第6話 森と銃と先進国
隣国と言っても国とくっついているわけではなく、間に森林を挟んでいた。
騎馬に少女を乗せ老騎士は歩いてゆっくりと森を進んでいた。
森林と言うだけあって、木一本一本が大きく、葉が生い茂っている。
あの国は正面は風が強く砂塵が舞う砂漠、後方は木々が生い茂っている大きな森林と見つかりにくい土地のようだ。
そんなことを考えながら、隣国に向けて足を進めた。
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やはり旅というのはなにがあるか、わからんな……
わしたちの目の前に全長が宿1階ほどの高さのあるバッタがいる……
「バッタって……こんなに大きかったかのぉ……?」
「いえいえ!! そんなわけないです! 異常です! この大きさは異常です!」
キシャァァァァァァ!!
「バッタってあんな威嚇しましたっけ?」
「しないのぉ~」
シュバッッ!
こちらに飛んできた。気持ち悪いのぉ~。
わしらからこの森に入ってきておるので攻撃されるのはわかるが、そう易々とやられるほど、わしもやわではないのでな。
「すまんが、切らせてもらう」
わしは新しい剣を抜く。
「その場を動くでないぞ」
少女にそう言う。
少女が頷いたのを見て、自分の身体に『身体強化』、剣に『斬撃強化』、『耐久強化』を付与する。これくらいなら付与術士がいなくても使える。
それが付与できたのを確認し、敵に向けて駆け出す。
一瞬で接近し、そのまま……
切る!
ズバッ!
剣を鞘に戻す。それと同時に
ギュッ!
…………ドサッ
バッタは体を綺麗に縦に半分に切られ、倒れた。
「良い切れ味だ。」
断面図を見ながら言う。
あまり見たくはないが、体の構造がわかるくらい綺麗に切れた。
剣には体液、汚れひとつついていない。
「すごい!」
少女にはすごく見えるみたいだが、なんてことはなかった。
すごいとするなら、剣の切れ味だと思う。
「これってどうするんですか?」
バッタはのぉ、どうしよかのぉ? 外骨格は軽くて丈夫で防具として使えるが、今着けている防具に比べると大幅に劣る。だが、
「外骨格は取ろうかの。多分、売れるじゃろう」
傷も少ないしのぉ。高く売れるじゃろうて。
「それ以外はどうします?」
「………身は食べれなくもないぞ」
「やめましょう」
即答じゃのう。
じゃが、わしも無理じゃ。昆虫は気持ち悪い。顔が。それに飛ぶ。あれで。気持ち悪い。
「放置すると危ないことが起きるかもしれん。死骸は燃やすかの」
「炎魔術も操れるのですか⁈」
「もちろんじゃ」
五大魔術(炎、水、土、風、雷)は一通り操れる。王宮魔導士団には負けるが、王宮魔導士見習いには勝てるじゃろう。
騎士団長たるもの、剣を振るだけのものではないのでな。
バッタの外骨格を剥ぎ(新しい剣で)、残った死骸を燃やして、また足を進めだした。
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二度あることは三度ある。
一度目があれば、二度目もある。
わしらの目の前には先程のバッタより一回り大きい……
虎と会った。
「虎って……こんなに大きかったかのぉ……?」
「いえいえ!! そんなわけないです! 異常です! この大きさも異常です!」
先程と似た会話になってしまった。
この摩訶不思議な現象にこの年で会うとは。
老骨を少しは労わってくれんかの。
ガウッ!!
巨体に似合わぬ、虎らしい俊敏さだ。
ガウッガウッガウガウッ
キンッキンッキンキン
虎の突進に剣で応戦しようとしたが、毛があまりにも硬い。バッタの外骨格よりも硬いぞ。剣がはじかれておる。
肌を傷つけてはおるが、致命打にはならない。
避けるしかないとは。
……世界は広いのぉ……(現実逃避)
すべてを知るには人の寿命は少なすぎる。
物思いに更けているが……
「わし一人じゃったら逃げるでいいんじゃが、今のわしの後ろには護るべきものがおるのでな。切らせてもらう」
自分の身体に『身体強化』、剣に『斬撃強化』、『耐久強化』、自分と剣の両方に『魔装:雷』を付与する。
逃げていてわかったが、こやつ風を操って加速しておる。
なら、その加速と雷の速さで切る。
虎に突っ込み、避ける暇を与えずに……、
ズバッン!!
体を縦に両断する。
「虎の毛皮はなかなかに高く売れるぞ」
老騎士は森の中で笑みを漏らしていた。
この後、残った死骸はバッタと同じく燃やしてから足を進めた。
森に入って10日後。
ようやく森を抜け、隣国科学国家シャルベキストの門が見えてきた。
ひとりの門番に入国許可書を発行してもらっている間、老騎士はもうひとりの門番に質問していた。似たようなものを見たことがあったから。
「そこな門番。おぬしが持っとるその武器はなんじゃ?」
「これですか。これは『魔銃』と言いまして、属性を持った魔石を超高速で敵に当てる武器です。これを生産しているのは我が国だけでしょう」
『魔銃』。属性を持つ魔石を遠距離から敵に当てる武器。魔力を持ってない人(平民や村人)でも魔術のように使える魔術礼装。属性によって使い道が変わってくる。
なぜ、老騎士が知っているかというと……、
「やはり。王が使われておった武器と似ておる。この国にも異世界人が……?」
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