百物語
榊原 夢
1話目、旅館
私に話してくれた方、Aさんという男性のかたから聞いた話なんですけど
Aさんが、結婚されてる方なんですが奥さんと温泉旅行に行ったんですね。
その温泉宿で変な事があったって言うんです。
そこは、凄く新しい温泉宿で出来てすぐAさん夫妻は行ったらしいんですが、宿についてまずAさんが感じたのは暗いなって印象を受けたみたいなんです。
真新しい建物に照明も煌々と付けられていたのにも関わらず何だか薄暗かった。
外れの宿ひいちゃったかなぁとAさん思ってたみたいなんですけど、
奥さんはきれいね!凄いね!これてよかったね!って大はしゃぎしてくれて、
あー連れてきてよかったなぁ、自分の考えすぎかなぁと喜んでくれた奥さんを見て考え直してたんですけど・・・。
その後、宿の周りをゆっくり散策したり、名物食べたりして楽しんで過ごしてたんですが、事が起きたのは宿に帰ってきて温泉に入ろうとした時でした。
温泉に奥さんと向かっていて、廊下の先にまず女湯、女湯の先にさらに曲がり角を曲がった所に男湯がありました。
Aさんは奥さんと待ち合わせの約束をして、男の湯の方へ向かって曲がり角を曲がったんですね。
「わっ」
Aさん短く驚いた。
角を曲がったすぐ自分の目の前に仲居さんが立っていたんです。
Aさんに背中を向けて。
「びっくりした・・・すいません」
びっくりしていて、何について謝っているかもわからなかったんですが、仲居さんに謝ったんですけど、その仲居さん、微動だにしなかったんです。
喋りも振り返りもせずにAさんに背中を向けたまま。
なんだ?と思ったAさん、今度は大きめな声で
すいません!
と呼びかけてみた。けど、やっぱり振り返らない
「あの、すいません。清掃中で「何やってんの?」
言葉の途中で背後から話しかけられて今度は飛び上がるほど驚いたAさんはバッと振り向くと奥さんが不思議そうな顔して立っていた。
「何度も何度もすいませんって言ってるから何かあったのかと思ったじゃない」
「あぁ、いや仲居さんが」
「仲居さん・・・?」
Aさんが仲居さんの方を向いたんですが、仲居さんいなくなっていたんです。
最初に言った通り、その年に出来たあたらしい宿でしたし、来ていた着物もその宿のものだったらしく、何であんな物が出たのか見たのか分からないと言ってました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます