第16話
「やっときましたか」
陰惨な中、冷涼な声に引かれ男たちはナンノを観た。少女が云った通り、女神に見える女性と陰惨な状態を結びつけるのは困難でも、一人の頭領と思える男は必死に結びつけようと声を出した。
「お、おい。これ、オマエが……」
「役には立ちましたがもう邪魔ですね」
ナンノは頭領の声を払うようにして片手を動かすと地面は抉れて遺体もろともかき消した。遠くから悲鳴が聞こえる中、彼女は男たちを注視する。男たちの中に少年が猿ぐつわをされ羽交い締めにされている姿を確認した。
「なるほど」
「な、なん、の……さ」
男たちは恐怖をどよめかせると、持っていた武器をナンノへ構えた。
「セイホは器用ですね。よく生かせたものです。トウマ」
「はひぃ!」
「車内に武器がありました。それを一つ貸してくれませんか?」
「喜んでぇ!」
トウマは刀を掴んで車内から飛び出しナンノへ手渡すと、ホクトの横に並んで立っている。ナンノは渡された刀の黒い鞘をしげしげ眺めて呟いた。
「ありがとうございます。武器に力を分散されれば手加減となるのでしょうか」
「オマエら動くな! 動くと」
頭領だけは武器を少年へと向けて必死にナンノに声を荒らげていたが、彼女は刀を腰の位置に固定して声は全く届いていない。
「人質は親密度及び良心により有用となるのです。それが私に適応していると思いやっているのであれば」
羽交い締めしていた少年に教えるように、
「愚鈍です。賢い旦那様は私と出会った瞬間に逃げようとしましたよ。お美事でした」
ナンノはその武器を横に凪ぐ。一瞬だけ刃を空気に触れさせ鞘に戻した振動が耳朶に触れて脳を揺らす。少年が背伸びしても届かない高さであって男たちの頭上ではない絶妙な高さに線を引いたところから、ぼろぼろと男たちの首から上の部位が乱れ落ちて転がっていく。
「セイホのように手加減したつもりでしたが、鏖、でしたか。精進しなければなりません。ですが、トウマの道具は丈夫で扱いやすくていいですね」
「えっ! ホント! お姉ちゃん!」
「ええ。丁寧に作られています。お返ししますね、トウマ」
姉に褒められて有頂天になったトウマに恐怖心がなくなっているのは彼女らしくさすがだと言わざるを得なかった。
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