第5話 居なくなった大切な人

他の塾の先生に「居なくなったの?」と聞いた。はっきり「居なくなったよ」とは言わなかったものの、1年も塾にいれば居なくなるという意味をだんだん理解し始めていた。

私は受験生の夏に頼りにしていた1人の大切な人が居なくなってしまった。会えなくなってしまった。

「私にだけ」と言って塾長がどこへ行ったかを教えてくれた。Mと仲が良い先生に「手紙を書いたら今度渡すよ」と言われたから、その言葉に甘えて、少し強がって、でも少しこれからが心配だ、と書いた手紙を渡すよう頼んだ。その手紙と引き換えに返ってきた手紙には「今、あなたの塾にいるNやFを頼りなさい」ということと励ましの言葉が書いてあった。頑張らなくてはいけないのだと再認識し、前を向こうとした。

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