黒編

5年前の事件をきっかけに探偵をやめて喫茶店を開いた。近所からはやる気のなさそうな若いお兄ちゃんがやってるコーヒーと軽食が美味しい店という評価なようだ。そらありがたい評価ですね。と皮肉混じりに思っていた。そして、いつものようにお客が飲み終わったカップと皿を洗っていると1人の女性が入ってきた。「この前この辺であった殺人事件の情報が欲しいの。」カノジョは警察の人間で喫茶店の裏でやっている情報屋として情報を買いに来たのだ。「お客さんウチは喫茶店なんでコーヒー位頼んでいってくださいよ」そう言われると女性はコーヒーを頼んだ。カップを拭きながら黒は淡々と喋り出した。「この前の殺人事件の犯人はこの町の半グレグループの男が主犯だと言われている、奴はよく夜に行きつけのクラブに現れるらしい話を聞きたいならそこに行ってみるといい。」そういうとそのクラブの住所の書かれた紙を渡した。「ありがとう」それだけいうとカノジョはコーヒー代と情報料を置いて出ていった。「せっかちだな…」少し残ったコーヒーを流し、またそのカップを洗った。何故黒が喫茶店を開いたのかそれは独自で5年前の灰の事件の真相を追うため。喫茶店は色んな客が来る。こんなちっちゃな町では密談を行う場所には選ばれやすく容易く情報を手に入れやすいからだ。そして夕日も落ちてくる時間タバコを吸っていると、いつもの2人がやってきた。「いらっしゃい」そういうと2人は店内を見回し、いつもとは違う雰囲気で白イが話しかけてきた「ここに誰か変な客は来なかった?」

「別に来てないけどな」と答えると白イはそっか…と重そうな顔で席に着いた。ご注文は?そう尋ねると「コーヒーふたつ」何か考え事をしている2人にいつものコーヒーを持っていった。コーヒーが飲み終わりそうになった時お店に電話が掛かった。「もしもし?」またひと時の静寂の後また加工された声が聞こえてきた。「黒か、君は確か単独でこの事件に着いて調べているね。なら灰が持っていたUSBを手に入れているはずだ。」

黒は少し驚いた。5年前の事を調べているのは白イや彩にさえも教えていない。この情報を知るものは限られている。USBをくれた警察の人間しかいない。「どうしてお前がそれを?」そう聞いたが無視をするように話を続けられた。「そのUSBにはパスワードがかかっていて開かなかった筈だ、パスワードは469631、それで開くはずだ開いたら真相がわかる」それだけ言い残すと電話が切られた。電話の後俺が喫茶店を開いた理由そして今まであの事件について調べていた事を2人に話した。そのことを謝り電話の内容を伝えた。

そして、3人で半信半疑になりながらパスワードを入れるとパスワードが解除されひとつのファイルが出てきた。これは…当時追いかけていた事件の真相について書かれている文章とその時の決定的な犯行写真だった。そして文章の最後に今日の日付と夜9時に木下で待つという文章だけ書かれていた。どういう事だ?俺は頭をかきながらタバコに火をつけた。アイツが気に入っていたZIPPO未だに手放せずに使っている、でもわからないアイツは5年前のあの日に死んだ筈だ、事件記録にも被害者死亡と書かれていた…電話の主が書き足したのか?だが日付は5年前の事件の前の時間のままだ…確かにアイツの書いたものだと思う。わけも分からないまま俺たち3人は5年前の約束の地へ向かう事にした。5年前の真相はわかった、この5年前に4人がかりで調べていたものがあっさりわかってしまった。しかし誰が灰を殺したのかそして、電話の主が誰なのか5年間色んなツテを使って調べた全てが無駄になったような気持ちだった。だがアイツの無念の為に真相を確かめ犯人を捕まえなくてはいけない…もしかすると喫茶店を辞めなければいけないという覚悟とともに吸いかけのタバコを消し、自分の為に入れていたコーヒーが冷めてしまっていたがそれもお構いなく一気に飲み干した。そして、天からのイタズラかあの人同じように雨が降ってきた。傘を指した瞬間俺は気合をいれて現場へ向かったのだった…

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