第2話:ドラゴンの卵を使ったオムレツ(2)


 (待っていたとばかりに、アルフォンソの目が光る。木べらをぐるぐる回転させたかと思うと、すごい速度で空を切る。そして、ゴールキーパーさながらに、華麗に黄身を食い止めた)


「ふぅ、なんとか助かったわ。アルフォンソ、トレビアンだったわ!」

「ウィー、ムッシュ!」


 (得意げな顔をしたアルフォンソが、小鼻を膨らませた)


 オムレツなんて、難しい料理じゃないんだけど、毎回この作業が大変なのよ。

 黄身だけが異常に重くて、弾力があるの。でも、外に飛び出したら簡単にやぶれちゃう。

 

 じゃあ今度は、この黄身を潰すわよ。また爪を使ってね。

 ほら、簡単に穴があくでしょ?

 ドラゴンの爪は何でも切り裂いちゃうんだから!

 で、この黄身の外皮は取りだすわよ。これが残ると、歯ざわりが悪いの。

 食通は、黄身の皮だけを生で食べたりするけど、私は嫌いだわ。


 黄身が液状になったら、混ぜる作業。

 この時、白身をしっかり切るように混ぜるのよ。

 白身が切れたら、黄身と混ぜるわね。

 あんまり混ぜすぎないで。ところどころ黄身のかたまりが残るぐらいが丁度いいの。

 黄身の濃厚さを残すかんじで。


 あとはレードルですくって、小さなボウルにすこしづつ分けるのよ。

 だいたいこれぐらい!

 次は、具材を入れるわ。今日は、シンプルに豚の塩漬けとチャイブ(あさつき)よ。

 食材がいい料理は、シンプルが一番。あんまりごちゃごちゃ具材を入れるのは、好きじゃないのよね。


 そして、先に下処理した具材とまぜ合わせまぁす。

 この辺は適当に、肉同士がくっつかない程度に。

 

 次は、油をたっぷり引いたフライパン。

 一度パンの半分まで油を入れて、元の容器に戻す感じよ。

 そのフライパンを、強火で熱するわね。

 煙がすこし出てきたら、卵を入れるわ。


 もう、いい頃ね。レードル一杯が、一人前。

 一気に入れたら、すこーしだけ焼いて、軽くフライパンを叩いて滑らせるの。

 滑らせたら、手首を使って半円形にひっくり返すわ。

 ひっくり返ったと同時に、お皿に乗せたら完成!


 ね、簡単でしょ?

 大事なことは、火を入れすぎないこと。

 卵はお皿の上でも、すこし余熱が続くの。

 まだ生かな?ってぐらいがちょうどいいのよ。


 これに、トマトを付け合わせて、トマトクリームソースをかけたら完成。

 テーブルに置いたら、ウェイターが卵の中腹を切って、中から出る「黄身のどろっと感」を演出するのよ!

 どう? 美味しそう?

 じゃあ、さっそく試食するわね!


「はーむ」


 うん♡ 我ながら美味しいわ!

 鶏卵とも違う、リッチな風味。黄身の味が濃いのよね!

 よく煮込んだトマトクリームと、豚の油が絶妙にマッチするわ。

 これには、よく冷えた甘口白ワインが最高に合う!


 この国では、白ワインがめちゃくちゃ甘いのよ。

 だから、みんな氷水で割ってのむの。

 そんなワインにもぴったりの、最高な前菜に仕上がったわ!


 それじゃ、次回までオルヴァ!



━━━━━━━━━━━━━━━━━

今回のレシピは、普通のオムレツになっちゃうわね。

だけど、鶏卵でも美味しいから、やってみて!


――レシピ(4人前)――


オムレツ

・ドラゴンの卵、レードル4杯(又は鶏卵6個)

・チャイブ少々(又は小葱)

・塩漬け豚80g(厚切りベーコンでも可)

・オリーブオイルたっぷり(油なら何でも可)

・塩少々

・コショウ少々(ホワイトペッパーに限る)


トマトソース

・良く煮込んだトマトソース100g

・生クリーム50g

・バター大さじ2(有塩)


付け合わせ

トマト半分(出来るだけ甘い品種で)


下処理:

・1cm大(さいの目)に切った豚肉を炒める。たっぷりの油で表面カリっと。

・卵には塩コショウしないので、豚肉にしっかり振る。

・チャイブは、みじん切り。

・トマトソースは裏ごしする。

・トマトソースに火を通し、生クリームを少しづつ加え、塩と一緒に混ぜ合わせる。

・火を止めたら、バターを落とし、溶けてきたら混ぜる。

・トマトは角切り、またはくし切り(お好みで)


本調理:

・オムレツは、本文の通り。

・出来上がったオムレツを皿にのせ、トマトクリームをかける。

・付け合わせのトマトを添えて完成!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る