第3話

えー、今までのことをざっと説明します。

嫌な日々から逃げたくて、自殺したら、なんとりんご(らんご)に転生しまいました。

で……。

今、こうして売り飛ばされそうになってるとこでございます。

……いや、そんな変な目で見ないでよ! ボクだってなにがなんだかわかんないよ! 一番こんがらがってんの、ボクだからね⁉

「なあなあ、らんごって、なんペンで売れんの?」

この世界のお金の単位は、ペンっていうのか。なんかペンギンみたいだなあ。

「んー、ざっと、十万ペンくらいかなあ」

「え、マジ⁉ 城一つ買えんじゃん!」

そんなりんごの価値高いの、この世界⁉

てか、十万で城一つって、物価安すぎでしょ、この世界‼

どーしよ……。まずいよね、この状況。

よし、目をつぶって考えよう。うーん、んー。……スピー。


はっ。寝てた!

「着いた着いたー」

「けっこう歩いたなー」

「あの森、広いから」

どこに着いたんだ? って、わああ。

レンガでできた一軒家や店が、ズラッとならんでいる。お店の人の活気的な声がひびき、人通りも多い。その「人」も、いろんな装備だ。

ザ・異世界だな。

……感心してる場合じゃなあああいっっ!!!

売られる、売られるって!

「わあっ、らんごじゃん! 十二万ペンで買い取るよ!」

「やりぃ! これで少しは安定して暮らせるな」

ん? さっきまでボクをつかんでいた男の声と、かん高い子どもの声がきこえるぞ? お店の子かなあ。

「じゃあなー」

「ありがとー」

「ありがとうございましたー」

まて。ボクを置いてくなー! てか、買い取ってどうすんの? りんご(らんご)って、食べるしかなくない? 転生した瞬間、人生しゅうりょーとか、一番ヤだよ!

「さてと、このらんご、どうしようか」

どうするか考えてなかったんだ! ……大丈夫かなあ、この子。

「とりあえず、へたを取って……」

「いっ、いたいいたいっ! やめてよ!」

男の子の手が、ぴたっと止まった。こおりついた表情で、こっちを見てる。

ばれたあああっ。しゃべれるって、ばれたあああっ‼

ボクの表情も、こおりついた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る