人殺しⅡ

 途中で仏花ぶっかと榊さかきを買って、お墓がある場所へと足を運ぶ。ただ、その足取りは重く、遅い。

 目的地のお墓の前へと着いた俺は墓石に書かれている名前を確認する。


「唯花ゆいか、博隆ひろたか……ちゃんとここで合ってるな」


 そう書かれた墓石。

 そして、俺は仏花と榊を目の前の墓石に供える。そして、線香に火をつけて手を合わせる。

 お盆以来、ここには一度も訪れていなかった俺は少しだけ悪い事をしたような気がした。

 でも、それは仕方がなかった。

 今でも俺の中では鮮明に覚えているんだから……あの悲惨な光景を……。

 そして、あれから俺が患わずらっている病気。それのせいで夜も眠れなくなることも少なくない。それに、信号を渡る時は一瞬だけだが躊躇ってしまう。

 あの光景がフラッシュバックしないように、外見的には平静を装って、でも内心はビクビクと怯えながら信号を渡る。

 そんな毎日を過ごしながら、学校へと通っている。


「俺さ……友達が出来たんだよ。それも男子じゃなくて、女子の友達が……。みんな、ここに来る前に俺に話しかけてくれたんだ。心配だって言って……俺って意外に幸せ者なのかな?」


 墓石に話しかける俺の瞳には涙が溜まり始める。

 そして、あまりの苦しさに俺は地面に膝を着いて涙を流す……。

 俺が話しかけている相手……それは。


「母さん、父さん……ごめん。本当にごめんなさい……許して……」


 あまりの辛さに涙が止まらなかった。自分が悪かった…………。自分で自分を追い詰める。

 だから、俺は今日と言う日が嫌いだった。


 四年前の四月十二日……その日、俺は両親を殺して人殺しになった……。

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