extra.Corpo Beste Freunde

 アムステルダムの新学期は9月からだ。

 バルセロナの凶悪事件を経て、ミセス・ヴァルキューレの諭しから。俺達The Future of Children、アルマ・ヴァン・ヘルシング/ミアン・マクリーン/ヴァイス・ジーザス/黒田玄一/是永芍薬は、アムステルダム大学で勤める事になった。

 それに伴い、ミセス・ヴァルキューレの指定する砦、いや徹底改装中のコーポ・ベステ・フロインデに移り住む事になった。元はミセス・ヴァルキューレの元夫で、いつかの時代のオランダ王室の騎士の所領だったものを、ただの旧砦になりがちから、ミセス・ヴァルキューレが受け継いでいた。俺もミアンもインターン時代に、どうしても住みなさいと言われ続けたが、先輩先生によって仮眠室の長年掛けて身体に馴染んだ二段ベッドの方が心地良く、俺もミアンも面倒臭くこれ迄住む事は無かった。

 それが今回、The Future of Childrenの拠点になるに当たって、止む無く荷物をまとめって引っ越す運びになった。そう、つい通り掛かりに近くに寄ると、外側だけつい眺めて物ものしいなはあった。そしていざ大門を潜ると、外壁はそのまま砦も、砦内はいざ近代化され尽されて、はっとした。そこ迄気を遣わず改修しなくてもだ。

 そして執事長はうら若き女性のエミリー・ブランソンで、ミセス・ヴァルキューレがウェールズで引き抜いた懐刀だ。それにも関わらず、その瞬間迄一切寄り付かず、お待たせしましたねと切り出すと、改装しなくてならないですし、今も改装中ですのでご迷惑をお掛けしますと、丁寧に畏れた。



 ミセス・ヴァルキューレの用心深さはやれやれと思ったが、ティールームに行くと、ただ目を疑った。引っ越し手続きが一番長いであろうの黒田玄一がいた。荷物は黒背広三式と刀があればの身軽さで、マドリード王宮での晩餐会の翌日には流れて来たらしい。それだったらアムステルダム大学附属病院に顔を出してくれも、何かと俺がオペ室に通っていたので無礼を仕ったになる。いやこちらこそだ、きっと無数のメモの来客者の中にいた筈だ。いや律儀に集ってくれただけでの感謝しかない。

 次にコーポ・ベステ・フロインデに現れたのは是永芍薬だった。基本モラトリアムだったので、アムステルダム大学で事務職員を務めると就労ビザを求めるも、散々調査され3度却下されては、日本の擁護任意団体が動いて、漸くの渡航許可に至った。女性にしてはスーツケース3つの少なさは、それなりにトラブルシュターとして渡航していたのだろうと察するも、芍薬はさあと瞬時に惚ける顔をする。このリアクションの瞬足さも、これからの生活で慣れなければならないだろう。

 そして最後に、ヴァイス・ジーザスが2週間前に、ミニのクーパー・スポーツパック・リミテッドのルーフキャリアの上に引っ越し荷物盛り沢山と、あいよでお越しくださった。まあ、ロンドンから解放されて、ただ気持ちが大きくなってはヨーロッパの居酒屋に転戦していたのは、ただ深く察する。いや仮にもアムステルダム大学の言語学講師なのだから、早く来て下さいだ。玄一文化学講師は既にアムステルダム大学に通い詰め、年次カリキュラムをとっくの前に提出をしていますと捲し立てた。ヴァイスはあらそうねで、三日徹夜して事務局の満額承認を貰ったのは、いや主任教授の慣れでも出来るかと、アムステルダム大学教員部が騒然としているらしい。

 その流れで行くと、俺も赤の対策委員会医療班所属からThe Future of Children班に移った事で、緊急時以外はアムステルダム大学の講師に入った。術式の論文はそこそこ提出していたので、緊急医療の講義の枠にはようこそになった。その助手としてミアンが入るのだが、まあいるだけで良いかだったが、つい煮詰まると古い文献を探すヒントになっているので、いつからアカデミックになのか聞くが、何故か涙声になってふて寝する。まあ年齢上の年上はそこそこ事由があるって事らしい。


 さて、アムステルダム近郊の旧砦改めコーポ・ベステ・フロインデにThe Future of Childrenは集合した。

 内城は3階建。1階は応接間にリビングに執務室に厨房と、事務と接待の恙無い対応は出来る。

 2階は俺アルマと玄一のフロアになる。俺がいつ入っても良い様にと、文献室も確保している事から、スペースがある筈も意外や手狭な感じになっている。実質蔵書室になっている事から、アカデミックの際は、いや知れず5人が文献室に集い、それぞれ個人専用のソファーと袖机が瞬時に用意されていた。こういう雰囲気は新鮮で実に良い。

 3階は女子3人、ミアンとヴァイスと芍薬の居室が有り、身体を整える為のピラティスルームと、リラックスルームが卒なくある。そこにユーロ隈なくの実践言語で会話出来る執事エミリー・ブランソンが講師になり、言語教室を開いていた。そんなのヴァイスがすれば良いのだが、オフは徹底的にオフらしく和んでるだけで幸せらしい。ここ言うと長いので、言わない習慣にしたいものだ。

 そして日々優雅に暮らし、俺達の為にメイドさんはエミリーを含めて12名が配置されている。皆目尻が下がって柔和だが、垣間見える視線と筋肉のパンプアップは、只者ではないのを感じる。玄一にはその都度一瞥されては失礼だぞの視線を送られる。一つ言える事は、俺達は身を呈して守っても死ぬ方々では無いとは、会話のニュアンスには諭しているつもりだ。



 そんな新学期の始まる2003年9月1日早朝に、まさかの来客があった。ミセス・ヴァルキューレととても根深い遺恨のあるワルシャワ勢力の威圧戦。ただそれは呆気なく、エミリー筆頭の最強メイド部隊が、汎用攻撃ヘリコプターMi-35×2機を撃墜し兵員も駆逐した。


 十分過ぎる成果後すかさずになる。まず今日は初の大学出校日で、何事も無かった様にごく普通に朝食に入った。メイドさん達に両肩を持たれてヴァイスが着席させられては、朝食を口元へと一々運ばれたが、これでも目が覚めないヴァイスに、皆が大物とニヤニヤする。いや俺は感覚が普通人なので大いに呆れる。

 ここで芍薬曰く、ヴァイスはヘリのローター音にいち早く気づいていたが、昨日のワインが最高らしく二度寝に入ったらしい。

 俺は冷徹に、当分酒類禁止令をと切り出した所で、ヴァイスがくっきり目覚め、さあ仕事もお酒も楽しい輝ける毎日にしましょうと、微笑む。その神々しさに、俺は発言を撤回せざる得なかった。ただ先は思いやられるが。

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fifth 判家悠久 @hanke-yuukyu

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