第9話

 とりあえず、姿や特徴はあらかたわかってるから、まちにある図書館で、調べることになった。……んだけど……。

「さっさと歩かぬか。こっちは時間がないのだ!」

「はあ? 急いだってなにもならないよ。その小さい頭で少しは考えたらどうなの?」

 さっきから、この調子なんだ……。

「ちょ、ちょっと。二人とも、おちつこうよ」

「落ち着いているわ!」

「別に落ち着いてるし⁉」

 ぐわんっと二人がボクの方を向いた。

 息はあってると思うんだけど……。

「おー。ワード。そちらは昨日言ってた依頼人さんかい? えらいねえ」

「ワードくんは優しいからねえ」

 行きかう人々にワードは、

「はい。やっぱり、人には親切にしなくちゃいけないので」

 にこやかにかえしている。

「ふざけるな! 私には……モガッ!?」

「お前はだまってろ」

 に、にこやかに……。

 そんなこんなで。

「うわああぁぁぁ。ここが、図書館かぁ!」

 図書館って言うより、お金持ちのお屋敷みたい。

 りっぱな扉に、豪華な屋根。まわりには、花もたくさん植えられてる。

「ふむ、そんなに嬉しいか?」

 当たり前だよ! ボクによりそってくれるものなんて、本くらいだったからね!

「ここまでくると、お前がらんごなのを忘れそうだ」

 あきれがちに、ワードが言った。

「まあま! 細かいことは気にせずに! 行こうよ」

「まて。らんごが歩いて図書館に入ったらさわぎになる」

「うーん、じゃあ……」

 ひょいっとワードがボクを抱え、ると思ったら、ちがった。

 そのまま頭の上にのっける。

「あのーこれは?」

「それだったらいいでしょ。ただ……」

「ただ?」

「貴様の魔力消費がえぐいがな」

 えぐいなんて言葉知ってるのか! てか、ボクも魔力あったのね⁉

「しかし、貴様も物好きだな。図書館に行くと聞いて、喜ぶやつなど見たことがないぞ」

 少し引き気味に、リュウが腕を組む。

 それに同調するように、ワードがうなずいた。

「うん。オレもそんなやつ、見たことも聞いたこともない」

「え、え? な、どういうこと?」

 二人の反応に、ボクはとまどう。

 図書館って、あの静かで本がならんでるとこだよ?

 たまに読みたい本がなくて、イラつく図書館だよ?(すみません)

「なんたって……」

「図書館の本は……」

「「見るのに命がけだからな」」

 は?

 きれいに重なった二人の声。

 意味を理解して、ボクはさあっと青ざめた。

「い、命がけ?」

「さあ、行くぞ」

 リュウは重い、りっぱな扉を慎重にあけた――。

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