第4話

「あー、今、しゃべった?」

 遠慮がちにたずねる、男の子。ボクは、じっとだまる。

「……気のせいか。でも、ちょっと怖いなぁ。どうしよ、これ」

 捨ててくれてもかまわないよ‼ とにかく、この店から出してくれええ!

「おい、ワード! またあの現象だ!」

 バァン! いきなり、店のドアが開いたかと思うと、褐色の《かっしょく》肌の元気そうなじいさん。

 なんだ? あの現象って。

「ええ! またかよ。わかった、今行く!!」

 男の子――ワードは、近くのイスにかけてあった緑色のローブをつかみとると、店のドアを開けて、じいさんと一緒に飛び出して行った。

 ……と思いきや、戻ってきて、ボクをつかんだ。

 ……ええええっ。なに、ボクつれてかれんの? なに、回復ポーション的な感じで、すりおろされんの⁉ それだけは嫌だああっ!

 外に出ると、それは異様な光景があった。

 ……な、に?

 黒い、もや。人の形をギリギリで保っている、黒いもや。気味が悪い。

「これで、九人目じゃん! もうヤだよ、オレ」

 ぶつくさいいながら、ボクをつかんで、頭の上にのせた。

 ん? なにするつもり?

「かき消せ! ディサピアランス!」

 ワードが叫んだと拍子に、ボクのからだから光がポワァっと、広げたワードの手のひらに集まり始めた。

 ヒュンッ。

 かすかな音がして、もやの真ん中に、小さな穴が開いた。と同時に、もやがいっきに飛び散る。

「ガああアああア――!!」

 咆哮をあげて、もやは消えていった。

 これは……とんでもないところにきてしまった気がする。

 これからボクは、どうなっていくのだろう……(泣)

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