第4話 首輪と強襲と夜道
老騎士と少女は部屋に戻ってきた。部屋に戻ってすることはさっき言っていた首輪の解除、奴隷契約の破棄だ。
「今から首輪をとるからな」
「はいっ……」
老騎士は剣を取って少女に向ける。
「ひゃっ⁈⁈」
「動かんでくれ」
シュンッ
「へ???」
少女は首輪が外れていることに気づいていないようだ。
カシャン……ボトッ
「!」
少女の口は開いたままだ。かわいい。
ここでも老騎士の心は浄化された。
「……ど……ど、どおして奴隷の首輪がとれるのですか⁈ 鍵は⁈」
「鍵を使うと爆破するように首輪に術式が入っておった。それを防ぐために術式ごと切るしかなかったのじゃよ」
「…………」
少女の口は開いたまま閉じない。
おや、どうしたのだろうか。何におどろいとるんじゃ?
「どうかしたのじゃ?」
「ど、どうしてわかられたのですか? 術式が入っていることに」
「ん? ……ああ。わしのスキル『鑑定眼』は物の状態もわかるんじゃ。『首輪(鍵を使うと術式が作動)』という風に。なかなかに便利なスキルじゃ」
わかるのはそこまでで、作動する術式が何かまではわからん。そこはもう経験と勘じゃな。今まで何人、顔が弾ける所を見たか……
「便利なのですね。……いや、それもなんですが! どうして首輪を切れるのですか⁈ 首輪は切られないように黒鉄で作られているのに……」
ん? ここまで驚くほどのことかの?
これくらい部下の騎士は包丁でも簡単に切れるぞ? もちろん、わしは手刀でも切れるが、術式が入っておるなら剣を使わねばな。
わしもまだまだじゃ……
じゃが、これが切れる理由はまだ内緒にしておかねばならんみたいじゃ。
「おぬし、自分の国では何をしておったのじゃ?」
「話が……。私は一応王女のでしたので、座学と護身術、魔術、作法などを勉強しておりました。……それがどうなさいましたか?」
「いや、ここに来るまでの足運びか上手だったのだな。騎士の真似事か?」
「いえ! 将来は騎士なりたくて……、それで……その……、勉強を抜け出して王宮で訓練している騎士と一緒に訓練に混ぜてもらってました……」
最後らへんは声が萎んできていた。
王女が騎士と訓練していて怒られでもしていたのだろうか。
「将来は騎士にか……。何故騎士になりたいのじゃ?」
「昔、王宮に賊が攻めてこられて、騎士の方々に退治してもらったのです。その時に女性の騎士の方を見たのですが、とても凛々しく綺麗でしたのでそこから憧れておりました。幼い私に戦闘を見せたくなかったのかすぐに布を顔に掛けられ逃がされましたが、布の隙間から見えたその方が賊をスパスパと切っておられて血に濡れていらしたのですがそれも綺麗で。その方とももう会えませんがが……」
「ところで良いか?」
「はい?」
「その首輪は奴隷商から付けられたか? それとも奴隷商に来るまでに付けられたか」
「捕まってすぐ付けられたと記憶しております」
そうか、やはり。
少女は気づいておらぬが、騎士の話をしている時から宿の周りと入口付近に人が集まってきているようじゃ。
強襲、襲撃じゃろうな。相手はこの少女が高貴な者だとわかっておるのだろう。
少女に襲撃が行われることを伝える
「わ、私の正体がバレているのですか⁈」
慌てている少女にわしの使わない短剣を渡す。
「護身術はできるのであろう? 何かあれば身を守れ。おぬしのところへはやらんがな」
「だ、大丈夫です。自分は自分で守れます!」
「ああ、隅で大人しくしておれ」
「はい」
この部屋で戦うのはちと狭過ぎる。
わしから敵に向かうか。いつもしていることだ。問題ない。
わしは窓から身を投げた。後ろから息をのむ声が聞こえたが、そのまま重力に身を任せ、外にいる襲撃者の真ん中に降りる。
10人ほどか、ちと少ないな。
「なんだ! 人が降ってきたぞ! 敵襲! 敵襲!」
攻めてきたのはそちらじゃろうて。
だか、これは好奇。攻め時じゃ。
そして、わしは叫んでいた敵の首を飛ばす。その後ろにいた3人の首も飛ぶ。
「「うおおおぉぉぉぉお!」」
攻めてきた2人の首を同時に飛ばす。後ろで怯え腰になっている者の首を飛ばす。これで半分ぐらいか。
入口付近にいた敵もこちらに向かってくる。
「二手に分かれろ! 俺らは奴隷を狙う!」
ほう、こちらの方は熟練の者か。じゃがな
「ここは通せないのでな? 通行止めじゃ」
昔、王が言っておった台詞を真似て言う。
いくら熟練者と言えども、わしには勝てん。少女のもとへは行かせん。
少女のところへ行こうとする2人の首を先に切る。残り3人。
残りの3人は同時に攻撃してきた。また首を飛ばそうとしたが、飛ばせたのは2人だけ。
フェイクだ。
もう1人はジャンプでわしが降りてきた窓まで行った。
すぐに追ったが相手が先だった。
間に合わない、と思ってすぐに追いついたが
ざしゅっっっ!
最後の1人が切られて崩れ落ちた。
切ったのはもちろん、少女だった。
「なかなかの太刀筋じゃ」
「いえいえ、それほどでも」
いや、ほんとに綺麗だった。敵の返り血が少女に掛かっていないのだ。この年でそれができるのは凄いとこだ。
この少女の評価を少し上げねばな。
それより、
「すまん。おぬしのところまで敵を向かわせてしまった。わしの油断じゃ」
「大丈夫です! 相手も私が女子供だと油断していたので」
ふんすっ!
少女はドヤ顔だった。勝ったのがよほど嬉しいのだろう。
ほんとに油断した。衰えか……
宿を騒がせてしまった礼として宿に金貨一枚を渡して、宿を出た。
この宿はもう使えんな。
わしは少女を連れて夜の町を歩いた。
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