所に行った。

 エリナは女の子を一人連れている。


「助けてカケル。お金がもう無い」

「ちょっと待てターラ。ドラゴンの素材を売って、金貨100枚は渡したはずだぞ」

「武器屋のツケを全部払ったら亡くなったのよ。文字通り死んだの」

「死んだって。まあいいや。後でお金を貸してやる。依頼をすればまた金は貯まるさ。エリナの方はなんだ」


「結局パーティは抜ける事になったわ。金貨100枚を元手に魔道具屋を始める事にしたのよ。それでね。シンディをあなたのパーティに入れて、お願い。ほらシンディ挨拶」

「シンディです。魔法使いで、すみません。魔法学院卒業して、すみません」


 シンディはペコペコ謝っている。

 異常に腰の低い奴だな。

 生意気な奴よりましだけど。


「カケルだ」

「シンディは魔法学園の後輩なの。パーティに入れてくれるわよね。そうしたら裸を見た事を許してあげるわ」

「あれは事故だよ。お前だって俺の裸を見ただろう」

「汚い物を見せられた慰謝料を要求したいぐらいだわ」

「分かった。シンディをパーティに入れるから、この事はチャラにしよう。ちょうど魔法使いが欲しかったんだ」


「やった。ほらシンディもお礼を言いなさい」

「パーティに入ってすみません」

「トラブルになるといけないからシンディの二つ名を教えておくわ。災害よ」

「災害ですみません」


「物騒な二つ名だな。腰の低さの理由が分からない」

「すぐに分かるわ。この場では言わない事にしておく。じゃ、忙しいので」


 エリナが逃げるように去っていった。

 何だったんだろ。

 それにしても災害ねぇ。

 容姿はいいな。

 うつむき加減な所がなければ美少女だ。

 ロングヘアーで透き通るような美白だから、墓場のそばで会ったら幽霊にまちがえられそうだが。


 対してターラはショートカットに小麦色の肌。

 腕白小僧という雰囲気だ。

 出る所が無かったら少年と間違えていたと思う。

 まあ、スタイルの良さは認める。


「さあ、稼ぐわよ。あたしはターラ。よろしくね。スキルは筋力ムキムキよ」

「スキル持っててすみません。魔法威力爆上げですみません」


 シンディのスキルは魔法威力爆上げか、そりゃ災害かもな。

 可愛い顔してえげつない魔法を放つとみた。

 しかし、何で他のパーティに入らないんだ。

 気が弱くて無理なのか。

 腰は低そうだが、気は弱くないと思う。

 その証拠におどおどした仕草が見られない。

 まあ、一緒に依頼をこなせば、そこら辺が分かるだろう。

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