第12話

「いやー、時間かかったけど、本借りれたね」

 分厚い辞書をかかえたワードは、ご機嫌そうにニコニコ笑っている。

「それはそうと……貴様、あんなに強かったのだな……」

「ん? なんか言った?」

 ワードが聞き返すと、リュウはぷいっと顔をそらした。

「なんでもない。早く調べるぞ」

 ワードとリュウはイスに座り、ボクは机にのる。

 両手でかかえるほどあって、ものすごく分厚い辞書だ。

「これ……どこから読むの……?」

 一ページずつ読むと、絶対一日でおわらないぞ。

 絶望気味につぶやくと、二人もだまった。どうやら、そこまでは考えてなかったらしい。

「まあ、とりあえず。『検索』すれば少しはしぼれるんじゃ」

「まさか、『検索』も知らないとは言わないだろうな?」

 ワードの言葉をさえぎり、こっちを見るリュウ。

 うっ。なんでそんなあきらめたような顔で見ないでくれよ……。

 まあ? ボクだって知ってることくらい……、

「知りません……」

 ごめんなさい。なんも知らん。

「マジか……。特殊ならんごだから知ってるかと思ったんだが……」

「白い目をむけないで! 偏見はよくない!」

「おい、話が進まん。私が説明する」

 どこからだしたのか、リュウは大きな紙を空中に広げる。

「『検索』というのは、本の内容・章などを自動的に分けて、それごとに調べることができるものだ。例えば……」

 リュウは辞書を手に取り、「検索」、とつぶやいた。

 そのとたん、本から五十音、数字、記号などを入力するボードが現れる。

「ここに、そうだな、『らんご』と入力するとしよう」

 慣れた手つきで入力すると、完了ボタンを押した。とたん、本がパラパラとめくれ、あるページが開かれる。

「わあっ……!」

 らんごについて、写真、分類、能力、出現方法、関連の出来事など、びっしりと書き記されていた。

 うわ、最高取引額、千万カンロ……この世界の硬貨だろうか?

「あれこれ、筆跡ちがくない?」

 乱暴なものもあれば、ていねいな文字。文字なのかもわからないものもちらほら。

「古かったり、重要なものはそのまんまでのせられてんの。――ほら、説明終わり。さっさと調べよ」

 じいっと本を見つめていたボクたちをおしのけ、ワードはつぶやく。

「検索。黒いもや」

 ペラペラと本がめくれる。

 ごくりと三人でつばをのみ、周りがしんと静まり返った。

 ペラッ……。

「と、とまった」

 そこに書かれていたのは――。

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りんごのボクの旅 ヒペリ @hiperi

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