2話目、家
私が今住んでいる家は、古い家を立て壊して出来た新築の家です。
その古い家の時には、祖母が一人で住んでいましたが、私が幼い頃に亡くなっています。
亡くなった後、取り壊してから長年更地になっていましたが、父がその土地に家を建て、住んでいるのは私と父と母の三人。
事が起きたのは冬だったと思います。下校の時間には、すっかり暗くなっていた時期でしたので。
外は真っ暗な中、学校から帰ってきて自分の部屋のベッドで横になっていました。
とくにする事もなく、スマホをいじっていると廊下から音がします。
聞こえてきた音が妙だったので、自然と意識は音に集中してしまいました。
その音というのは、廊下を誰かが静かに歩いているだろうという音。
ぎぃい ぎぃい ぎぃい
とまるで古い廊下を歩いているかのような音。
先ほど書いた通り、私の家は新築で、家族や私が歩くと乾いた様な短く『ぎっ』とか『ぱきっ』という音しか聞いた事がありませんでした。
古い家の時の記憶を必死に思い出そうとしましたが、廊下の音なんて覚えておらず、今の現象が亡くなったおばあちゃんが私に会いに来ているんだ、と楽観的に思えません。
その音は私の部屋の扉の前で止まりました。
私は扉の方に視線と体を向けました。
しかし、その後は音も鳴ることなく、ましてや扉が開くこともありませんでした。
私はベッドから起き上がり、扉に近づいてドアノブを回しました。
ゆっくりと扉を開けても誰もいませんでしたし、あの耳につく廊下の歩く音もしません。
不気味に思い、自分の部屋から出てリビングの方に向かおうと、自分の部屋の扉は開けたまま数歩廊下を歩いた時、背後から音がしました。
ぎぃい ぱたん
廊下を一歩、歩いたであろう音と扉が閉まったであろう音。
振り返ると、しんと静まり返った廊下に、閉まっている扉しか見えませんでした。
私は急ぎ足でリビングに向かい、それからしばらくは昼間しか自分の部屋に入りませんでした。
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