少年少女の戦争Ⅶ

 思考の中身はどんどん一人の存在に集中していき、四人の視線は一機の輸送機へと向けられる。そして、その輸送機の中では白と黒の疎ら模様の卵のような殻が今もただ置かれている。

 その一機の輸送機は、空路を開ける為に少しずつ開かれた森の中へと進んでいく。少しずつ離れていくその光景が何故だか寂しくさせる。決して遠くに行くと言うわけでもないのに、四人の心の中は小さく空いた穴に風が通る。心に吹いた風は弱いはずなのに、小さな穴を通る瞬間に吹いている風は強くなる。


「……やっぱり、鬼ごっこはやめるのよ……」


 下に俯いた由愛が元気を無くした声で遊ぶことを拒否すると、他の三人もそれに同意した。

たった一人の欠落がここまで響いている。仲間意識が強ければ強い程、欠けた時が大きい。

 それからと言うもの、明日奈たちは自分たちの仕事が無く自分の時間を過ごすことに。

憐矢は自分の愛用している黒い光沢が鈍く光るスナイパーライフルの調整を、由愛はやることがないので昼寝をすることに。明日奈はそんな由愛に添いつくかのように一緒に眠りに就こうとする。そして、幸はゆっくりとした歩調ではあるものの、足に強く力を込め地面を踏みしめて一樹のいる輸送機へと向かう。


「私は……一樹君の傍にいるのが仕事。学園長からもそれを言い渡されたんだから、いつまでも、どんな時でも傍に……」


 エンジンを吹かしながら前へと前進し終わった輸送機のハッチから中へと入ると、卵のある場所から一番近くの席に腰を降ろしてジッと卵を見続ける。


「いつ一樹君が出てくるか分からないんだから……誰かが見守っててあげなきゃだめだよね」


 そんな幸の目が虚ろになり始める。

 輸送機の中で繰り広げた小さな戦争で集中力を使い切り、いつでもストンと意識を落としてもおかしくない。それでも、幸は寝まいと心に固く約束をする。誰との約束ではなく、ただ単の自分との約束。彼がいつ卵の殻を破って出てくるのか……近くに誰かがいるという安心感を与える為だけに傍にいる。

 だが、それでも人間にとって欲望は耐え難いもののようだ。睡魔という悪魔が勢力を上げて押し寄せてくる。何度も眠るなり、身体が傾いた瞬間に目が覚める、それを何度も繰り返す。最終的には体が知らない間に横へと転がっていて、そのまま眠りに就いてしまってしまったのだった。

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W・S・W《World・School・War》 将星 出流 @izuru3107

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