第5話

 えー。前回、なにやらとんでもないところに来てしまったと、自覚したわけですが……。

 さっきのじいさんが、かけよって来た。

「しっかし、お前さんの力は本当にすごいなぁ」

「うーん、でも今回は、これのおかげだな」

 指さした先には、ボク。

 なに⁉ ボクのおかげ?

「こいつは、らんごじゃねえか!」

「うん。これは、魔力を増やす力があるんだ」

 だから、頭の上のっけてたのか……って! いやいやっ、頭の上じゃなくてよくない? 不安定すぎるんだよ!

「この現象は、いったいなんなんだろうな」

 急に真剣な顔をして、じいさんが言った。

 なにか、起こっている感じは、ボクでもわかる。

「わからない。それだけが、わかる」

 ぽつっと言うと、ワードはボクを持って店へ入って行った。

「……さて、そろそろなんか言ってよ」

 ん?? 誰に言ってるの?

「キミだよ、キミ」

 ……ボク⁉ いやぁ~、なんのことかなぁ。ボクはしゃべれないんだけどなぁ(汗)

「しゃべんないかぁ、やっぱそんなわけないよなぁ。食べちゃおっ♪」

 ニンマリと、意地の悪い笑みをうかべ、ボクに包丁をふりおろして――。

「待って待って‼ しゃべったから、殺さないでえええ!!」

 ピタッ。手が止まった。

 そして、ギギギとロボットみたいに頭を動かし、こっちを見た。

「あ……の、そ、の……」

「や、やっぱ……今、しゃべって……」

 なんで、ワードもおろおろしてんの⁉

「おーい、ワード」

 ビクンッ。二人して、肩をふるわせたもんだから、じいさんは眉をよせた。

「なんかあったか?」

「い、いやなんでもない」

「ワード、ちょっといいか? 両親が来てるんだが……」

「わ、わかった。今行くから」

 ほっ。どっか行ってくれた。

「あー、詳しいことは後で聞くから、ちょっと一緒に来てくれない?」

「いいけど、ボクも後で聞かしてね。色々と」

 少しにらみながら言うと、「わかった」とうなずいた。

「というか、ボクまで行く必要あるの?」

 別に、ボクが待ってってもいいんだけど。

 そう言うと、ワードはブンブンと首をふった。

「親は……苦手なんだ」

 どんな親なのだろう。自分の親を想像しながら、ワードとドアを開けた――。

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