第13話
周囲の惨状により自動車に散乱していた荷物を積んでこの場を離れる運びとなった。トウマの作った物は頑丈で壊れて使い物にならなくなった道具は一つもない。多分。
ある程度の片付けが終わるとナンノは朝食を作り始めていた。片付けを続けているのは残りの三人でトウマは模造本に夢中。片付けはセイホが主となるのが毎回でホクトは従順に動くのを喜んでいた。
ナンノから声がかかってテーブルを見ると朝食にしては軽くない香ばしい肉汁いっぱいのあぶられた肉料理が並べられている。
気づけば陽が高くなっていた。もう昼食に近いのと作業後であるのもあって腹の音が鳴いてしまうほどの空腹感に、肉を葉野菜で巻いて食べる手軽さは非常に食欲をそそられた。椅子はまだ掃除されていない。立食するに適した料理を選択してくれたナンノに感謝しつつ腹を満たした。
やり残しを片付けたあと自動車に乗ってその場から出発。走行の邪魔となる障害物は片付けておいたので困る問題はない。
五人となってから自動車はトウマによって改良されている。車内も全員がゆうに乗れるほど広くなっており、荷台も荷物を多く積めるようになっていた。改良されたというのにホクトはいまだに屋根に乗りたがっていたけれど、荷物は天井にも載せたりするのでナンノに止められている。哀しみに暮れるのかと一瞬思って前方に取り付けてある後方確認の鏡で表情をみればホクトの内面が高揚しているのが見て取れたためそのままにしておこうと思う。
助手席に座っているトウマの後ろにナンノは座っていて彼女の膝を枕にしてセイホが横になって隣にホクトが窮屈に座りながら嬉しそうにしている。
天井には細長い武器が並んでいた。槍、刀、棍などが頭上にあるのはそら恐ろしさがあったけれど、飾るだけなら使われるよりまだましだ。トウマが作った物で実際に使用した覚えはない。こちらは趣味で作っただけらしい。
「この模造本、どうやって作ったのかな? あるじ様、知らない?」
隣から模造本と睨み合いをしていたトウマがとうとう音をあげたようだ。その結果、俺に訊くという大変無謀な賭けに出ているのだけれど、回答は勿論持ち合わせていない。
「僕はこの材質は知らないんだよね。知らないけど知ってたような。知っていても知らないの。この材質は変で不思議でとんちんかん。ホクトは知らない?」
「そうね知らないわ。知らないけど中身の文章は気になる」
「じゃあ、ホクトに貸してあげる。もっとどこかで手に入らないかな。あったら面白そうなのになぁ」
「あら、面白そう」
「それであるじ様。やっぱり運転上手いね! この前メンテナンスしたんだけど故障がなかったんだよ。あるじ様が大事に使ってくれてるからだよね。そうだよね?」
「手前は乱暴に使われたい」
息が合うのか合わないのか模造本はトウマの手からホクトへと渡った。ホクトは一瞥したのか納得したような声を漏らした。
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