双子の過去Ⅴ
今から、もう三年前。
「暁ー、もう学校に行く時間だよー」
「うぅぅ、もうちょっと……もうちょっとだけ寝かせて……」
あの時の私と雪真は普通の姉妹として話すことが出来てた。それも、普通の姉妹とは比べ物にならない位に。
あの頃は中学生になってから半年と時間が経って、学校の友達とも仲良くしてた。自分でも、他の女子とは少しだけ友達が多かったし、雪真も友達と仲良くしてたりしてた。
実際、私の場合は男友達が多かった。
学校に行けば、仲のいい男子なんかは、
「暁っ、俺と勝負しろっ!!」
なんて、少しだけ恥ずかしいようなことを平気で言って、私は
「望むところっ!!」
とか、返してたくらい学校の男子とは仲が良かった。
ただ、二ヶ月に一回くらいだろうか、家に帰れば雪真が家のソファに腰を降ろしながら私に、
「また告白されちゃった……」
なんてことを口にするのだ。
正直、私的には羨ましかったり、大変だなぁ、なんて思ってたけど、雪真がモテること自体は私自身にとって自慢でもあったり、なかったり……。
だから、結局そういう話になった時は雪真が、
「でも、私はもっと真剣に生きてる人と付き合いたいなぁ……」
とか、ロマンチックに夢を口にして、その事は終わってた。
それから二人で毎日のように一緒に学校に通って、それで普通な一日を過ごすのが当たり前に戻った。
ただ単に当たり前に過ごす。自分たちにとっての当たり前。
私に例えるなら、中学校で仲のいい男子が「勝負しろっ!!」とか、「今日の空手では、俺が勝つからなっ!!」とか、言われたりするのが普通の日常。
雪真なら毎日、女子の友達と教室で談笑して笑って、授業を受けて、それで美術部で私の部活が終わるのを待つ。
そんな日常を一ヶ月前から過ごしてた。
だけど、そんな一ヶ月を過ごすと雪真は、
「私……好きな人が出来たかも……暁」
「雪真が選んだ男子なら相当いい奴ね……今度、誰なのか教えてくれない?」
「いや、これは暁にも教えられないかもしれない。結構、人気のある男子だから」
「人気ねぇ……」
この時の私の頭に過ったのが、サッカー部の三城屋みきやとバスケ部の十伊とおいっていう奴だ。
三城屋は如何にも純粋そうな人柄で、友達も多い。テストの成績も高くて、皆に優しいと評判の男子。そんなバスケ部の十伊は頭が少しだけ悪くて、それでも授業とかは一生懸命に受けている努力家。そんな二人のどっちか、雪真が二人のうち、どちらかに興味を持ったと言うなら、姉である私としては応援するべきだと、その時は思ってた。
「雪真ならどんな男子だって好きになるわよ、頑張りなさいよ?」
「そんな簡単に言わないでよ、暁。私だってこんな気持ち初めてなんだから」
「そんな事言って、雪真の照れ屋」
「私、照れ屋なんかじゃないもんっ!! そんな暁の方が男子と一緒に居るんだから彼氏くらい出来たって不思議じゃないでしょ」
「私にとって、男子は空手で戦う相手としか思ってないよ? だって、その方が楽しいじゃん。本気で戦える相手……なかなかいないわ」
「当分、暁に彼氏なんかできそうもないね……」
「? なにか言った、雪真」
「何も言ってないよ、早くご飯食べよう?」
そんな二人で人生で初めての恋話をした一時。
でも、そんな会話が私の沸点を下げさせるようなものになった。
またそれから、一ヶ月。
日に日に増してる雪真が抱いてる感情。それは双子の私だから分かることなのかも知れないけど、雪真は絶対に恋に対して大きな期待を抱いてるのが分かる。
学校の帰り、雪真と一緒に校舎から出てきて話をしていると、何故だか雪真の視線が私から違う場所へと向いているのだ。
学校の横に併設された体育館。
そこはバスケ部が練習をしている場所。
あぁ、雪真は十伊のことが好きなんだなぁ……。
双子であって、妹である雪真。たったの数分、又は数十分しか生まれた時間が違うにも関わらない私は、大切な妹が一人の男子に恋をしていることが嬉しかったんだ。
これまで恋というものに疎かった私達。そんな雪真が恋をした。
ちょっとした成長。そんな些細なものを感じたから、私は幸せだって思えたんだ。
「頑張りなさいよ、雪真……」
「ん? なにか言った、暁?」
「何も言ってないわよ、それよりも早く家に帰るわよ? 来週には期末テストだって控えてるんだから」
「そうだよね、でもテストでいつも困ってるのって暁じゃない?」
「そういう本当のことは口にしなくていいのっ!! いいから、家に帰ったら私に勉強教えなさい! いい?」
「はいはい、わかってますよぉー。そうしないと一緒の学校に行けなくなるかもしれなからね。私たちは高校までは一緒にするって約束したんだから」
そう、私と雪真は一緒の高校に進学する。
昔から何故だか、二人で約束していたのだ。どんなきっかけで、そんな約束をしたのかは本当に覚え
てない。でも、それは大切なことを一緒に約束したのは覚えてる。
「なら、私は暁の頭の中に知識をギッシリ詰め込んであげるから、覚悟しててね? 本気で泣きたくしてあげるから」
「ドSにならなくてもいいんだよ……? 普通に教えてくれるだけでいいから……ね?」
「いやぁ、本当にいい点を取ったら凄く気持ちがいいと思うよ? だから、頑張ろうか、ね?」
「いやぁぁぁぁああああ」
そんな風に冬が近づいている中で期末に楽しくも、少しだけ雪真に春が近づいて来るのを、私は感じてたんだ。
そして、期末試験一日目。
「…………………………わからない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます