第5話 お泊りと新しい剣と旅の始まり
宿を出てからどこに向かうかはすでに決めてある。
剣の製作を頼んだずんぐりむっくりマッチョの鍛冶師、ヴォルフガング・ゲネルボルトの工房だ。何気に工房は大きかったので泊まる場所くらいあるだろう。
コンコン
「……誰だ、こんな時間に……」
「すまん。わしじゃ。ちょっと襲撃にあっての。宿を出てきたんじゃ」
「まじか。詳しく話を聞かせろ。後ろの嬢ちゃんのこともな」
「ああ。もちろんじゃ」
工房の奥(ヴォルフの部屋だろうか)の部屋に通された。
「それで?」
「ああ、1から話す」
わしが奴隷商でこのエルフの少女を買ったこと。少女の首輪を切ったこと。首輪に爆発の術式が入っていたこと。首輪を取った後に襲撃されたこと。問題なく倒したこと。宿を出るまでのことはほとんど話した。例外、少女が王女だと言うことを除いて。
「まずだ。なぜこの少女を買おうと思ったのだ? 奴隷を買うなんて初めてだろ?」
「ああ、偶然入った店が奴隷商でそこで見かけてな。わしが次に仕える者はこやつではないかと、わしの勘がゆっておった」
少女は驚き顔でこちらを見ている。
そうか。なぜ買ったのがこの少女なのか言っておらんかった。
「それは王に初めて会った時以来か」
「そうじゃな。じゃが、その時より強いかもしれん」
「そうか。ならその勘を信じなければな。それが運命であろうとなかろうと」
「ああ」
「それで?」
「そうじゃった。そうじゃった。泊まる部屋を貸してくれんか」
「二部屋でいいか」
「一部屋で良いです!」
「「!!」」
突然の大きな声に老人2人とも驚いた。
「襲撃があると思うと怖くて! 眠れません!」
「襲撃者くらい簡たん……」
少女の目が訴えてきとる。それ以上言うな、と。
「はぁ、わかったわい。一部屋貸してくれんか」
「あ、ああ」
「んふんーー」
……少女の笑顔は可愛いの~。……はぁ。
特に何かあるわけでもなく朝を迎えた。
「……起きてくれんかのう」
わしに抱きついて寝とるエルフの少女以外は。
この少女、スタイルが良すぎる。まだ年が若いせいか身長はそれほどでもないが、胸が出ている。エルフは胸が絶壁と聞くが個人差があるのだろうか。それとも王族だけ?
その胸が寝間着が緩いせいでこぼれ落ちそうになっている。目に毒だ。
「おはようございます!」
「ああ、おはよう」
「どうしたんですか? きつそうですよ?」
おぬしが無防備過ぎるからな……
「おう、起きたか」
ヴォルフは既に起きて作業をしていたみたいだ。
「あ、おはようございます!」
「元気がいいな。おはよう」
朝食は3人で食べた。少女の希望で。
「エドワード、この後時間をくれ。良いものを見せてやる」
ヴォルフはニヤニヤしながら言ってきた。見せたいものはだいたい予想できる。
「ああ、よろしく頼む」
朝食あと。
「これが見せたいものだ! どうだ?」
台の上に乗っているのは一振りの長剣だった。
予想通りだった。
「振ってみても良いか?」
「ああ、いいぞ」
ぶぉん ぶぉん
「いい剣だ」
「だろう? 材料は黒魔鋼とミスリル、魔石を少し混ぜてある。握り革に雄の魔鹿の皮を使っている」
片刃の長剣で切り刃に反りが入っている。長い割に細身だ。剣先はまとまっており突きやすそうだ。握り革も手に馴染む。
「造りは極東の武器を真似させてもらった。お前の戦闘に合わせて作った。切れ味も良さそうだろう? 最上級の黒魔鋼とミスリル、竜の魔石を使っているから、魔法伝導率も高いぞ」
本当に良い剣だ。現役の時以来か。
「これでどのくらいだ」
「金貨1000枚は下らないな」
「そうか。なら……」
「だが。……こっちも見てくれ」
そう言って壁に立てかけてあったものを持ってくる。
「これは……?」
「嬢ちゃんの剣だ」
「え⁈」
それはたぶん同じ材料で作られている細剣だった。
鍔の部分の装飾が綺麗だ。貴族が飾りに持っている剣のように装飾が多いが、実際に使えるのだろう。
「これを合わせて金貨1000枚にしてやる」
「いいのか?」
「お前には借りがたくさんあるからな。これくら問題ない」
「いいのだな?」
「ああ」
わしは腰にある革袋から白金貨1枚と金貨1枚を取り出し、渡す。
「泊めてもらった分だ」
「ありがとよ」
「泊めてくださりありがとうございます。剣も大切に使わせていただきます」
「おう。大事にしてくれや。毎日磨いて魔力を流してやれ。そして名前を付けてやれ。必要な時に助けてくれるかもしれんぞ」
「はい。ありがとございました」
「それではな」
「ああ、また寄ってくれ」
そして、わしたちは旅の準備をするため、移動し始めた。
次は、防具店である。そこで買ったのは少女用のドレスアーマーだ。可愛いし似合っているが一応防具なので露出は少ない。リボンなどの装飾も少なめにしている。
わしもマントを新調した。
その後に、ほかに必要なもの買う。寝袋をもう一つ追加。食料。水袋。鍋などの料理用具。ある程度は買えただろうか。
国を出る前に門番に近くの国の場所を聞き、地図をもらう。
次の目的場所は隣国、科学国家シャルベキスト。
わしは入る時より一人増えて新しい旅を始めた。
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