第2話

 日本海を望む部屋の縁側に一人座ってほっと息をつく。今朝は三時に起きてお仕事だ。ただ走りまわっているだけならともかく、完全に気疲れだ。しかも今たくさんの部屋を回って、たくさんの人に接してきたところだ。朝も早い時間から笑顔作りっぱなし。後輩ができればいつ話しかけられても平気なように口角上げっぱなし。つい考え事をして、ため息をつく。

 夏には今の仕事を辞めてほかのことをしようと考えていたから、上司に伝えるのにうまい言葉が見つからない。その時が初めてだった。

≪あれ?なんか頭痛い気がする≫

 座っていた椅子から畳へ崩れ落ちて、そのまま横になっていた。。でもすぐに人が訪ねてきて一人で考え込む時間は終わった。だけど頭痛は夕食の時まで続いて、思わずこめかみを手で押さえてしまった。そのしぐさを隣に座ったお姉さんに見られてしまった。いつも元気な姿しか見せないようにしてきたからすごい凡ミス。

 しかし、その日はどうしても上司と話さないといけないことがぁる。だから布団へ戻ることはできない。お酒の力を借りて勢いに任せて乗り越えることはよくある。でも、結局言いたいことの半分も伝えられなかった。ただ言えたのは、結婚を考えている人がいるというだけ。その前に資格を取りに帰りたいから夏になる前に仕事を辞めたいとその言葉だけだったのに。もう最悪だ。そんな間にも夜は更けて上司を部屋まで送った。

 布団に倒れこんでやっと一日日が終わった。

 目が覚めると、ふすまのところでうずくまる人影が見えた。朝食会場に一緒に行く約束をしていた二人が迎えにきてくれてそのまま撃沈していた。みえてたけど、朝はいつも頭が痛い。昨日の疲れもしっかりのこっている。鎮痛剤とお茶を口に放り込んでもう一度布団に入る。ちゃんと二度寝して時間ぎりぎりに着替えて朝食会場へ向かう。せわしない一日が始まる。

 その日は忙しかった。東尋坊と永平寺に行っただけなのにトラブルが多くて、その対処の方法が分からなくて久しぶりに困った。これだけキャリアを積んできても途方に暮れることもあるのに、今更新しいことを勉強できるのか不安で仕方ない。

 とにかく資格を取ろう。そうしないと誰の力にもなれない。働いているとどんどん自分の無知の壁に押しつぶされていた。別に割り切ってがんがえてもよかったけど、自分の中の劣等感を払しょくできなかった。

 今夜も決戦。反対はしないのはわかってるけど、彼氏に一番伝えにくかった。岡山への帰り道はずっとそのことばかりを考えていた。だから一日が終わるのは、あっという間で、みんなを帰らせてから自分の時間。やることを済ませて携帯が鳴るのを待つ。

 …着信アリ。彼に伝えなきゃならない。言いにくい。電話を手にするけど、ため息しか出てこない。通話ボタンを押して普通に話し始めた。結果顔も見ないでまともな話ができるわけないから軽いジョブだけ入れてみたけどあえなく撃沈。悶々として電話を切った。イライラは収まらず、ぶつぶつ言いながら模様替えを始めた。なんでが止まらない。イライラしてるから掃除もうまくいかない。もうこうなったらふて寝しか選択肢がない。

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