第4話 ざまぁ

「おい、助けはいるか? もちろん、ただじゃないがな」

「そうそう、いくら払える?」


「お前はカケル。個人ランクがEの奴の助けなんて要るものか」


 俺にチラリと視線をやったリックが答えた。


「そうよ、こんな奴の助けなんか借りたら何を要求されるか」


 リコがそう言って俺の提案を拒絶した。

 ドンクにドラゴンの尻尾の一撃が当たった。

 あー、飛ばされたな。

 骨折ぐらいしているだろう。

 気絶したのかドンクは立ち上がらない。


「リコ、お仲間が一人減ったぞ。次はリックかもな」

「くぅー、あなたに何が出来るって言うのよ」

「さぁな、とってもいい事さ。まずは金貨10枚だな」

「足元を見るなんて、酷い男。あんたなんか最初から眼中になかったわ」


 リックが尻尾の打撃で飛ばされた。


「リック、いま助けるから。エクストラヒール」


 リックにリコが駆け寄り回復魔法と回復スキルを同時に掛けた。


「私は彼に金貨10枚払うわ。私はカケルの追放に反対だったのよ」


 エリナがそう言って俺に財布の革袋を投げる。

 そうだったんだな。

 俺にも味方がいたって事か。


「まいどあり。保険」


 ええと、まずは生命リバイブ魔法保険だな。


――――――――――――――――――――

 生命リバイブ魔法保険

  死ぬと一度だけ生き返りのリバイブ魔法が掛かります。


  保険料:金貨5枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:リバイブ魔法

――――――――――――――――――――


 加入者はエリナと。

 俺にも賭けておこう。

 革袋にはまだ残金がある。


「追加で手数料もらうぞ」

「ほら、とんでもない要求してくるじゃない。私は死んでもあなたの世話にはならないわ」


 リックが戦線に復帰して、リコに余裕が出来たようだ。

 相変わらずの憎まれ口だ。


 ターラに掛ける保険はと。

 これが良いかな。


――――――――――――――――――――

 反撃カウンター保険

  攻撃を受けた時にカウンター攻撃を一度だけ返します。


  保険料:金貨1枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一週間

  払い戻し:カウンター

――――――――――――――――――――


 ドラゴンが大きく息を吸った。

 やばいぞ、でかいブレスがくる。


 俺は俊足を生かして一時撤退した。

 エリナがシールドの魔法を唱える。

 ブレスは辛うじて防げたようだ。


「次は魔力が持たない」


 エリナがそう宣言した。

 尻尾の一撃がリコを襲う。

 リコは地に伏せた。

 尻尾はリコの頭上すれすれを通り過ぎる。


「ひっ、この守銭奴。助けなさいよ」


 リコが財布を投げて寄越す。

 リックとザイダルもそれにならった。



 おー、流石Sランクパーティ。

 たんまり持っているな。

 リコとリックとザイダルとドンクに生命リバイブ魔法保険を掛けてやった。


 ドラゴンが大きく息を吸った。

 ドラゴンのブレスはリック達のパーティ全員を飲み込んだ。

 俺はとっさにターラに向かって財布を投げる。

 そして、ブレスは俺まで飲み込んだ。

 俺の傷害リフレクト魔法保険が発動してドラゴンの体から煙が上がる。


 装備が消し炭になりすっぽんぽんで復活する5人と俺。

 ドラゴンは苦鳴を上げた。

 ドラゴンでも火傷するんだな。


「あれっ生きてる。きゃ、見るな。この銭ゲバ。陰険親父」


 リコが悪態をつく。


「ここから先は別料金だが」

「この泥棒野郎、全部、持って行きなさいよ」

「ターラ、出番だ」

「やっぱり主役は最後に登場ね」


 俺はターラから財布を受け取り再び生命リバイブ魔法保険と傷害リフレクト魔法保険を俺に掛ける。


 そして、ターラと共に突進する。

 ドラゴンの尻尾がターラの大槌を跳ね飛ばしたかに見えた。

 ターラの手が骨折して曲がる。

 そして、大槌の軌道が不自然に変わりドラゴンの頭を痛打してダメージを与えた。


 砕ける大槌の柄。

 砕けた大槌にリペアが掛かり、傷害リフレクト魔法保険が発動してドラゴンの腕があらぬ方向へと曲がる。

 そして、ターラにハイヒール×3が掛かる。


 ドラゴンが怯んだ。

 チャンスだ。


――――――――――――――――――――

 強敵必殺の一撃保険

  レベル差が倍以上の敵に出会ったら適用されます。

  一度だけ必殺の一撃を叩き込みます。

  相手が必ず死ぬとは限りません。

  必殺はあくまでもイメージです。

  実際はレベル差があるほど攻撃力は増します。


  保険料:金貨5枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:掛け捨てカケル専用

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:一撃

――――――――――――――――――――


 これの出番だ。


「強敵必中必殺の一撃保険加入!」


 俺の手刀がドラゴンの火傷した場所に深々と刺さる。

 傷は大きくなり両断するぐらいの傷になった。

 必殺の看板に偽りなしだな。

 ドラゴンは息絶えた。


「こいつは良いや。このドラゴンの素材で大槌が何本買えるかな」


 ターラがそう感想を漏らした。

 リック達パーティは葉っぱで大事な所を隠している。


「服を買って来なさいよ」

「嫌だね。裸で帰るんだな。ターラ悪い、俺の服と。そうだなエリナの服だけは買って来てやれ」


「じゃあんた達の買い物の手間賃、金貨10枚ずつね」

「ターラ、俺からも取るのか。ひどいな」

「当たり前でしょ、異性に服を買うって事は気があるって事よ」

「しゃあない。リック達の財布から出そう。言っとくがドラゴンの素材は俺とターラとエリナで山分けだからな」

「そうね。私もそこまでがめつくないわ」


 ターラと一緒に来たドラゴンの素材を運搬する人達に俺はドラゴン奇裸ーと呼ばれた。

 リック達パーティは葉っぱの性衣と呼ばれた。

 元のパーティ名がオリハルコンの聖衣だからな。

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