出会い

そしてそいつとの出会いは突然やってきた。風鈴が走ってくる。

「お姉ちゃん。助けて」

男が走ってくる。獣人の力を使えばすぐに追いつけたろうに人間だと思い手加減しているのだろう。風鈴の体には無数の引っ掻き傷があったがどれも浅い。


とにかく風鈴をかばい唸り声をあげる。男は両手を上げて

「そいつの兄だ。戒律破ったお仕置きをしなきゃならない返してもらおうか」


「風鈴、今度は何したの。あなたは人間だからいい。でも獣人の存在がばれたら私達は間違いなく狩られて抹消されるか研究所送りなの。庇ってあげられるのは最初のうちだけよ。繰り返せば一族のリンチがまってる。女の子は悲惨よ?」


「昔人は人じゃないものと上手に生きていた。って作文をかいただけ」

私は振り向いて風鈴と視線を合わせた。

「あのね、誰も信じないうちはお兄ちゃんのお仕置きで済む。私も見なかったことに出来る。でもね、一人でもその人間が悪意をもって獣人を探し出したら


私達はその人間を殺しその人間にそのことをおしえた人物をとらえ監禁最悪は殺さなきゃならない。その命令をくだすのは私よ?そして殺すのは家族。わかる?私達がかばってる間に風鈴は獣人のことを知られないようにする習慣をみにつけてもらわなきゃならないの。お兄ちゃんのお仕置きですむあいだによ?」


「ごめん…気をつける」

「言葉なぞ意味なさねぇ。よこせ。もっとひっかいてやる。しばらくは監禁だ」

「気をつけるって言ってるじゃない。それで充分よ。すでに引っ掻きすぎだわ」

「女はだから甘いんだよ。まだなまぬるい。返せじゃなきゃ力づくになる」

「やってみなさいよ。力づくで。泣きをみるのはあんたよ」


私と男は臨戦態勢に入った。蹴りをしかける難なく避けながら引っ掻いてくる服が破けブラが露出する。こいつマジで獣人相手には手加減する気なさそうだ。ならば本気を出す。飛び掛るのと同時に獣型に変化する狼は思うより大きい服ははちきれて破れてしまう。帰るときはこの姿のまま帰るしかないだろう。


肩に噛み付こうとすると力いっぱい投げられ壁に衝突する。衝撃は最低限、受身はとれた。向こうも獣型に変化した。引っ掻きあい取っ組み合い噛み付き合う。こいつ強い。私は兄二人よりも強い。負けたのは父にぐらいだけだ。だけど…


風鈴が泣き叫んで止めてと言っている。だけど一度戦い出したら決着がつくまで止められない。動けなくなるか首をとるかまでだ。戦っていると風鈴が割って入ってくる。くっ、私は体当たりで風鈴を転がした。当然、相手は見逃さない。


だが、こちらも承知。そのまま風鈴と一緒に転がり後ろ足のばねで一気に相手に詰め寄る。背中に噛みつき打撃を与える。だが大きさが違う力いっぱい振り払われた。

次で決める。相手にとびつき首を狙うが足で巻き込まれ上下が入れ替わる首に歯を立てたのは男の方だった。観念して目をつぶる。


だが食い込んだ歯は食いちぎりはしなかった歯は抜け人型になって座り込む。

「さっき命令するのは私だと言ったな、未来の統括者をこんなことで殺すわけにもいかないだろう。人型に戻れよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る