第11話


                 11



 あれからまた時期は3年を過ぎた。



               ◇  ◇



「じゃあ行ってくる」


「行ってらっしゃい。 気を付けてね」

「わかった、行ってきます」



 入社して4年が過ぎ、匠斗は今年から現場を任される、現場監督になった。

 大きな現場では無いが、去年、資格も取り、初めての主任技術者での立場で迎える内容に、今までの苦労した結果を、上司たちが認定という事で、今年からその任務に就いた。

 普通は2~3年の監督補佐と言う形ではあるが、匠斗はさらにもう1年の、丸4年間

辛抱をし、細部に至るまでの事を吸収していた。

(でもこの業界も、日々進化しているので、常に勉強だ)

 そう思って、新しい技術に目ざとく、進んで取り組む様になってもいった。


 凪穂とは一年前に結婚して、会社近くにある2LDKのアパートに住んでいる。

 今はまだ同じ会社にそのまま務めているので、ただ生活内容が、一緒に暮らすという事になったこと以外は、変ったことは無かった。


 現場に向かう匠斗は、出勤が早い。一方、凪穂は事務職なので、普通出勤だ。 それでも、結婚後は弁当を作って渡すので、早く起きなければならない。

 文句も言わずに、毎日早朝に起床。 自分の分も含めて、2つの弁当を作るのが、凪穂自信とても嬉しかった。



 お互いに日中は、現場と事務所と言う事もあり、全く会えないのは当たり前だが、匠斗が時々だが会社への業務的な電話をして凪穂が出た時、つい嬉しくなってしまい、電話を取ったは良いが、内容が何処かへすっ飛んでしまう事があり、電話終了時に、内容が全く頭に入っておらず、先輩OLに怒られることもしばしばあった。


「もう、青木さん(名字は青木だ)、新婚でも、旦那さんからの電話だからと言って、内容がすっ飛んでいくようじゃあ、まだまだね」

「あ、はい。 すみません」

 お局様にお叱りを受け、凹む....、が、匠斗だって、現場で頑張っているんだ、自分もやる気にならないといけないと思い、自分に 喝 を入れる。



                ◇



「あははは....、何やってるの?凪穂は」

「だって、彼から掛かってくる電話でも嬉しいんだもん」

「だもん...って、いい年して~」

「もっと仕事に集中しなさいよ、匠斗に迷惑がかかるわよ、凪穂」

「は~い、私もう少ししっかりするわ、葵」

「はぁ~、何だかな~....」


 週末の土曜日、ファミレスで話している途中、葵に抱かれている乳児が泣き出した。

「あれ~、蓮くん、泣かないでね、ママが居ますからね~、凪穂おばちゃんも居るからね~、泣かないで~」

「おば........」

 凪穂は、少し落ち込みながら、絶句した。


 亮と葵は2年前に結婚、今年の春に、蓮(れん)と言う男の子が生まれた。


 泣き止ませ中の葵を見て、凪穂は。

「いいな~赤ちゃん。 私も早く欲しい」

「あなた達ならすぐにでも出来るわよ、何年経ってもラブラブなんだから」

「そうなんだけど、何で出来ないんだろ?」

「愛情が溢れすぎて、来るべき赤ちゃんが、恥ずかしがってるんじゃないの?」

「もう葵ったら、適当な事を~....」

「えへへ....、あ~よしよし、蓮くん いい子にしていてね~」


 葵の子供を見て、自分が抱いている子供の姿を想像してみる凪穂だった。



              □  □  □


  葵とファミレスでの週末昼ごはんから、二日経っての月曜日。 


「いいな~葵は、かわいい赤ちゃんが居て。 頑張ってるのに、私達にはなんで来てくれないんだろね」

「凪穂、頑張ってるって言わないでくれよ、オレがただのスケベに聞こえるみたいなんだが」

「匠斗は普通にエッチだよ、普通だからいいじゃない」

「だからって....」

 二人が少しガッカリしていると、凪穂がさらに追い打ち染みたことを言う。


「最近なんて、ベイビーストレスで、月のモノが遅れてるの、あ~あ....」

「ごめんな。 色々とストレス溜めさせて」

「ううん、いいのよ。 決して匠斗のせいじゃないから。 いつかは出来ると思うから、焦らないで、気楽に行こうね」

「そうだよな。 気楽にだよな。 うんうん....」



 優しい言葉を掛けてくれる自分の嫁に、何年経っても愛おしいと思ってしまう匠斗だった。


 その時、凪穂のスマホに葵からの着信があった。


「もしもし? 葵」

『あ~、凪穂、今っていいかな?』

「うんいいよ」


 時々掛かって来る、葵からの定期交信だ。

 本当に凪穂と葵は仲が良く、二人は、社会人になってからも、会えなくても週一くらいで連絡を取っていた。

 なので当然、亭主である 匠斗と亮の事も筒抜けである。


 色々と喋っている最中に、隣に居る匠斗にも聞こえるくらいで、葵の大きな声が、やや怒り気味で聞こえた。


『あなた達、何やってるの?!! すぐに匠斗をドラッグストアへ行かせなさい!』

 いきなり言われた凪穂も驚いて、何の事だと葵に問いかけると。

『そんなの、検査薬に決まってるでしょ!!』

 大きすぎる声に、凪穂がスマホを耳から話す。

『匠斗、聞こえてるでしょ! 今すぐに、買ってきなさい! 行け~!!』

「お、おう! 分かった」


                △


 それから匠斗は、すぐにドラッグストアで妊娠検査薬を購入。 すぐに帰宅して、凪穂にそれを渡し、受け取った凪穂はすぐにトイレに向かう、そして出てきた凪穂と匠斗が顔をくっつけて、検査薬をじ~~っと見つめていると........。


「「あ!」」

 声が揃った二人。


「「出た!!」」

 また声が揃った二人。


「匠斗!」

「凪穂!」

 お互いを呼び、きつく抱き締め合った。


「やっとだね。やっと出来たよ~~匠斗ぉ~....」

「やった~やった~....」

 ふたりとも、大喜びである....、が。


「そう言えば、検査薬って、100パーセントではないみたいだから、必ず産婦人科に行きなさいって、書いてあった」

「そうなの?」

「だから、明日休みを取って、行こうか?」

「匠斗はダメよ。 今は現場の主任技術者なんだから、明日は取りあえず、私一人で行ってくるわ」

「う~~、何か心配だ~....」

「お願いよ、いい子だから、しっかりと社会人をして来て、匠斗」

「は~~....、凪穂の頼みだから、聞かざるを得ないな。 分かった、結果を期待して、会社に貢献して来るから、気を付けて行ってきなよ」

「うん、分かった」

 それでも何故か悔しそうな匠斗。


「うぅ....、気になる~」

「もう、夕方にはハッキリするから....、ね?」


 凪穂は緩く匠斗を抱きしめ、自分から優しいキスをした。



                 ◇


 次の日、凪穂は産婦人科に行き、二人の期待通り、妊娠が確定した。

 3ヶ月で、予定日は2月であった。


 この事に、凪穂はすぐに。

「あ!。 葵の所の、蓮くん と同級生になるんだ、この子」

 と、独り言が出た。


 その夜、帰宅した匠斗はそれを聞かされ、凪穂を抱きしめながら。

「ありがとう なぎほ~」

 の連呼だった。



 この日のうちに葵にも連絡を入れ、亮と共に、喜んでくれて。

『ウチの連と、同級生だな、これからもよろしくな、匠斗』

「ホントだ、蓮くんと同級生なんて、なんか嬉しいな、こちらこそ、よろしく頼む、亮」


 お互いに笑い合い、これからの子供の成長を楽しみにする4人だった。




              □




 この小説は、“小説家になろう” に投稿した  スタンダードな関係 が元となっており、以前の作品が大学受験を控えた、高校3年生の話で終ったのですが、今回のこの作品は、その内容をモディフィケーションしたものです。

 なので、前半の部分は、多少修訂したありますが、ほぼ一緒です。


 私がこの作品のモディフィケーションをしたのは、以前の内容が半端で終ってしまったと思いと、どうしても、この二人の社会人までの内容を書き終えたかったと言うのが心情です。

 最終的には子供まで出来るという、SPな内容になりまして、作者はこの二人に対しては、これで一区切りと思っています。

 この作品についての続編は今のところ、全く考えていないとは言えませんが、違う視点という思考ならと、考慮はしています。


 取りあえず、いつも通りにハッピーエンドで終わらせました。

 楽しんでいただけましたでしょうか?




 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 それでは。



   雅也



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僕たちの恋愛の場合 雅也 @masaya0808

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