第11話

「あ、外した」

「! き、貴様だって先ほど外したではないか!」

「え? 俺はお前がいたからそらしてあげただけだけど?」

「あぁ? 貴様にもそんな心があったとはな」

「は? それどういう意味?」

 ああ、もう。相変わらず仲が悪い……。

 空中で飛び交う二人に、あきれた目をむける。

 今は、あの本を読む許可をとるための試験みたいものを受けている真っ最中。

 ボクは、邪魔になるからって、見てるだけ。

「……くそっ」

「なかなかとれぬな……」

 二人が苦戦しているのも納得だ。

 空中に飛び交う本は、やっととどいたと思うと、するりと手をすりぬけてしまう。

「というか……羽、あったんだね。二人とも」

 さっき飛んでいるって言ったけど、羽で、だ。

 しかも、人によってちがうらしくて、

 ワードは黒っぽい悪魔みたいな羽。

 リュウは濃い紫のワシみたいなかっこいい羽。

「常識でしょ。逆に、ついていない人いるん?」

「無知にもほどがあるぞ」

 なんで両方から注意されなきゃいけないんだ……。

「ごめんなさいね、なにも知らなくて! ボクよりそっちに集中しなよ……」

「――いたっ」

 突如、ワードの顔がゆがんだ。

 こっちを見ていたワードの頭に、分厚い本があたってしまったらしい。

 なんとこの本、攻撃してくるのだ。

 ちなみに本には魔法がかけられているらしく、攻撃してもいいらしい。

「わかってら! クロスソード!」

 青白い光が周囲に散漫し、それが消えたころにはワードの頭上には大きな光の剣が浮かんでいた。

 交差した二つの剣。青水色の刃が鈍く光り、柄はよどんだ灰色をしていた。

 なんとも、図書館に合う雰囲気だ。

 魅入っているボクとは逆に、リュウはあせったように声を荒げた。

「おい! 攻撃可能でもさすがにそんなでかいもの……! 十メートル以上あるだう!」

「仕方ないだろ。こっちだって時間がないんだ」

 時間がない……。

 あんだけめんどくさがっていたワードからでた言葉に少し不信感をいだいた。

 でも今はそんなことを気にしている場合じゃない。

「抜刀。かまえ」

 ワードがそうつぶやくと、交差していた剣がキィィィンと耳が壊れるくらいの金属音とともに平行に並ぶ。

「サーチ――いけ!」

 ドゴォォン‼

 大きな爆裂音とともに、剣が壁につきささり、壁の一部が崩れ落ちる。

「う……っわ……!」

「くっ……あんの馬鹿……!」

 視界が煙でおおわれ、思わず目をつぶる。

 これ、図書館大丈夫か? 絶対あとで怒られるぞ!

「ちょ、大丈夫ですか!?」

 さわぎを聞いた司書さんが、駆け寄って来た。

「あ……」

 煙が晴れてきて、司書さんは声をあげた。つられて上を見ると……。

 青白い大剣が、分厚い辞書をつきぬけていた――。

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