パピコとエンドロール

「パピコ食べる?」

コンビニから帰ってきた彼女がガサガサとレジ袋を漁ってそれを取り出す。

「ありがとう」

差し出されたパピコの片割れを受け取る。容器の周りに張りついたしもが体温で少しずつ溶けていくのを感じた。このツマミを捻るのは一体いつぶりだろうか。


「もし自分の人生が終わった時にエンドロールが流れたら、どれくらいの長さだと思う?」

残りわずかになったパピコを咥えながら彼女がそんなことを言う。

「どうしたの急に、柄にもなく深いこと言って」

「失礼な。いやこの前エヴァを観たんだけどめちゃめちゃエンドロール長くてさ、私の人生が映画ならどれだけエンドロールが流れるんだろうなって」

自分のうなじの辺りにホクロが二つあることを彼女はきっと知らない。はきっと彼女の映画の脚本には載らない。

もしも人生が映画だというのなら、僕の脚本と、他にはあと何人の脚本にえがかれるんだろうか。

「さぁ、でもきっと僕の映画のエンドロールよりは長いと思うよ」

「え〜どうかな、君のエンドロールで私は何番目くらいに出てくるんだろうね」


カーステからフジファブリックの「若者のすべて」が流れている。

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