第7話:豚肉とザラタン茸のソテー(1)


 ボンソワ!

 メダーム・エ・メッシュー!


 前回、わたくし疲れましたの……。

 3日かかる料理って、面倒なのよ。

 思い出しただけで肩がこるわ、ほんとに。


 でも今回の料理は、めちゃくちゃ簡単!

 豚肉を切って、キノコとソテーするだけ。


 でも、ザラタン茸っていうのが、幻の食材で手に入れるのが難しいのよ。

 今回、たまたま商人が売りに来たから、手に入ったけど、もう一度って言われたら保証できないわ。


 そもそも、なぜそんなに珍しいかというとね……

 ザラタンっていう生き物がいるんだけど、超がつくほど大きな生物なの。

 小さな島と同じぐらいの亀。って、どんだけよ!

 そんなに大きいなら、簡単に見つかりそうだけど、常に泳ぎ回るから見つからないんだって。


 船で見つけたとしても、近寄ったらザラタンに船ごと破壊されるし、上陸が大変。

 運よく上陸しても、険しい崖みたいな背中を登らなくちゃいけないの。

 ザラタンがくしゃみするだけで、落っこちちゃうわよね?


 そんな巨大亀に寄生する特殊なキノコが、ザラタン茸よ。

 だれも採らないから、ザラタンの背中にさえ登れば、いくらでも採れるらしいんだけどね。

 このキノコがまた、いい香りなの!

 杏子の香りのする、芳醇なキノコ。

 

 その現物が、これ。

 キノコっていうより、台風で飛ばされた傘みたいな形でしょ?

 でも、味は保証するわ!

 しっかりした歯ごたえがあり、ソースをよく吸うから、どんなソースにも合うのよ。

 今日は、バルサミコ酢で合わせてみようと思うの。


 隠し味に、バルサミコと一緒に混ぜるのが、特殊なはちみつ。

 厳密には「蜂」から採ったものじゃないわ。

 王宮で使われる、最高級の蜜。

 そう、ジャイアント・ハニー・アントっていう、「蟻」さん達が集める珍しい蜜なの。


 そのジャイアント・ハニー・アントは、蜜を集める働きアリと、蜜を体内にためるツボみたいな形の大きなアリがいるのよ。

 大きいものだと、直径30cmにもなる巨大な蜜ツボよ。

 ちょうど、梅酒を漬けたりする容器ぐらいかしら。


 中の蜜は、1滴垂らすだけで、ケーキが一切れつくれるぐらい甘いのよ。

 でも不思議と、しつこくなくて、いくらでも食べれちゃう不思議な甘さ。

 アカシアのはちみつみたいに、スーッと入ってくるようなあっさりした甘さなの。

 料理の時は、耳かきぐらいの匙ですくって使うわ。


 あぁ……、この蜜をつかって、中島少佐にもスイーツを作ってあげたかったなぁ。

 元の世界で唯一代用できないのが、この蜜かもしれない。

 こんな甘いの食べたら、どんな顔して食べるのかしら?


 って、昔話してたら、もうこんな時間、調理法は次に回すわね。



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 幻のキノコ、ザラタン茸

 どんな味がするか!


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