第3話 エルフの姫騎士と癒しと、じいや心
牢屋の中にいたエルフを鑑定してみると、称号のところに『元・エクシュエルト王国第三王女』とあった。そのエルフの名前は『サンティーラ・エリザベート=エクシュエルト』という16歳の少女だった。
王国の名前は知らないが、老騎士はなぜ少女が奴隷に落ちているのか興味を持った。
鑑定関係スキルを持つものは珍しいし、すでにこの商人は持っていないことは調べている。
少女と話すにはこの男は邪魔だな。
「案内助かった。もう持ち場に戻って良い。少し奴隷共の品定めをしたい」
「わかりました。それでは、ごゆっくり品を見て行ってください」
そう言って商人を下がらせる。
これで話せるだろう。
「そこな少女よ。話がある。周りに聞かれたくないため、ちこう寄ってくれ」
「……なんでしょうか」
「……おぬしを鑑定させてもらった。王女ということも知っておる。なぜ奴隷に落ちておるのか、話を聞きたい」
「⁈⁈…………そうですか。……はい、私は王女でした。1年ほど前に起きた戦争に敗れ、家族と国民に逃がされました。しかし、その甲斐なく、逃げる途中に賊に捕まり、ここに売られました。……純潔の方が高く売れる、と何もされませんでしたが。王女ということは周りにバレていないと思っていましたがここまでのようですね」
こやつも逃がされる立場にあっていたようだ。少し、親近感が湧いた。
「いや周りにはバレてはおらぬ。……そうか、その若さで辛いことを経験したな。……それよりここを出たくはないか?」
「⁈ 出していただけるのですか⁈」
「一度おぬしを買わねば無理だがな。まあ、ちゃんとその後に奴隷契約を取ることもできる」
「わ、私を、購入できるのですか?」
「ああ、そこは問題ない」
「そうですか……」
「それと、行く場所がないなら、わしの旅に付いてこぬか」
「⁈ た、旅ですか?」
「ああ」
老騎士が少女を旅に連れ出す理由は、まず自分が仕えるべき相手なのか知るためだった。
さすがに初対面の相手に仕えようとは思わない。
だが、少女は称号に『王になる者』とあり、この称号はかつて自分が仕えていた王も持っていたものだった。称号は一種の予言じみたこともするため信用してもいいだろう。
それと、ひとりで旅をするのが寂しくなったのだ。老騎士には実の家族はいない。家族と思えるのは、王とほかの騎士団長、そして自分の部下たちだった。
老騎士に今家族はいない。年もあるだろうが最近は寂しさが色濃くなってきた気がする。それを埋めるように少女と出会った。
少女を思う気持ちは年の差的には孫娘を思うような感じだった。
大事にしたい。見守っていたい。危ないことはこれ以上させたくない。そんな感情だった。
「わかりました。私を旅に連れて行ってください!」
「ああ。商人! この奴隷を購入したい!」
「お買い上げありがとうございます!こちら金貨…………」
奴隷商を出るころにはすでに空は暗くなりかけていた。少女の新しい服装を揃えるためだ。じいや心とも言うのか、少女に似合う服装を探すのに時間がかかったのだ。少女が綺麗になるたび、老騎士の老いた心が癒されるような感覚だった。
買った服はすべて魔法の袋とでも言うべき『異空間収納袋』に入れてある。これの大きさは腰に下げても問題がないくらいの大きさしかないだが、持ち主の魔力の量によって最大収納量とても便利である。
あと買わないといけないのは少女用の防具と武器。
武器はヴォルフのところで買えるだろう。防具をどうするか。今日は遅いから明日決めるか。
「首輪はあとで外すから少し待っていておくれ」
「あ、は
グウウウゥゥゥ……
……い……」
奴隷商ではあまり裕福な食事はでなかったようだ。
明日の予定が決まったことだし、そろそろ夕飯にするか。町の屋台で食べるか、宿で食べるか。老騎士は昨晩も食べてないため(食べ忘れ)、お腹は空いていた。
一応少女を人目から避けるため、宿で食事を取ることにした。
少女は首にある奴隷の印の首輪をつけているがこれはフード付きケープで隠しているので問題はない。
宿に戻り、食堂に向かう。
老騎士にもここの注文の仕方はわからない。わからないがとりあえず空いている席をとる。正面に少女を座らせる。
すると、こちらに受付嬢が来た。どうしたのかと思っていると
「ご注文は何になされますか?」
ああ、注文を聞きにきたらしい。注文は決まっていないのでオススメを聞いてみる。
「オススメは日替わりメニューですかね。本日は、オニオンスープとパン、サラダ付きですね。パンはおかわりが無料でできますので必要な時はお呼びください」
パンのおかわりができるのは良い。
受付嬢? に日替わりメニューを注文した。
日替わりメニューは庶民的な薄い味付けだったが、パンは柔らかくおいしかった。
結局、2人でパンを3つおかわりした。
老騎士たちは部屋に戻ろうとしたが、少女の部屋をどうするか決めていなかった。
新しく部屋を取ろうとしたが
「すみません。空いている部屋が無いので……、一部屋を2人で使ってもらうことになります」
と言われた。一部屋を2人で使うか、老騎士は野宿して少女を部屋で寝させるか迷っていると後ろから捕まれる感覚があった。振り向くと少女が老騎士の服をつかんで上目遣いでこちらを見ており、
「部屋は同じで構いません……」
と言ってきたので同じ部屋を使うことになった。
老騎士は先程の少女の上目遣いを頭の中で反芻し、心を癒されるのであった……
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