第6話
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毎週行われる、週末の勉強会も、数ヶ月が過ぎ、12月に入っていた。
今、4人で固まっていつものお喋り昼食タイムだ。
「でも、すごいな、先回の中間考査。 見事にオレと亮は、レベルアップして、お互い二桁の半ば以上まで来たのは、今までにない、快感だったな」
「そうだな、オレも、万年100位くらいだったのが、葵と凪穂のお陰で、こんなになれたのが不思議なくらいだ」
それを聞いて葵が。
「何言ってるの、あなた達、ちゃんとやれば出来る子なんだから、この結果が出たのよ」
「感謝している、葵 凪穂。 二人の教授があって、ココまで来たのだから、後は4人が一緒の大学に見事合格するだけだな」
「そうよ、後もう少しで確実な合格圏内だからね、追い込み頑張りなさいよ、二人とも。 それとね....、何だか知らないうちに、カップル成立なんて、ご都合良いんじゃない?、そこの二人」
「「はい、すみません」」
「あ~、やだやだ。息もピッタリだし」
と言いつつ、微笑む 亮と 葵だった。
「やっぱり、夏休み中にやったみっちり学習が、モノをいったな」
「そうだな、暑い時期に我慢して、4人しっかりとやったお陰で、目標に近づいてきているよな」
「確か、私たちの第2志望が、亮と匠斗の第1志望だったわね」
「そうだけど、このまま頑張れば、オレ葵と何とか一緒の大学に行ける気がしてきた」
「その意気よ亮、もう目前なんだから、絶対に私と一緒の学校行こ!」
「が、頑張ってみる」
「オレも絶対に、凪穂と一緒の大学に行くからな」
さらに気合を入れる匠斗と亮だ。
「でも良いよな~、葵と凪穂って、間違いなく第1志望合格じゃん」
「油断はできないけどね」
「推薦ってもらって無いの?」
「もう少し頭良ければね」
「今その成績でも?」
「そうよ」
話題を変えて。
「ところで、年末年始って、どうするんだ?」
亮が皆に聞く。
「何が?」
「クリスマスとか、正月とか」
「予定と言うかクリスマスは二人で過ごすが、一応、この4人で大晦日に、小忘年会をやろうと思っては居るんだが、そっちの意見はどうかな?」
「同じことを考えていたな。クリスマスはやはり、二人で居たいからな、でも、忘年会となると、二人じゃあ寂しいから、4人で良いと思う」
「じゃあ決まりね? 凪穂ちゃんも」
「うん、私もそれでいいかな」
「「決まり~!」」
「コレで年末の予定が決まったので、後は冬休みが来るのを待つのみだな」
「おっと、大事な行事が残ってるぞ」
「期末考査ね」
「そうだ」
そうなのだ。来週明けから期末考査がある、これでまだ亮と匠斗の順位が上がっていたら、本格的に葵たちの第一志望を目指してみるつもりだ。
「じゃあ予定通りに、今週も勉強会だな」
「折角だから、今度は図書館でやらない? どうかな?」
「お~いいね。 初 図書勉だな」
「開館と共に入れば、4人掛けテーブルがゲット出来るな」
「何か、俄然 やる気が出てきたわね」
「わたしも」
「おっと! もうこんな時間だ、今日はこれまでだな。解散でいいか?」
「いいんじゃない」
「じゃあ、「「「「ごちそうさまでした」」」」
そう言って、葵だけが教室から出て行った。
期末考査が終わったら、いよいよ受験に向かって行く。
おのおの4人は、気持ちを受験に向けて、ラストスパートして行くのだった。
◇
期末考査が終わり、それぞれが思う成績で終わったため、気分良く冬休みが迎えられた。
「俺が26位、亮が22位になるなんて、8ヶ月間 頑張って来た甲斐があったな~」
「葵と凪穂も、7位 8位と、相変わらずの一桁をキープしてるし。俺たちがここまで来れるなんて、お互いの彼女に感謝しなくては」
「あ、ちょうどその女神たちが来たぞ」
購買に行っていた女性陣二人が戻って来た。
最近は、本当に仲が良く、二人で行動する事が多くなった。
「「ただいま~」」
と言ったら。
「「おかえり~」」
と男子が返した。
「相変わらず仲良いな」
「な~んか、凪穂とは気が合うんだよね~」
「私も、葵と居ると楽しいんだよね」
最近は、この二人、名前で呼び合う様になっている。
明後日はクリスマスだ、予定通りに、それぞれ楽しいクリスマスイブを過ごす予定で居る。
匠斗と凪穂は、豪華なプレゼントと言うものは無いが、それぞれに気持ちを込めた贈り物を用意した。
△
24日がやって来た。
いつもの4人は、昼食としてファミレスを予約した。そこで今年あった色んな出来事を楽しく喋る。 中でも、今年の一大事は、匠斗に凪穂と言う彼女が出来た事だ。
その後も楽しく4人でお喋りし、時刻は午後2時半になっていた。
その昼食後には、お互い2カップルに別れ、それぞれの予定の行動に移る。
落ち葉が枯れ切った街路樹の歩道で、行き交う様々な人々の中に溶け込む匠斗と凪穂。
「周りカップルが多いね」
「そうだな。 その中のうちの ひとカップルに貢献しているんだな、オレたち」
「うん、そうだね」
寒空の中、色んな年代のカップルが行き交う商店街。 もう、夕方近くになってきた。
匠斗と凪穂は、空いている喫茶店に入り、テーブル席に着いた。
「匠斗、今年ももうすぐ終わりだね」
物思いに更ける匠斗。
「去年の今頃、一人寂しく24日はゲームやってたな...なんて、今思うと、こんなオレに、こんなもったいない彼女が出来るなんて、今年はなんて良いクリスマスなんだ」
「そんな~....、私こそこんなにカッコいい彼氏が出来て、嬉しいよ」
匠斗が照れながら。
「凪穂は毎年クリスマスはなにしてた?」
少し溜息を吐きながら。
「私は毎年、家族で小パーティーをするの。恒例よ」
「あ、それはウチもやる。 特に 舞が盛り上げてくれるからな」
「あは、舞ちゃんならやりそう」
「だろ?」
二人で少し笑い、その後沈黙が訪れた。
独り言のように、凪穂が呟く。
「今年は色んな事があったな~....、ねえ匠斗」
凪穂が匠斗の目を見て言う。
「どうした?」
「あのね....、出会って二日目に女から告るって、イヤじゃなかった?」
あの、ハンバーガーショップからの出来事を順に思い出し、その日にあった出来事を、匠斗は思い出しながら言う。
「さすがにあの日は驚いた。 まさかその日のうちに、申し合わせて無いのに、3回もバッタリ出くわすなんて、物凄い確率だと思う」
「うん、あれは無いよね。 私もびっくりした、匠斗ってストーカーかと思ったよ。 でも、いつも私よりも先に居るのが匠斗だったから、それは無いと思った」
「うわ! 頼むよ~ そこは、変態扱いしないでくれ~」
「うふふ、分かってるわよ、 た~くと」
「でも、でもオレ、凪穂なら、変態になる自信があるぞ」
「やだ~!たくと~...」
少し黙り込む二人。
「ねえ匠斗」
「今度はなんだ?」
言いにくそうに凪穂が。
「クリスマスイブの夜って、恋人同士って やっぱ....あの....その........」
即、気づいた匠斗は、ハッキリと言う。
「エッチ って事?」
「う、うん」
「オレも男だから、そう言う事はハッキリ言ってしたい、 凪穂なら....。 だけど、今の俺たち、受験生だろ? 今はその時じゃないと思うんだ、どうかな?」
少し間があって、凪穂が。
「そうね、今は。 でもね、でも、 初めての時は 匠斗が良いの、私。 匠斗でなきゃイヤ、絶対に」
「ありがとう凪穂、嬉しい。なんか、オレ 良い子ぶってるみたいに聞こえるな、でも、オレは凪穂を大切にしたい。ずっと一緒に居たい」
「う...ん。 ぐすっ....嬉しい、嬉しいよ~匠斗」
匠斗がタイミングと見て、ポケットからピンクのリボンが付いている、白い小箱を差し出した。
「これ。クリスマスプレゼント」
「え?」
「ほら、開けて」
凪穂がピンクのリボンを解き、小箱の蓋を開けた。
「わあ! 嬉しい。 匠斗 大好き!ありがとう」
凪穂が手にしたのは、シルバーのブレスレットだった。 シンプルだが、凪穂が気にいるデザインだった。
「着けて、匠斗」
左手を匠斗に伸ばして、ブレスレットを匠斗に渡す。
(左手を出してくるんだ 凪穂は)
そう思った匠斗は、本当に自分の事を思ってくれているんだなと、心から思った。
付け終わって、凪穂の顔が微笑みで一杯だ。
自分の手首をしげしげと見入る。
次の行動は、手に持った紙袋だった。
「匠斗、これ 私からのクリスマスプレゼントよ」
期待と不安が入り混じった表情で手渡をし、自分の彼氏を見る凪穂。
受け取った匠斗が。
「開けてもいい?」
「うん」
すぐに返事を聞きたい、凪穂だったので、返事は即答だった。
紙袋の口と止めていたリボン風のテープを丁寧に剥がし、口を開け中身を取り出した。
「あ!....、マフラー」
手には、ネイビーブルーカラーのマフラーがあった。
「ごめんね、急いだから、目が不揃いだけど、何とか間に合ったんで、許してね」
一瞬 匠斗の卯木気が止まり、すぐさま 返事をした。
「ありがとう。 とっても嬉しい、オレ初めてなんだ、女の子にプレゼントしてもらうのって、だから、とっても嬉しい、ホントにありがとう凪穂、大切に使わせてもらうよ」
「そこまで言われると、照れるな~」
「しかも手作り、感動だ~」
それに追い打ちをかける様に、凪穂が。
「これからは、イベントごとに色々あるからね、覚悟してね 匠斗」
「ありがとう、なんかオレ リア充みたいだな」
「みたいじゃないの! リアルなの! 分かってる?」
ウインク付きだ。
「う~~......、凪穂」
「なに?」
匠斗は 席を立ちあがり、向かい合っていた凪穂の隣にすわり。 左手を腰に、右手を頬に添えて、ゆっくりと顔を近づけ、優しく キスを交わす。
座った席がちょうど観葉植物で他席からスタイミーになり、二人のキスは長かった。
匠斗が元の席に戻ると、顔を赤らめた凪穂が可愛い姿をして、俯いていた。
「オレ達って、付き合いは長いけど、始めての キス だったな」
「....う.....嬉しいよ~ 匠斗。 やっとだね、やっとだよ、....でも、この日で良かった....わたし、とってもしあわせだよ」
「ゴ、ゴメン、待たせて。 普通もっと早いよな」
二人の手が、テーブルの上で重なり、凪穂のブレスレットが店内の僅かな光に輝いている。
「これから受験で大事な時期なになるけれど、その後も二人で乗り切っていこうな、凪穂」
「はい。 私も匠斗と一緒にこれからも、ひとつひとつ色んな事を乗り越えていきたい。 だから、これからの人生 私と一緒にお願いね、匠斗」
「もちろん!」
コレから色んな事が、多々起こるだろう。 そんな時でもこの二人で、一つ一つ解決して、良い人生を送ってほしいものだ。
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