第7話


                 7


 あれから3年が過ぎた。


 苦しかった受験も終わり、そのまま4人は同じ大学に合格し、今では就活に力量を注いでいた。



                 △



「早いもんだね、来月で4回生だよ私たち」

「そうなんだよな~。 ついこの前まで大学受験だってヒヤヒヤしていたのに、もうあれから3年経つんだもんな」

「ホント早いわね~」


 この日 匠斗は、4人が通う OK大学の図書館で、引証したい事項があり、今日は登校していた。

 大学自体は、春休みに入っていたが、大学内の共用の機関は空いているので、他の在学中の学生の姿も結構見える。

 すでに、就職が内定している凪穂は、匠斗の父、一樹が勤めている建設会社の事務に就職が内定しており、そのままそこにお世話になる予定だ。

今日は匠斗が図書館に調べものがあるというので、単に付いて来ただけの事だ。



 大学に入り、メイクを覚えた凪穂は、高校時代とは違いカワイイ的な容姿から、奇麗に変身していた。

 その一方で匠斗も、大学二年頃から、周りの学生たちの影響により、外見が結構イケている男子になっていて、年一度行われる カップルアワード で、匠斗と凪穂は4位を獲得している。




 隣同士で座る二人。


「ねえ匠斗」

「........」

「?、ねえったら....」

「........」

「?、お~い....」

「........」

「た~くと~....」

「........」


「えい!!」

 そう言って、凪穂は匠斗の頬にキスをした。


「うわ!!」

「ふふ、やっと気が付いた」

「あ~びっくりした....、なに?凪穂」

「もう、ぜ~んぜん気が付いてくれないんだもん」

「ゴメン....、で、なに?」

 資料から目を離し、凪穂に目線を合わせる。


「この後って、どういう予定なの?」

「う~ん、何にもないから帰ろかなって、思ってる」

「じゃあ、あのね、この後に葵たちが来るの、だから、学食で一緒しない?」

「なんで?」

「何でって、今日匠斗が図書館来るから、私もそこに居るって言ったら、葵たちも来るって話になっただけよ」

「ふ~ん、ヒマなんだな、あの二人」

「そんな事言わないの。....、それで、もういいの?調べ物は」

「もうちょっとで終わるかな」

「じゃあ、葵に連絡するから、それ終ったら学食いきましょ、匠斗」

「分かった」


 今日はいったい何の話なんだろうと、少し凪穂の顔を見る。 すると、嬉しそうな顔して微笑んでくれていた。


「?....う~~ん(何だろう)」



               △



「あ、居た居た、あおい~」

 そう言って、すでに学食で座って待っている葵と亮に手を振った。

「あ、来た来た、なぎほ~」


 葵は、大学に入り凪穂と一緒にメイクを進化させ、今では学内で3本の指に入る程の美形になっていた。

 そうなると、周りの男たちが黙っていないと思うのだが、彼氏の亮が、コレまた高校の時期よりもイケメン度が増していて、普通の男子など亮に到底及ぶものでは無く、それはそれで誰も亮と葵には言い寄る物は全くいない。

 尚、この二人は当然だが、カップルアワードは、ダントツの1位になっていた。




 最近はこのカップル同士の行動が別々になっていたので、少しばかり久しぶりだった。

 休学中、この食堂はカフェになり、軽食のみの品書きだ。 だが、日替わり定食はあるので、ランチ時間になると、登校している学生と、職員、教授など、一応ここで昼を済ます者は多い。


 葵たちの居るテーブル席に着き、まずは近況報告だ。



                △



「へえ、そうなの、いいな~、私たちもタイミングが合えば、行けたのに、仕方ないよね、匠斗が丁度その時、就活の説明会だったからね」

「そうだね。 でね、亮ったら、その後ね、滝業もしたいって言うのよ、寒いからやめなさいと言ったんだけど、折角来たんだからとか言って、白装束になって、滝行に参加したの」

「で、その後、風邪を引いたって事ね、あはは」


 女子たちのトークに匠斗と亮は、ただ聞いて頷き合っているだけだ。

 お土産は、定番の温泉饅頭と、ご当地キャラの、チャームだった。


「でもいいな~、葵たちは、春休みに近場とはいえ、旅行に行って....、ねえ、匠斗、私達も行きましょうよ」

 凪穂が匠斗に聞いているが、話を変える様に葵が匠斗に質問してきた。


「ねえ匠斗、今更なんだけど、就活の成果は出てるの?」

 聞き辛い事をズバッと葵が聞いてきた。


「ハッキリ言って、成果は出てないけれど、オレの本当にしたい業種はまだこれからだな、って言うか、なりたい業種の面接は、これからなんだ」

「そうなんだ....。 実はね、亮も、コレから就活に本気出すって言ってたんで、匠斗も頑張りなさいよ」

「おう。 頑張るぞ~!」

「あはは、その意気よ」


「まあ俺たち、大体の目星は付いているので、多分大丈夫なはずだ....、よな?、亮」

 亮が大きく頷きながら。

「まあ、行けるとは思う」


 それぞれ業種は違うが、どうやら自信があるようだ。



                 ◇



 大学から帰って、匠斗と凪穂は、青木家に帰って来た。


 今では青木家と村上家の双方に、お互いが時々泊まるという、双方の両親が公認の付き合いをしている。

 ただ、在学中の妊娠は親に認められないので、そこは十分に気をつけている。


「ただいま~」

 と言いながら、匠斗が青木家の玄関ドアを開け、二人で中に入ると、いきなりスレンダーな美人が奥から速足で近づいてきて、いきなり両手を挙げて、二人に抱き着いた。

「おっかえり~!」

 いきなりの攻撃に、二人が。

「ヴぉ~!....」

 と言う、声が出てしまった。


 このスレンダー美人は、匠斗の妹である 舞(まい)だ。

 舞は、高校卒業後、専門学校に進み、この春で2年生になる。


「妹よ、苦しいぞ」

 そう匠斗が言うと、片手を外し、今度は凪穂だけを抱きしめ。


「凪姉ちゃん、おかえり~」

 なんて言っている。

「いい加減にしろ、舞。 凪穂の顔が充血しているぞ」

 そう言って、匠斗は舞の手を掴み、凪穂から解放した。


「凪姉ちゃん、久しぶり。 なんかまた綺麗になったね」

「あら、そんな....」

「いいな~お兄ちゃん、こんなカワイイ人が彼女で」

「へっへ~ん、いいだろ。  で、帰っていたのか、舞」

「うん!」


 元気よく返事をする舞。


 舞は、高校を卒業後、家から約1時間半ほど離れた専門学校に入校したのだが、通学に時間が掛かることもあって、その学校の近くの親戚の家に、2年間だけ居候させてもらっている。

 従妹ともに、小さい頃から仲が良いので、匠斗の両親がお願いして、住まわせてもらっている。


「ねえ、凪姉ちゃん、今日って泊まっていくよね、だよね」

「あらら~...、あのね、今日は後で私を送ったら、そのまま私の家に、匠斗が泊まりにくる話になっているのよ」

「えぇ?....、私と一緒に寝ようよ~、お姉ちゃ~ん....」

 少し考える凪穂。

「う~ん、匠斗、どうしようか?」

 匠斗の意見を聞いてみると。

「オレは別に凪穂の家なら今日じゃなくても良いけど」

 すかさず舞が。

「じゃあ、今日は私、お姉ちゃんを予約しま~す、いいよね、お兄ちゃん」



 という事で、凪穂は青木家に泊まることになった。






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