第3話 保険を掛ける

 森から帰る途中で聞き慣れた声の悲鳴が上がる。

 元パーティの奴らだ。


「助けないの♪」


 ターラが歌うように嬉げに言った。


「何が嬉しいんだ」

「強敵って事は実入りが良いってことよね。救助代も貰ってウハウハよ」

「むしれるだけ、むしってやるか」


 俺とターラは悲鳴が上がった場所に急いだ。

 敵のモンスターの巨体が見えてくる。

 ドラゴンじゃねえか。


「おい、ターラやれるのか?」

「ちょっと強敵かもね。でも、武器さえ壊れなければ、余裕よ」


 ターラはそう言うが、今一つ信じられない。

 保険を用意したい。


「ターラ、有り金を全部出せ」

「えー」


 ターラは不満そう。

 言い方を間違ったか。


「貸してくれ。同じパーティの仲間だろ。頼むよ」

「そうね。ドラゴンにやられたら、お金も意味ないもんね」


 ええと、手持ちは金貨2枚と銀貨18枚と銅貨が沢山か。

 意外と金持ちだな。

 金の事だが。

 最小通貨は銅貨だ。

 銅貨100枚で銀貨1枚。

 銀貨100枚で金貨1枚。

 物価的には銅貨が10円感覚。

 銀貨が1000円で、金貨が10万円。

 リペアの保険が1000円。

 安いな。

 まあ、普通に使っていたら壊れないものな。


 保険リストに生命リバイブ魔法保険というのがある。

 これだ。

――――――――――――――――――――

 生命リバイブ魔法保険

  死ぬと一度だけ生き返りのリバイブ魔法が掛かります。


  保険料:金貨5枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:リバイブ魔法

――――――――――――――――――――


 死ぬと生き返れる。

 死なないってのは最強だ。

 しかし、攻撃できなければジリ貧だ。

 現在の所持金では足りない。

 50万円は高いな。

 いや命の値段としては安いのか。


 何か良いのがないかな。


 おっ、これなんかどうだ。

――――――――――――――――――――

 傷害リフレクト魔法保険

  傷を負った場合に相手に同じだけのダメージを一度だけ与えます。

  自身の傷は治りません。


  保険料:銀貨1枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:リフレクト魔法

――――――――――――――――――――


 これに回復の保険を組み合わせる。


――――――――――――――――――――

 傷害ハイヒール魔法保険

  怪我に対して一度だけハイヒール魔法が掛かります。


  保険料:銀貨10枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:一人

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:ハイヒール魔法

――――――――――――――――――――


 ハイヒールではドラコンのダメージを回復しきれないな。

 だが、俺のスキルレベルはMAXだ。

 重ね掛けも出来る。

 何口も同じ保険に入れば良いだけだ。


 おっ、攻撃にいいのがあるな。

 強敵必殺の一撃保険だ。


――――――――――――――――――――

 強敵必殺の一撃保険

  レベル差が倍以上の敵に出会ったら適用されます。

  一度だけ必殺の一撃を叩き込みます。

  相手が必ず死ぬとは限りません。

  必殺はあくまでもイメージです。

  実際はレベル差があるほど攻撃力は増します。


  保険料:金貨5枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:掛け捨てカケル専用

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:必殺の一撃

――――――――――――――――――――


 俺専用だけど1口に金貨5枚も要る。

 強そうなんだがな

 今は無理だ。


 そうだターラに保険の説明をしておこう。


「ターラにまず俺のスキルを説明しておこう。俺のスキルは保険だ。ある状況が起こった時に保障してくれる。例えば怪我を予想してスキルを使っておけば、怪我した場合に癒してくれる」

「それは便利ね。でも、制約がありそう」

「そうなんだスキルを使うには金が要る。スキルを使い過ぎたら破産一直線だ」

「なんだ仲間じゃない。私のスキルは筋力ムキムキよ。力が常に強くなるの。おかげで武器の修理代で何時も金欠よ」

「そうだな、似た者同士だ」


 俺の保険は傷害リフレクト魔法保険と傷害ハイヒール魔法保険を3口。

 ターラには傷害リフレクト魔法保険と傷害ハイヒール魔法保険を3口と武器リペア魔法保険を10口。

 よし、これで挑むぞ。


 現場に行くとリック達パーティは奮闘中だった。

 リーダーのリックとドンクが大剣で前衛をつとめている。

 ザイダルは弓で援護。

 エリナは魔法で援護していた。

 リコは心配そうにリックだけを見ていた。


 伊達にSランクではないって事だな。

 ドラゴンをよく観察する。

 これはレッサードラゴンだろう。

 良かった。

 ドラゴンの中では弱い部類だ。

 弱いが討伐には軍隊が必要になるレベルだ。

 リック達だけでは分が悪そうだ。

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