第2話

 ミーン、ミーン。

 せみの声、かな。異世界でもせみいるんだな。

 そんなのんきなことを思いながら、テクテクと歩く。

「はああ~。転生したからって、都合いいものに生まれるわけじゃないんだなー」

 真っ赤な、まるっこいからだ。ぴょこんと頭からはねたものは、髪の毛ではなく、緑の葉っぱ。

 そう、りんごに転生してしまったのである!!

「なんでだああああっっ!!」

 バサバサッ。

 鳥さん、いたの。びっくりさせて、ゴメンナサイ。

「いや、りんごって、食べられる側だよね⁉ 食物連鎖のいっちばん下じゃない⁉」

 あの女の子、ボクを生かす気あるのかな……?

「はあ」

 ため息しかでない。

 まあ、とりあえず森を出て、街にでれば、なんとかなるのでは。

 と思って、かれこれ三時間くらい歩いてるんだ・け・ど!

「いっこうに出られない!」

 なんで? 森広すぎでしょ!

 てか、鳥とか普通にいるし、なんのへんてつもないから、異世界じゃない気がする……。

「……」

 改めて、自分のからだを見ると、変な感じしかしない。

 りんごに手足ついてるし、しゃべれるし。

「なあ、ここってレアモンスターでるんだって」

「マジ? たおしてえな」

 な、なに? レアモンスター?

 これってやっぱ、異世界なんじゃない⁉

 見ると、歩いてきたのは明らかにファンタジーな服をまとった男二人。

 片方の装備は大剣で、もう片方はつえ。

 こ、これは! わあわあ! 異世界だ!

「やったあっ!!」

「だれだ⁉」

 やばっ。嬉しすぎてとびはねると、怪しまれた。

 どうしよう。こっちくるよ。

 よし、ふつーのりんごのふりをしよう!

 手足はひっこめることができたので、そのままじっと待つ。

「こっちからきこえたよね」

 ガサガサッ。草をかきわける音。

 どくん、どくん。

 これ、ばれたらモンスターって言われて倒されるか、食われんじゃない?

「なんだあ。ただのらんごかあ」

 ほっ。ばれなかったらしい。

 ……? ちょっとまて。らんごとは? ボクののこと?

 なんか変な果物になってるううっ‼

 いや、でもどうみてもりんごでしょ。名前がちがうってだけで。

「じゃあ、持ってくか」

 え?

 ガシッ。つかまれたかと思うと、からだがういた。

「それどうすんの?」

「らんごってけっこう高値で売れるんだ」

 う、売られてしまう……⁉

 しょっぱなから最悪の展開だよ‼

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る