第25話 エヘッ! 25

「なんだ!? これは!?」

 火月が妖怪に襲われている村にたどり着くと村は凍りついていた。

「まるで雪女にでも襲われたみたいだ!?」

 火月は氷の妖怪雪女だと思った。

「誰が雪女だ?」

 そこに一人の侍が現れる。

「なんだ? おまえは?」

 火月は尋ねる。

「人に名前を尋ねる時はおまえから先に名乗れ。」

 逆に怒られる。

「すいません。私は火月です。あなたのお名前を教えてね。」

 火月は丁寧にお願いする。

「私の名前は氷月。氷の侍だ。」

 現れたのは氷月だった。

「氷だと? それではこの村の氷漬けはおまえがやったのか?」

 村は凍りついていて散々な状態だった。

「そうだ。妖怪を倒すために犠牲は付き物だ。」

 氷月の性格は冷たかった。

「なんだと!? だからって罪のない村人たちを巻き込んでいいのか!?」

 火月は氷月と水と油の性格だった。

「そういうおまえはどうなんだ? おまえの歩いた後は火事が怒っているじゃないか?」

 火月は歩く自然発火装置だった。

「ち、違うわい! おまえが凍らせた村を私の炎で解凍しているんだ!」

 苦し紛れの言い訳にも聞こえる。

「私は人助けに興味はない。ただ強い敵を倒したいだけだ。」

 そう言い残し氷月は去って行った。

「なんて冷たい奴だ。」

 火月は一人で氷漬けの村人の氷を溶かして歩いた。


「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ!」

 おみっちゃんは今日も茶店の看板娘として働いていた。

「熱い! 冷たいお茶はないのか!」

 茶店で休憩していた氷月は猫舌だった。

「すいません。今、氷をきらしていまして。」

 おみっちゃんが謝る。

「カワイイ。」

 氷月はおみっちゃんが気に入った。

「どうぞ。氷です。」

 氷月は手品のように氷を作り出す。

「ありがとうございます。エヘッ!」

 無意識に男に媚びを売るエヘ幽霊。

「カワイイ!」

 氷月はおみっちゃんに恋をした。

「よく言われます。エヘッ!」

 決して計算高い女ではない天然記念物なエヘ幽霊。

「ああ! 氷月!」

 そこに火月が現れる。

「出たな! 放火犯!」

 氷月は火月のことを放火犯呼ばわりする。

「誰が放火犯だ! この氷河期野郎!」

 火月と氷月は相性が悪い。

「ええ!? 火月さんは放火犯だったんですか!?」

 おみっちゃんは純粋なので氷月の言葉を信じる。

「ダメー! 信じないで下さい!」

 とばっちりをくらう火月。

「勝負だ! 私の火刀とおまえの氷刀! どちらが強いか勝負を着けてやる!」

 燃える火月。

「望む所だ。おまえの炎など私の氷で消し去ってやろう!」

 凍てつく氷月。

「どうしましょう? 女将さん。このままでは茶店が二人の決闘に巻き込まれるかもしれません。」

 おみっちゃんは二人より茶店の心配をする。

「そうだね。お客さんにも迷惑だし、売り上げが下がるのは困るね。どこかに行ってもらおう。」

 お客様の安全と茶店の売り上げを心配する女将さん。

「隣の村で妖怪が暴れているそうですよ。エヘッ!」

 嘘を吐くと笑ってしまうエヘ幽霊。

「なんだって!? それは大変だ! いって村人を助けてきます!」

 火月は隣の村を目指して旅立った。

「あれ? 氷月さんは行かないんですか?」

 氷月は茶店から一歩も動かない。

「私は人助けには興味はないので。」

 相変わらずな氷月。

「火月さんだけでは頼りないので氷月さんも行ってくれると私は嬉しいな。エヘッ!」

 可愛く笑いおねだりするエヘ幽霊。

「おみっちゃんが言うなら行ってこよう。確かに火月一人では不安だからな。」

 氷月も隣の村を目指して旅立った。

「これで茶店は安泰ですね。エヘッ!」

 小悪魔なエヘ幽霊。

「さあ! 邪魔者もいなくなったし、ガッポリと稼ぐよ! イヒッ!」

 気合を入れて営業する茶店であった。


「やめろ!」

 火月たちが村にたどり着くと妖怪が暴れていた。

「ニョロ。」

 妖怪は雑魚ばかりだった。

「許さないぞ! 妖怪め! 燃やし尽くしてやる!」

 火月は燃えている。

「雑魚に用はない。凍らせて終わりだ。」

 氷月は凍えていた。

「いくぞ! 妖怪! これが私の火斬りだ!」

 火月は火の刀で妖怪を攻撃していく。

「くたばれ! 雑魚ども! これが私の氷斬り!」

 氷月は氷の刀で妖怪を攻撃していく。

「ギャアアアアアアー!」

 妖怪たちは次々と倒されていく。


「燃やされて、凍りついて。隣村も壊滅ですね。」

 おみっちゃんは隣村の人々のご冥福を祈った。

「戦争のある所、不幸しかないってね。嫌だ。嫌だ。銭が儲からねえ。」

 女将さんは平和主義者。

「しまった!?」

 おみっちゃんは何かに気がついた。

「氷月さんがどうして氷の侍になったのか、理由を聞くのを忘れていた。」

 生い立ちは大切である。

「どうせ氷村出身で、子供の頃に氷の山に捨てられて、氷狼か氷男にでも育てられたんだろう。そして気が付いたら氷の力を使える氷侍になっていたってことでいいんじゃないかい。イヒッ!」

 女将さんは才能が豊かである。

「ということは火月さんも火の村の出身で、妖怪エヘエヘに村を滅ぼされて、火の山に行って火の魔人か火の蜥蜴、火の鳥に育てられたから火の侍になったってことでいいんですね。エヘッ!」

 もちろん妖怪エヘエヘはエヘ幽霊である。

「平和っていいですよね。エヘッ!」

 茶店の歌姫にとって戦いなど他人事である。

 つづく。

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