第12話
トウマが見つけた物体は俺たちは模造本と名前を付けた。色は緑色だったのが経年劣化によりところどころ剥がれたのか銀色が見えている。本のようだと思うのは材質が別の物で模造した物体だったからだ。重量は見た目ほどない。軽いのは中身が空洞だからだと知ったのは開いてからで、その模造本の中には材質が同じ一枚の板が捲れるページのようにあった。
トウマは模造本を相当気に入ったらしく工作した人物なのか何かに興味を抱いたようだ。地面を流れる水がどこへ向かっていくのを気にした結果。おそらく家屋の床下に流れ込んでいるのを発見した。そこに模造本はあったと類推する。
トウマの模造本を欲しがる気持ちを何故俺に主張してくるのか理解し難かったのだけれど、四姉妹と俺との主従関係を慮っての発言だったようだ。姉妹の中でしっかりしていなさそうでしっかりしている人物。それなのに何故俺をあんなに気絶させてきたのか疑問だ。主従関係なんて考えてもいないので最初に見つけた当人の物だと言うと彼女は非常に喜んだ。あまりにも喜び過ぎて走り回り泥を跳ね上げナンノに怒られていた。
トウマと模造本が並んでいるのをみんなで見ていた。気にはなるものだ。開いた一枚の板には文字が書いてあるのではなく彫ってあった。手間をかけられているのに昨夜からの色々な出来事がなければ日の目を浴びなかった模造本に彫られている過去の記憶は、年月に似合わない短い文章だった。
《王は何度でも我々をお護りくださり
意志は脈々と受け継がれ消える理由はない
常識に拒まれたのなら王は受け入れてくださる
どうかここへ世界の裏側にて我々はいつまでもここで》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます