山田詠美先生の『放課後の音符』 幼馴染が恋人に変わる瞬間

 山田詠美先生の恋愛小説が大好きだ。


 学生時代に特にキュンときたのが『放課後の音符(キイノート)』


 複数の短編が収められているが、その中でも『Sweet Basil』と『Keynote』という女子高生の話が好き。


 (以下またもネタバレしますm(__)m)


 『Sweet Basil』


 主人公は自分の中にある幼馴染の純一への恋心を意識し始める。


 彼は野暮ったいけれど背が高くてバスケットをしているスポーツマンで女子に人気がある。


 主人公は幼馴染という理由で彼といつも親しく話せる特権を持っていることに優越感を感じていた。


 しかし、純一に主人公への恋愛感情はない。


 リエという女子はいつも純一を見つめていた。


 リエは香水をつけており、あるとき主人公は彼女に純一のことが好きなんでしょう? と聞く。


 答えない彼女に「リエの目つき、いやらしいよ。純一に媚を売ってる」という主人公。


 リエは「私、あなたのこと、嫌いだわ」と言い返す。


 主人公はこんな意地悪なことを言う自分が嫌いだとイヤになる。


 主人公は純一に「おまえ、最近、ちょっとおかしいんじゃないの?」と言われる。


 やがて、リエと純一は付き合い始める。


 そんな切ない恋のお話。


 『Keynote』


 主人公は同じ女の子。


 彼女の家は母親が家を出て行き、父親と恋愛の話をする珍しい親子関係。


 彼女は父親に「本当の恋も知らないで大人になれるのかなあ」と聞く。


 それに対し、父親は「待つ時間を楽しめない女に恋をする資格なんてないんだよ。言いかえればね、いつ恋に落ちても大丈夫って自信のない女は、むやみに人を好きになんてなっちゃいけないんだ。それが、大人の世界のルールだよ」と言う。


 主人公は父親からそういうことについて考えられるようになったのは素敵なことだと、プレゼントにミルの香水をもらう。


 父親は彼女に「良い香りを常に身に着けていなさい。良い香りを身に着ける時間のある女性なら、たいていのことはカバーできる」と言われ、ミルをつけるようになる。


 ある日、純一から「彼女と別れて失意のどん底」という紙切れを授業中にこっそりもらう主人公。

 

 それが教師に見つかり、その場で読み上げられ、みんなに笑われる。


 放課後、純一の恋愛話に付き合う主人公。

 

 そこで初めて「リエよりずっと前から、あんたのこと好きだった」、「でも、今は友達としてね」と打ち明ける。


 それからしばらくして友人のユリから、純一と付き合っているという噂が流れていると聞かされる主人公。


 その話を純一にしたところ「ごめん。おれ、言っちゃったんだ。おまえと付き合い始めたって」と言われ、驚く主人公。


 純一は「おれ、けっこう妬まれてるもん」と主人公の魅力に男子学生が注目していることを打ち明ける。


 それから二人は付き合い始め、夏休みにベットまで待てずに床の上でエッチをする。


 彼のことが大好きで彼に振り向いてもらいたくて主人公の気持ちに全くゆとりがなく、彼を追い回していたときには他の女性に彼を奪われてしまうのに、彼女が香水を身に着け、いつ恋に落ちてもいい準備を始めるようになったところ、純一はじめ他の男子学生から魅力的な女性としてうつっていくという過程に感動した。


 香りの魔力。


 この本を読んで初めて「ミルってどんな香りなんだろう」と香水に興味を持った。


 フランス語でMILLEは1000という意味。


 1000人の女性がいれば1000通りの魅力を引き出すように香る、アラビアンナイト(千夜一夜物語)のように様々な物語が生まれるという意味らしい。


 世界でいちばん高い香水として長く有名だったミル。


 香水のオシャレという世界を知ったのは山田詠美先生の本がきっかけだった。


 山田詠美先生、珠玉の恋愛小説をありがとうございますm(__)m

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