第7話 煙とお菓子と異世界人
科学国家シャルベキスト。
恐らく、転生者または異世界人が作り上げた国。
転生者はこの世界とは違う世界の輪廻からはみ出てしまい、この世界の輪廻に入り込み前世の記憶を持ちながらこの世界で生を受けたの者こと。
異世界人は転生者を含め、違う世界からの来訪者のこと。
この世界には無い知識を使い、この世界を発展あるいは破壊に追い込む者。
そして、この国の技術は明らかにこの世界の技術よりかけ離れている。
国を囲む壁はレンガではない、白く頑丈な壁。建物も似たようなものでできているようだ。
普通の国には真ん中に城があり、そこから町が広がっていく。
しかし、この国には城と思われる建物は存在しないようだ。
国の中心部近くには煙を吐き出す煙突の付いた建物が多く見られる。
なにかを作っているのだろう。先程の銃とか。
また、家などのほとんどの建物の窓は木のドアではなく、ほぼ透明な『ガラス』がついている。
道はレンガや壁と同じもので整備してあり、馬車が通る道と人が通る道が分かれてある。分かれ目には柵があり、ところどころ木が生えている。
排泄物などは落ちておらず、町には不快な匂いは無い。
これほど快適な町はないだろう。
町を少し歩くと、住宅街から商店街に入ったようだ。人でとても賑わっている。
売っているものはほかの国と変わらず、野菜、果物、肉、魚などの食料。武器や防具を売っている武具屋。食器や小道具を売っている雑貨屋など。
だが、ほかの国と違う点が。
商品が表に出ておらず、店の中で売られている。
商品を表に出す理由は通行人の目に簡単に留まり易いからだ。
しかし、これには弱点がある。商品の窃盗に会いやすいことだ。店員は商品を取れれたことにすら気づけないこともある。
この国の店は閉じられた店の扉の横に商品と思われるものを撮った『写真』が。
なるほど、これなら商品が店員にバレずに盗むのは難しく、安全に通行人に宣伝できるだろう。
店の隣などにちょこちょこ見られる人が椅子に座って食事をしているのは飲食店だろうか。そこは壁がなく、柱から柱までが一面ガラス張りである。外から中の様子が見える。
だが、食べているのが肉や魚、パンなどではなく、なにやらグラスのなかに入っているフワフワとしていて光輝いているように見えるものだった。
なんなのだろうか。
隣の少女も目を輝かせ中の様子を見ている。
中は男性より女性の方が多かった。
わしも気になって中に入ってみたいが、残念ながらこちらはまだ目的地に到着したばかりでお互いに全身鎧を着たままだ。
「先に宿を探して、武装を解いてから来ようかのぅ」
「はい!」
やはり少女を気になるようだった。
宿を見つけ部屋を一つ借りる。
少女がお金を無駄に使わないように同じ部屋にするべきだと主張し続けたからだ。年頃のおなごが男性と同じ部屋を使うのはあまりよろしくないのだが。
お互いに鎧を外し、先程の場所に向かう。
若い女性の多い店にはこの年で入るのは若干抵抗があるが、好奇心の方が勝ってしまった。少女と同じくわしもワクワクしている。
チリリリン
ドアを開けて入ると中は程よく涼しく、甘い匂いがした。
客はそれぞれしゃべりながら食事を堪能している。
少し不躾だが、女性客に混じって数人男性客もいるがどの人も女性と一緒に来ているようだった。
開いている席に座り、注文票を見る。
そこには『パフェ』、『タピオカ』、『パンケーキ』などや昔、王も自分で作り好んで食べていた『スパゲッティ』なるものもあった。
名前の近くにそれと思う品の『写真』が載っていた。
ケーキは甘味で、よく王が食べておったし、わしたち騎士にも時々分けてくれたこともあったからわかるが、『パンケーキ』にはいろいろかけて食べるようだ。好みの『トッピング』なるものができるらしい。
『パフェ』は見ただけで何か、どういう食べ物かわからん。
『タピオカ』なるものは、飲み物と思われる茶色がかった液体の下に、黒く丸い固体が入っているようだ。
とても気になるのでこの三つを頼んでみるか。
店員のいるところに人が並んでいたのでそこに並ぶ。
順番がきたので商品を頼む。
なになに……、
「タピオカミルクティーを二つと、イチゴとホイップクリームマシマシふんわり幸せパンケーキ(なんじゃ? 名前が長すぎて危うく噛んでしまうところじゃった)二つ。フルーツ盛り合わせビックパフェ(写真を見た感じとてもでかいので)一つでよろしくじゃ」
店員が商品の確認に今言った名前を何も見ずに言った。
注文の準備ができたのでそれを席に持っていく。少女は目を輝かせている。そろそろよだれが垂れてきそうじゃ。
「それでは、どれを先に食べるかのぅ」
「先にパフェを食べててください! 私はその後に食べますので!」
「お、おう。わかったのじゃ」
このパフェと言うものはデカいのぅ。
わしならギリギリ一人で食べきれるぐらいの量がある。そのほかもあるから、少し食べてゆずるかの。
パフェは上にたくさんの果物がのっており、透明な器の中にも入っている。
パクッ
「ッ~~~!!!」
な、な、な、なんと言うおいしさじゃ!
果物は砂糖につけてあったのかというほど甘く、果物と一緒に食べた白いものはとても冷たく、甘く口の中で溶けていった。
白いものはたぶん氷を刃で削った『かき氷』なるものだろう。
「なんという……」
おいしすぎて言葉が続かない。
いつの間にか半分ほど食べていた。これはとても贅沢な食べ物じゃ。
「そちらも食べてみたいです!」
少女はすでに『パンケーキ』と『タピオカ』なるものを食べ終えていた。
なんという速さだ。
では、これを譲ってわしもたべてみるかの。
『パンケーキ』は上にたくさんの『ホイップクリーム』がのっており、またその上にイチゴがのっている。
ナイフで一口ぐらいの大きさに切り、ホイップとイチゴと一緒に食べる。
「あ、あれ?」
おかしい。先程までわしの目の前にあった『パンケーキ』はいつの間にかなくなっておるぞ。はて?
もしや、あまりのおいしさに夢中になって食べてしまっただと⁈
どんな味だったか覚えておらぬが、とても幸せじゃった。
『タピオカ』はほとんどが飲み物で『ストロー』で吸うと黒い物体も入ってくる。
とても甘い飲み物じゃのぅ。
モチッモチッ
ん? なんじゃ、この歯ごたえは。
どうしたらこんなモチモチになるんじゃ⁈
材料はなんなのじゃろうか。
新しい感覚じゃ。
「おいしかったのぅ!」
「はい! また来たいです」
「わしもじゃな。おいしすぎて夢中になって食べたせいで味を覚えておらなんだ。つぎは味わって食べたいものじゃ」
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