第3話
「それで?我々はどうするんですか?」
「どうしたもんかねぇ」
俺たちとしては、このまま放っておく事もできる。
だが俺は既にあの中年オヤジに堂々と喧嘩を売ったんだ。放っておいたらおいたでアイツらが襲ってくる。
俺たちに令嬢を探させる為に俺たちを襲撃するとは、これ如何に。
まぁ貴族ってもんは多かれ少なかれ行動原理が一貫していないことがままある。追い出したのに取り返すというのもその良い例だろう。
「でも今回の件・・・・・・・・・きな臭い気がします」
「あぁ全くだ。何がどうなったら追い返した令嬢を回収したくなるんだ?」
余程の理由があるのだろう。
だが、魔法貴族にも関わらず絶望的に魔法が使えないセシル嬢に、それほど特別な何かがあるとは思えない。
「・・・・・・分からんなぁ」
情報が少なすぎる。
いくら貴族社会の裏の裏まで知り尽くしている俺でも、今回の件は全くもって想定外の事態だった。
だが、それがどうしたというのだ。
「カムイさん」
アンナが決意をした顔で俺を見る。
そうだ。
その顔だ。
俺たちがやるべき事は自明なのだ。
「・・・・・・・・・行こう。俺達は婚約破棄令嬢救済所だ。わざわざ向こうが来てくれるのを待つ事はない」
アンナの顔が明るくなる。
「はいっ!行きましょう!」
▷
「とは言ったものの。やっぱそう簡単に見つかんねぇな・・・・・・・・・」
俺たちは市中にいた。
動く事を決めた俺たちは、早速行動に移した。
まずは当の貴族令嬢を見つけて事情を聞き出さなければ。
だがすぐに見つかるわけがない。
「でしょうね。婚約破棄をした側であるカリトリム魔法侯爵家の捜索網にも引っかかってないんですから」
アンナの言う通り、貴族が全力で捜索しているにも関わらず未だに見つけられていないのだ。
俺達がちょろっと探したくらいじゃ見つかるわけがない。
「どうすりゃ良いってんだよこれ」
平たく言うと、
「詰んでるな。このクソ広い王都を探すってだけでも面倒なのに、下手すりゃもう王都からドロンしている可能性もあるときた」
「そうですね。令嬢がいないケースは今までも何度かありましたが、手掛かり一切無しで探すのは初めてですよ」
確かにアンナの言う通り、俺たちの所に依頼に来るのがいつも令嬢本人とは限らない。
令嬢が婚約破棄の責任を取らされて実家に幽閉されていたり、レアなのには悲しみのあまり高級酒屋で酔い潰れていた事もあった。
だがそれらのいずれも予め居場所が分かっていたり予測できたりした。
今回は違う。
捜索範囲はこの王都だけどころか、この国全体。
捜索難易度が既にカンストしてしまっている。
「どうする?カイン君に頼んで国単位で探してもらうか?」
この国の第二王子であるカイン君の力を借りればそういう事もできるが・・・
「いえ、それはまずいでしょう。カリトリム魔法侯爵家が全力で探している相手です。いくら気に食わないとはいえ、魔法侯爵家の戦闘能力はこの国に必須。このような事で国との関係を悪化させるのは、長い目で見ると損になってしまいます」
なるほどそれも一理ある。
アンナの進言を素直に受け取った俺は、大人しくこのクソ広い王都をしらみ潰しに探すことにした。
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