第3話:ペガサスの生ハム、古代桃添え(1)


 ボンソワー。

 また読んでくれたのね。嬉しいわー!

 今回のメニューは生ハムよ。

 それも、ペ・ガ・サ・スーの肉を使った、珍しいハムなの!


 ハムっていうと、脂肪分たっぷりが多いんだけど、ペガサスの肉は脂身がすくないのよ。

 でも、その脂身はとっても甘くて上質。

 だからハムにすると、ほんのり甘いあっさりしたハムができあがるの。


 そう、そして目の前にあるのが、その塊。

 でっぷり太った立派な個体よ。

 太ももの形が、何だかそそらない?

 塩は肉の味をこわさないよう控え目だから、日持ちしないのよね。


 それと、もう一つ。

 筋肉質なペガサスは、肉がしっかりしてるから、薄く切らないと、硬くて食べにくいものになるわ。

 煮込んだら、脂身が少なくてパサパサするし、硬くてステーキにも向かない。

 薄く切ったハムが一番なのよ。


 ほんとうは電動スライサーで切れば楽なんだけど、そんなものこの世界にはないの。

 だから、「ザ・手切り」!

 普通に切ったらコマ切れになっちゃうし、肉を凍らせて切ることにしてるわ。


 凍らせて、カチカチの肉が切れるのかって?

 それが、私のチート能力よ!

 異世界に来てから、力が強くなったりはしないけど、調理だけは超人になったわ。


 その能力のおかげで、包丁だって超高速に動かせるの!

 だから凍ったハムも、電動スライサー並みに切っていける。

 こんなことできるの、たぶん私だけだと思いましてよ! ふぉっほっほっほ!


 ま、それはともかく、この凍ったハムをスライスしていきましょうか。

 はじめに包丁の位置が肝心!

 刃を当てる部分を真横から、よ~く見るの。

 コンマ数ミリの違いで口当たりが全然変わるから、注意しないとね。


「このあたりがよさそうね」


 そして刃を当てたら……

 高速ぎりぃぃぃ~~~~~!!


「っしゃー! 一枚目ぇ!」


 ほ~ら、向こう側がすけるぐらいに薄くて、均一でしょ?

 どんなスライサーより、薄く切れてるはずよ。

 クレープみたいに、桃に巻いて食べるの。

 それだけの料理だけど、どうやって切ってるのか、みんな聞いてくるのよね。

 誰もまねできない、私だけの特別料理! おっほっほっ!


 と、まあ……、そんな感じで全部一気にスライスするわね。



――30分後


 はぁ……、疲れた。

 ちょっとがんばりすぎちゃったかしら、ハム全部終わらせちゃったわ。


「アルフォンソ、白ワインを持ってきてちょうだい!」

「ウィー、ムッシュー!」


 (調理場の奥から、カラフェに入れた白ワインと、ピッチャーの水を運んできた。そして決まった分量どおり、グラスでそれらをブレンドする)


「メルスィー、アルフォンソ! 速攻で持ってくるなんて、トレ、トレ、ビアーンだわ!」

 (そう言ってグラスを手にとると、一気に中身を空にした)


「かぁ~~、おいしー! 作業中の1杯はたまんないわね!」


 あぁ、なんか眠くなってきちゃったじゃない。

 すこし仮眠とるわ。

 続きは、また次ね、むにゃむにゃ……。


━━━━━━━━━━━━━━━━━

 気まぐれすぎるカリスマ料理人!

 このままで、コース料理は完成するのか!?

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