主と使い魔の絆(?)物語しちゃいました!?
これはアベル達が魔闘大会に向けて特訓してる期間に起きた出来事である
―アベルside―
土曜日…学校が休みの日ボク達は訓練ではなく全員でクエストを受けるようにカナに言われクエストボードの前にいます
理由は、いざという時瞬時に判断できるようにする為らしいです
因みにカナは風邪を引いたギルさんを看病してます
ウラドはどこかで寝てます
タツヤ「どの依頼にするか…」
フォエン「採取系が安全性は高いからそっちする?」
ネロ「ですが、特訓も兼ねてますから討伐系がよろしいでしょう」
そういえばタツヤがいますからBランクの討伐系の依頼を受けても問題ないんですよね…………あ
アベル「この依頼はどうですか?」
ボクはある依頼書を皆さんに見せる
タツヤ「何々…『家畜が吸血鬼に襲われて困ってます
吸血鬼をどうにかして下さい
ランク:B.
成功報酬:25万M
依頼主:コルヌ牧場主
. 』
………お前な…」
タツヤが依頼書を見て呆れてます
何ででしょうか?
フォエン「アベル…君の使い魔は何だっけ?」
アベル「不本意ですが…始祖の吸血鬼のウラドですがどうかしましたか?」
全員『ハァ…』
あれ?皆さん何で溜め息を?
タツヤ「自分の使い魔に近い吸血鬼の討伐の依頼を受けないだろ…」
ネロ「まぁ、アベルはウラドが嫌いですから仕方ありませんね…」
フォエン「確かに…」
?何か問題あるのでしょうか?
まぁそんな事置いときますか
アベル「とりあえず、タツヤの名前でコレ受注しますがいいですか?」
タツヤ「何で俺が………あ、Bランクは俺だけか…わかった…俺が行ってくるよ…」
タツヤは溜め息混じりで依頼書を持って受付へ行きました
因みにボク達も一緒に
受付「うーん…Bランクって表示されてはあるけど…吸血鬼を相手にしても大丈夫?」
依頼書を渡しての第一声がコレでした
受付さんは心配そうに言ってくれてますが…
タツヤ「吸血鬼の相手ならアベルがいつもしてますから大丈夫だろ」
確かにそうですね
いつもボクとカナの血を狙ってますからその度制裁してますからね
というより、カナの血を狙うなんてふざけないで欲しいですよ本当に
ネロ「それにカナから吸血鬼の対処法も聞いてますし」
フォエン「カナがいざという時は携帯で念話してって言ってたし」
受付「そう?なら、お願いね
はい、往復用の転移石」
受付さんは少し安心したみたいでボク達に転移石を2個ずつ渡した
何だか渡した理由はカナのおかげな気がしますが気のせいですよね…
アベル「ありがとうございます
では、行って来ます!」
タツヤ「じゃあな」
ネロ・フォエン「「行って来まーす」」
ウラドが来る前にボク達は急いで現場へ行きました
この依頼書見たら
―作者side―
アベル達が去った後受付嬢ことアンナは依頼書を再び見る
受付「うーん…この依頼書…なーんかおかしいけど…気のせいかしら?」
真ん中にBランクとしっかり書かれた依頼書に違和感を感じアベル達をアンナは再び心配し始めた
依頼書の隅に本来のランク…Sランクと記されてるのに気付かずに…
―アベルside―
転移石でコルヌ牧場の小屋の前に着きました
ボク達は玄関前に置いてある呼び鈴を鳴らしました
タツヤ「なぁ…なんか臭くないか?」
アベル「そうですね…」
鼻が曲がりそうなくらい臭います…うぅ…
フォエン「どうしてこんなに臭うのかな?」
ネロ「仕方ありませんよ
牧場には牛等の家畜がいらっしゃいますし…」
つまり、コレ等の臭いって家畜達の…うん、気にしないようにしましょう
ガチャッと扉が少しだけ開いて金髪なのに赤い目をした若い男性が出てきました
?「すみません…どちら様でしょうか?」
ネロ「依頼で来ました『ライオン・ファング』というギルドの者です
貴方がここの牧場主ですか?」
ボク達の事を怪しんでる男性にネロは笑顔で対応してます
?「いえ…牧場主はおじさんで今町へ出掛けてらしてます…俺はここで働いている者です」
流石ネロです
男性は安心したみたいで扉を完全に開けてくれました
それにしても依頼主さんお留守ですか…
タツヤ「依頼主はどうして町へ?」
?「さぁ…何でも大事な用があるとかで今朝いってしまいました
ですから、暫くは戻らないでしょう」
大事な用ですか…じゃあ、いないのは仕方ないですね…
フォエン「じゃあ、依頼はどうなるの?」
アベル「あ…」
そういえば、依頼主と話を通しておかないと依頼をこなしても意味はありませんでした
?「あ、依頼に関しては大丈夫です
おじさんからちゃんと事情を聞いてますから」
アベル「そうですか…
ありがとうございます」
それを聞いて安心しました…
依頼内容を詳しく聞く為にリビングへ案内してもらいボク達は各自自己紹介を済ませました
男性の名前はウェスペルさんでコルヌ牧場主さんの親戚だそうです
ネロ「それで…被害はどの位ですか?」
ウェス「そうですね
月に1~2匹家畜が攫われる程度だったらしく魔獣の仕業だとおじさんは思ってましたが…見てしまったんですよ…」
フォエン「何を?」
もしかして吸血鬼を見たのでしょうか?
ウェス「……俺は直接見た訳ではないですが…
おじさんが吸血鬼が家畜を攫う所を見たって…」
タツヤ「吸血鬼と同時に攫う現場を見たのか…」
吸血鬼が家畜を攫う………よく考えたら攫ってどうするのでしょうか…
始祖ですが吸血鬼のウラドがいれば多少分かりそう……………いや、あの変態に頼るのだけは絶対嫌ですね
アベル「あの、その吸血鬼はどうして攫ったのでしょうか?」
仕方ありませんから話し合いで結論出しましょう
ウェス「どうしてって…」
タツヤ「アベル…多分だが食料として攫ってるだろうな…
つか、始祖じゃない吸血鬼は日の光を浴びると灰になるって話をお前の使い魔の吸血鬼から聞いてないか?」
へ?ウラドから?
アベル「いえ…聞いてません」
ネロ「はぁ…少しは自分の使い魔と和解してあげたらどうです?」
アベル「う…無理ですよ…」
只でさえ蝙蝠時でも酷い事してるのに…
ウェスペルさん以外全員また溜め息を吐いた
フォエン「本格的に可哀想に思えてきた…」
何をですか?
タツヤ「まぁ…アベルに関しては依頼が終えてから考えよう」
ネロ「そうですね…」
?意味が分かりません
というより、ウェスペルさんを置いて話してません?
ウェス「もしかして…この子供って血属性ですか?」
む…ボクを指して子供って…酷いです
アベル「確かに血属性です
それと言っておきますがボクは皆さんと同い年です!」
確かに皆さんより小さいですが毎日牛乳飲んでますから大きくなりますし、人化ウラドと並ぶと小さく見られますがカナと同じ位ですから問題ないです!
ウェス「あ…子供って言ってごめんね
君の使い魔が吸血鬼だと聞いてつい聞きたくなって失言してしまったね」
あ…素直に謝ってきてくれました…
この人…結構いい人かも?
ネロ「どうして使い魔が吸血鬼と聞いてアベルが血属性だと?」
ウェス「あぁ、俺も血属性なんだ
ほら」
ウェスペルさんは指先を少し切って血を出して操ってボールを作ったのを見てボクは嬉しくなり興奮しました
アベル「うわぁ!ボク以外にも血属性の人初めて見ました!」
ウェス「クス…他にもこんな形にも…」
うわぁうわぁ!色々な形に変えて凄いです!
タツヤ「興奮してんな…」
ネロ「仕方ないですよ
最近まで自分の属性を知らなかった上珍しいですし同属性の方に会えて嬉しいんでしょう」
フォエン「確かにそうだね」
傍らで皆さんがウェスペルさんが淹れたお茶を飲みつつそんな会話をしてました
その頃…ケラスィアにいるウラドは…
―ウラドside―
我は主がいるであろうギルドへ向かって飛んでいる
ハァ…昨晩遅くまで起きていたものだから気がついたら昼近くまで寝てしまっていた…
しかも、ロキの自室とは言えカナの部屋で
不味いな…カナの部屋で寝ていた事を主が知ったら確実に昼食(無論アベルの血)どころか晩御飯抜きにされるな…
そう思いつつギルドに着いた
とりあえず受付の娘に挨拶をした後主がいる訓練室へ行くか
ウラド「おはよう
すまんが我の主…アベルとその友の者達が訓練してる部屋は何処だ?」
受付「もうお昼近くだけどおはよう
アベル君達なら…」
カナ「あり?ウラド?何で此処にいるの?」
ウラド「あぁ、つい先程着いたのでな」
カナが階段から降りて質問してきたので答え……………ん?階段から降りて?
ウラド「カナ、主達はd…」
カナ「その前にこの時間まで何してた?」
笑顔だが、目が笑ってない!!
ウラド「ロキの部屋で寝てました!!」
あの笑顔には逆らってはいけないと本能が悟った!
カナ「へぇ………アンナさん…アベル達が受注した依頼書…」
受付「はい!」
聞いてきた瞬間受付は依頼書をカナに渡した
早い流石に今のカナには逆らわない方が良いと受付も悟ったのだろうな
その依頼書を見たカナはドンドン無表情になっていく
カナ「ウラド…今すぐアベル達のいる所に繋ぐから逝ってこい」
ヒィ!?怒気が半端ない!!後、行ってこいが逝ってこいに聞こえた!?
思わず首を上下に振りまくってしまった!
カナ「よし、ウラド、私から伝言で『今すぐ帰るかウラドの言うこと聞いて依頼完遂しなさい』って伝えてきなさい、後この依頼書渡しておくからちゃんと見るように伝えなさい」
何やら怒りだけでなく若干焦りも感じる
カナは急いで依頼書らしき紙を我の身体に括り付けた後、主達のいるであろう空間へ繋いでそこへ我を投げつけた
―カナside―
私は急いでウラドをアベル達のいる空間へ投げつけた
アンナ「カナちゃん…あの依頼書に何か変な所があったかしら?」
あぁ…アンナさん気付いてなかったんだ…
カナ「アンナさん…あの依頼Bって書かれてますがSですよ」
アンナ「ええ!」
うん、やっぱ驚くよね
カナ「確かに依頼書の中には真ん中にランク記されてる物はありますが…あれはフェイクで本当は隅にSランクって記されてたんですよ」
しかも、Bの隣に小さく(偽)って書かれてあったしね
それにあんな小さく記して…牧場主は被害を出したいのかしら?
そこに血属性のアベルが向かったとなれば…アベルの身が危ない
まぁ、だから急いでウラドを送ったんだけどね
世界の知識で知ったけど、ウラドはああ見えて『始祖の吸血鬼の王』って呼ばれてるからねぇ
―アベルside―
アベル「『始祖の吸血鬼の王』…ですか?」
お互い血属性だとわかって仲良く話してる時ウェスペルさんが出した単語を聞き返しました
因みにネロ達は途中眠くなったと言ってウェスペルさんに寝室を貸して貰って寝てます
多分日頃の特訓の疲れが出たのでしょうね
ウェス「えぇ、始祖の吸血鬼の王と呼ばれている存在がいるんだよ
その始祖は始祖の吸血鬼の中でも
アベル「うわ…怖いですね…」
ボクの使い魔なんて畏れられるどころかタダの食い意地の張った自称始祖の吸血鬼ですから全然怖くないですからね
ウェス「そういえば…同族を襲う事からもう一つ呼び名がありましたね…
確か『同族食いの…」
?「ギャァァ」
ドゴォッ
え!?玄関の方から何か落ちてきた音と悲鳴が……ってスッゴく不愉快ですが声からしてウラドですね
ウェス「一体誰が!?」
あ、ウェスペルさんが驚いて立ち上がってました
アベル「大丈夫ですよ
声からしてボクの使い魔です
多分、ボクの身を心配したアレはカナに頼んでこちらへ送って貰ったんでしょう」
とりあえず、害が無いことを説明しました
ウェス「はぁ………でも、凄い音しなかったかい?」
アベル「あれ位大丈夫ですよ
普段ボクに踏まれてますから」
ウェス「辛辣…」
普段の行動を考えれば当然です
ウェス「でも、放置でいいのかい?
心配して来てくれたって事は彼は君が大事だからだろうし」
アベル「う…」
ウェスペルさんいい人過ぎます
吸血鬼の被害にあってるっていうのに………そうだ
アベル「じゃあ、迎えに行ってきます」
吸血鬼なら吸血鬼のウラドに聞けば何処に隠れてるか解りますよね
とりあえず、玄関に向かってウラドに聞いてみますか
非常に不愉快ですが
――
玄関の扉を開けるとソコには大きな蝙蝠が地面に埋まってました
アベル「何してるんですか?」
ウラド?「ム゙ー!ム゙ム゙ム゙ー!」
埋まってて何て言ってるか分かりませんから引っこ抜きますか
アベル「ヨイショ」
ズボッ
ウラド「ガホォッ!!ペッペッ!主!もっと優しく抜いて!!」
ペッペッて口の中の土を吐きながら土まみれで言ってきました
アベル「嫌です。早速ですが、吸血鬼が隠れてそうな場所を教えてくれませんか?」
ウラド「え?あー…主…実は…―」
気まずそうに頬を掻きながらウラドは此処へ来た理由を話しました
―数分後―
アベル「どちらも嫌です」
内容を聞いて物凄く不愉快になりました
何でウラドの言うこと聞かなきゃならないのですか?
いくらカナの言う事でもコレだけは聞きたくありません
とりあえず、ウラドを置いて中に入りましょう
ウェスペルさんが心配してるでしょうし
ウラド「言う事聞きたくないなら主…帰るとい…」
アベル「一度受けた依頼は破棄したくありません」
土を払った後ボクの隣へ飛んで質問してくるウラドに答えます
ウラド「はぁ…なら、カナに頼まれた依頼書を他の奴らと一緒に読むか…」
そういえばウラドの体に紐が括られていて丸めた紙が付いてますね
――
リビングへ行くとウェスペルさんが紅茶を淹れ直してくれてました
ウェス「あ、その蝙蝠君がアベル君の使い魔かい?」
アベル「はい、非常に不愉快ですがそうです」
ウラド「主酷い!」
やかましいですよ変態
ウラド「ん?主…他の奴らは?」
テーブルの上へ降りたウラドはキョロキョロと周りを見渡した後聞いてきた
アベル「眠くなったみたいなのでウェスペルさんの勧めで寝室で寝てます」
そういえば、あれだけ大きな音なのに起きてきてませんね…
ウラド「は?昼なのに何故だ?」
アベル「日頃の疲れだと思います。
それより依頼書を見せて下さい」
カナに頼まれたから依頼書を見ます
うーん…特に変な所無さそうですけど…
あれ?このお茶さっきと味が違うような…
ウラド「なぁ主、そこの餓鬼はこの依頼主か?」
ウェスペルさんを指差しながらウラドは彼を睨んでいた
え?それ今聞きますか?
心なしかウェスペルさんもウラドを睨んでいます………って、よく考えれたら
アベル「初対面の相手に子供は失礼ですよ!」
ウラド「グハァッ!?」
ウラドを殴ります
子供扱いすればウェスペルさんでも怒りますよ!
アベル「すみませんウェスペルさん!
ウチの使い魔が失礼な事言ってしまって!」
ウェス「あ…いえ、大丈夫ですよ
よくよく考えれば、その始祖の吸血鬼から見れば俺は若造ですからねぇ…」
あれ?ボクには笑顔だ…
でも、ウラドには睨んでいるように見えます…
ボクにはいい人なのに
何でしょうかこの違和感…
ウラド「いっつつ…それで主…ソイツは牧場主か?」
アベル「違いますが…牧場主の方は今出掛けてまして彼はその代理です」
ウラド「………そうか…」
起き上がったウラドは今度はボクの肩へ移動します
が、ボクはすかさずウラドを床へ叩きつけます
ウラド「ガハァッ!?主!何故!?」
アベル「お昼近くまで寝てたからです」
しかも、ロキの自室とはいえカナの部屋で寝るのが許せません
ウェス「クス…始祖の吸血鬼君はご主人様にはタジタジだね…」
ウラド「やかましい餓鬼が
言っておくが貴様は主に近づk…」
アベル「だから初対面の方に失礼な発言するなって言ってるでしょう!!」
ドゴォッ
ウラド「ゴホォッ!?」
また失礼発言をしようとするウラドを殴り落としました
ウラド「うぐぐ…主…酷い…」
アベル「ちゃんとウェスペルさんに謝って下さい
じゃなきゃ暫くご飯抜きにします」
いい人のウェスペルさんに失礼な事ばかり言うウラドにはちゃんと謝罪させないと
ウラド「いくら食事抜きにされようと断る
我は餓鬼に餓鬼と言ったまでだ」
ムッ!只でさえウラドに苛ついているのに今のでより腹が立ちました!
アベル「何でウェスペルさんにそんなに敵視するんですか!?いい人なのに!!」
ウラド「主は騙されてるんだ!
ソイツは…」
ウェス「別に構いませんよ
彼から見たら俺は餓鬼でしょうし…何より早く依頼をどうにかして下さい」
あぁ!ウェスペルさんがとうとう怒っちゃいました!
アベル「うぅ…すみません…
では…例の吸血鬼を探しに…」
涙目になりつつも吸血鬼探しに立ち上がった
瞬間
視界がぐらついて気がついたらボクは床へ倒れていた
ウラド「主!グッ!?」
あれ…何で体が…
「はぁーあ…やっと効いたみたいだな…」
え…?
首は動かせませんが視界だけなんとか動かして声がした方を見ると…
ウラド「ウグッ主…」
ウラドを握り締め屈み込んでボクをニヤニヤしながら見つめているウェスペルさんがいた
え、効いたって…どういう…
ウェス「はぁー…それにしても、今回は番狂わせばかりだったなぁ…
睡眠薬が効いたのは三人だけだし、仕方ないからデザートの血属性のガキを油断させて先に血を頂こうとしたらソイツの使い魔が来るし、その使い魔は俺を警戒するから本当に苛ついたな」
冷たい目でボクとウラドを見詰めさっきまで優しそうな表情と違い過ぎるウェスペルさんに…怖くなった…
アベル「あ…ウェ…」
ウェス「あぁでも、まさか血属性が釣れたのは嬉しい誤算だし、痺れ薬はキチンと効いてくれたからいいか」
いい人だと思ってたウェスペルさんと別人だと思っていた…
いや、思いたかっただけに今の言葉はショックでした
ウラド「グッ…餓鬼が…グゥッ」
ウェス「うるせぇよ雑魚が
こんなガキに簡単にボカスカ殴られてるクセに餓鬼言うな
つうか邪魔だから消えろ」
ウラドを握り締めている手に力を込め始めたのかウラドの身体からミシミシ音がして…
ウラド「ア゙…あ…る…j」
ゴキリッ
何かが折れる音がしてウェスペルさん…いえウェスペルは興味を無くしたようにウラドをその辺りに投げ捨て立ち上がった
今…何が折れたのですか?
え…何でウラドを投げ…
ウェス「さて…次はアベル…てめぇの血を頂くか…」
ウェスペルはボクを見つめ嫌らしくニヤリと笑った
次は……ボク…?え…?ウラドは?どうなったの…?
混乱するボクに…ウェスペルは馬乗りになってボクのシャツを少し剥がす
ウェス「お、そうだ
先ずはアベルは味見程度にして…
その後は上のガキ共の血を全て頂いてからアベルを飼い慣らすか」
何か提案したみたいに…指を鳴らした
というか味見?え?その後に上のガキ共って…まさか…
アベル「あ…う…やめ…」
ダメです…痺れて上手く話せません…
ウェス「ん?何だ?もしかして助けてくれってか?助けねーよ
じゃ…いただきまーす」
アベル「あ…」
皆さんの血を吸わないで!って反論したいのに…声が出ない…
嫌だ!ボクは構いません!ですがみんなの血は…
ボクの首にウェスペルの生暖かい息を感じそして牙が……
「主に手を出すな糞餓鬼が!!」
食い込む寸前
いつもは不愉快に聞こえる筈の声の主がウェスペルの後ろの襟を掴んで後ろへ投げ飛ばした
アベル「あ…ウ…」
「主…大丈夫か?噛まれてはいないな?」
何かを折れた筈なのにボクの首を見たりして心配する不愉快だったその存在に…ウラドを見て何故か涙が出てしまいました
ウラド「えぇ!?あ、主!?何故泣く!?」
泣くボクを見てオロオロするウラド…
何でだろ…いつもはそれも不愉快な筈に今はそれに安心する…
あれ?今度は呆れつつ優しそうな顔になってボクの頭を撫でる
ウラド「はぁ…主…先程から泣いたり笑ったりで…一応言っておくがまだ…」
!?ウラドの背後から凄い威圧感が!
ウラド「糞餓鬼への仕置きがまだ済んでないからな…」
ウラドが振り向いた先に周りに大量の蝙蝠を携えマントを付けた威圧感タップリなウェスペルがいた
ウェス「雑魚の分際でよくも俺を投げ飛ばしたな…殺してくれる」
ウラド「……」
ウラドも対抗するみたいに立ち上がって相手を睨む
ウラド「小魔よ主の毒を抜いてやれ」
ウラドのマントから蝙蝠が一匹出てきてボクの指先に噛み付いた
この蝙蝠…ウラドと同じ性格だ
蝙蝠状態のウラドも指先から血を吸いますからね
ウラド「糞餓鬼…貴様なぞ右腕で倒してやろう」
ウェス「雑魚が!!」
挑発に乗ったウェスペルは大量の蝙蝠をウラドへ飛ばす
でも、ウラドは右手で全ての蝙蝠を払うも背後に両手の爪を伸ばしたウェスペルが襲いかかった
けれど、ウラドはそれを避け右手で攻撃しようとするもウェスペルは後方へ退いた
ウェスペルは再び大量の蝙蝠をマントから出してウラドの動かしてない腕…左手の方へ飛ばした
相変わらずウラドは右手だけで蝙蝠達を払うが…一瞬だけですが…辛そうな顔をしたような…
すると…ウェスペルはまたニヤリと笑った
ウェス「クク…成る程…あの時の折ったのは…てめぇの左腕か」
アベル「え!?」
あの時って握り締められてた時ですか!?
ウラド「だからどうした?
貴様程度なら左腕なぞ使わずとも十分だ」
余裕そうに言ってはいますが…心なしか辛そうです
もしかして、ずっと左腕を庇いながら…
ウェス「しかしまぁ…腕を治さないとは…いや腹を空かせてるから治せないかって言った方が正しいか?」
え?まさか…
ウラド「やかましい糞餓鬼」
ウェスペルを睨みながら蝙蝠を数匹出すウラド
対するウェスペルは大量の蝙蝠を出す
マズいです!どうにか助けなきゃ!
どうすれば…
悩んでいる間もウラドはウェスペルの猛攻撃を避け蝙蝠を数匹けしかけますが…ウェスペルの大量の蝙蝠がその蝙蝠達に群がってウラドへ攻撃…
でも、ウラドは避ける等の攻防戦
どうすれば…第一何で腕を…………
あ、そういえばウラドって…
ボクはある事に気付いて前にカナから聞いた事も思い出す
もしこの憶測が当たっていたとしたら……どうしよう…
このままじゃ…ウラドは…
「プハッ」
その時指先の蝙蝠が毒(?)を吸い出し終えたのか噛み付くのを止めた
ボクはそれを見たと同時にある事を思い付いた
以前カナの武器の本を見せてもらった時の武器とボクの魔武器の能力を合わせれば……助けられる!
でも…お互い早く動いているから当たらないかも…
ウェス「チッ!雑魚のクセに避けるな!!
第一てめぇ等ツレ共がどうなってもいいのか?」
ピタッとウラドが止まった
いえ、それより…
アベル「もしかして…ネロ達に何か…」
嫌だ…もし…皆さんに何かあったら…
ボクの反応を見たウェスペルはニヤリと笑った
ウェス「眠らせてる以外まだしてないぜ…
でも、これ以上抵抗するなら…上のガキ共の傍に配置した俺の小魔共を使って…一体ずつ殺す」
そんな…
ウラド「下劣な…」
ウラドは冷めた目でウェスペルへ視線を向ける
ウェス「あ?コレでも殺すのを我慢してやったんだ
雑魚が無駄に抵抗するからな…いわゆる最後の手段ってヤツだ…」
最後の手段…ネロ達を人質にしてウラドを脅してきた!
ウェス「おい雑魚、さっきも言ったがコレ以上抵抗したら…ガキ共を一体ずつ殺す
だから避けんじゃねぇよ」
ウェスペルは大量の蝙蝠をウラドへ飛ばす
ウラドは基本ボクとカナ以外はどうでも良さげですが…
皆さんに何かあればボクとカナが悲しみますから多分避けないハズ…
でも、お互い止まってる今がチャンスです!
急いでブラッドウェポンで大きな筒状の物を作って狙いを定めて…
アベル「えぇい!!」
筒から弾を発射させた
ドゴォッ
ウラド「グハァッ!?」
弾はウラドに当たった後弾ごとウラドは廊下まで吹き飛んだ
……………しまった…
ウェス「………クク…俺を狙っただろうが…プッ…誤って味方を撃ってしまったようだな…フフッ」
必死に笑いを堪えますよこの始祖は!いっそ思いっ切り笑ってくれればいいの…
って思っていたら何故か下から血が出てきて拘束された!
ウェス「クク…さて…邪魔者もいなくなったし…
いただくとするか」
ヤバいです…拘束されたら時間稼ぎどころじゃありません
どうにかしなくちゃ……そうだ
アベル「あ、あの!そういえばあの時『同族食いの…』の続きなんですが…」
なんとか…話で時間を…
ウェス「…そんな事聞いてどうする?
食料のてめぇには関係ない話だぞ」
アベル「き、気になったからです…」
お願いです…話に食い付いて下さい…
ウェス「………まぁ、いいか
どうせ、昔話だしな」
食い付いた!
後は話を繋げましょう
アベル「昔話って…同族食い…始祖の吸血鬼の王は今はいないんですか?」
ウェス「さぁな…数ヶ月前に行方知れずになってから生きてるかどうか知らんな」
行方不明扱いって事でしょうか…
まだ…時間を稼がなきゃ…
アベル「始祖の吸血鬼の王は何で行方不明に?」
ウェス「それこそ知らんな
あの方は始祖の吸血鬼の中でも大分変わった存在だからな」
変人程強いという例ですか…
カナも強いですが変わってますし
…まだ…ですね…
ウェス「…………さっきと全然違って怖がってねぇな」
アベル「っ!!」
気付かれた!?でも、多分、目的には気付いてない筈です!
ウェス「もしかして…廊下へ吹き飛んだ雑魚が来るのを期待してんのか?」
あー…やっぱり気づきますよねー…
というより、ヤバいです!
ウェスペルはボクの髪を掴んで睨み付ける
ウェス「食料のクセに時間稼ぎとか…舐めてんのか糞ガキ!」
喚いたと同時にボクの頬を強めに叩いた
多分、始祖の力で殴ってしまったら死んじゃうからでしょうね
アベル「ッ…」
痛い…しかも叩かれた際眼鏡が飛んでいっちゃいました…それにしてもウラドは…まだですか…
仕方ないです…
アベル「そういえば…同族食いのウラドって始祖の吸血鬼の王でもあるんですよね?」
ウェス「だから時間稼ごうとしてん……………おい…今何て言った?」
掛かりました
アベル「同族食いのウラドって…」
ウェス「そこで待て!何で名まで言ってないのにウラド様だと知ってんだ!?」
ボクがウラドって名前を知っていて慌ててますね
そういえばウェスペルの前でウラドの事…名前で呼んでませんでしたね…
アベル「前に同族食いというのはカナから聞いたんです
そして、ウラドという名前を知っているのは…」
答えている途中
ボクを拘束に使われていた血が解けたと思った一瞬その血がウェスペルを拘束した
ウェス「なっ!?俺の血が!?」
あぁ…やっとですか…
そう思いながら叩かれた時に飛んでいった眼鏡を掛ける
アベル「遅かったですよ
ウラド」
ウェス「!?」
ボクが呼ぶと廊下からウラドがゆっくりと現れた
ウラド「仕方無かろう…予想以上に威力があった上に血もたんまりだったからな…
飲み干すのに苦労したぞ」
アベル「う…すみません…」
ボクもまさか廊下まで吹き飛ぶとは思いませんでした…
あれじゃ、いくら事前に念話しても意味ありませんもんね…
ウェス「お、おい…そこにいる始祖の吸血鬼はまさか…」
ウラドを見て震えてるウェスペル
まぁ、それもそうですよね…
噂の同族食いが目の前にいれば…食べられるいえ吸血されると思うでしょうからね
ウラド「さて…雑談は後々にして…糞餓鬼に仕置きをせねばな…」
口元をニヤリとさせてゆっくりウェスペルに近付いていくウラド
なんかウェスペルと違って嫌らしくないです
ウェス「ヒッ!い、いいのか!?俺に手を出せば上のガキ共を殺すぞ!」
必死に声をあげて脅しにかかってきました!?
でも、ウラドは気にしてないように近付いていく
ってウラドは何考えてるんですか!?
ウェス「く、来るな!!これ以上来たらマジで殺すぞ!」
ヤバい!ネロ達が…
ウラド「無駄だ…先程この一帯の小魔共と血は我が魔力で我の支配下に入った」
え?もしかして予想以上に時間が掛かったのって…
ネロ達を助ける為に小魔っていう蝙蝠達をどうにかしたから?
ウェス「な、な…」
とうとうウェスペルの前に立ちニヤリと笑ってますが目がまっっったく笑ってないウラド…
対象にウェスペルは顔面蒼白でガタガタと震えてます
ガブゥッ
ウラドは無表情になった瞬間ウェスペルの首に噛み付いて吸血行為をし始める
ウラド「ング…ング…ング」
ウェス「あ゛…う゛ぐ…………」
恐怖で涙目になりながらボクを見るウェスペル…助けてほしいんでしょうね…
ウラド「プハッ…ふぅ…やはり同族であろうと血属性だから美味だな」
あ、遅かった
止める前に飲み干してしまったらしく口を離した
同時にウェスペルは倒れ込んでしまいました
アベル「ウラド…殺ったんですか?」
ウラド「いや、気絶する程度吸血しただけだ」
つまり、生きてるんですね
確かによく見ると白目になって体をピクピクさせてますね
アベル「そういえば…コレで終わりですか?」
よく考えたら、家畜を襲った犯人がウェスペルだと限りませんし…
他に吸血鬼がいる可能性も…
ウラド「あぁ終えた
餓鬼の血から得た情報では…………
腹を空かせたこ奴は家畜を襲い、そこをここの牧場主が目撃された
その後、牧場主に『殺されたくなければ言うことを聞け』と脅す
数日後、偽の依頼書を見て受注したギルド員達に次々と薬を盛り眠った所を食う…吸血して殺した
しかも、襲ったギルド員と同じ者かどうか聞いてからな」
そんな…でも、牧場主さんはどうなったのでしょうか…
ウラド「そして………今朝、潮時と判断し牧場主を食い殺した
だが、その時に主達が現れ今に至る…といった所だ」
牧場主さん…ボク達が来た時には既に…それに…ボク達以外に依頼受けた人達まで…
ウラド「………あるj」
フォエン・ネロ・タツヤ「「「アベル!無事(ですか)(か)!?」」」
廊下からドタバタと慌てた様子でネロ達が走ってきました…
アベル「あ…」
3人の無事な姿を見て安心したから涙が…
フォエン「アベル!?」
タツヤ「ちょ、どこかケガしたのか!?」
ネロ「どこか痛みますか!?」
慌てる3人の問いに首を横に振る
ウラド「安心しろ…この糞餓鬼に薬盛られ吸血されそうになって頬を叩かれ少し腫れただけで無事だ」
ウェスペルを踏みにじりながら3人の問いにウラドは答えた
タツヤ「糞餓鬼って……って、何で依頼主(代理)を踏みにじってんだよ!?」
フォエン「しかも、アベルの目の前で人化して殴られるよ!」
あ、確かに普段なら殴りたくなるのに
ネロ「それより、先程の発言の中にウェスペルさんがアベルに吸血行為しようとした事が気になるのですが?」
そういえば…ネロ達はずっと上にいたんでしたね
アベル「あ、それはあのね実は――」
何があったか説明した後…ネロとフォエンは怖い顔してウェスペルを蹴り始めました
タツヤ「アベル…お前スゴイ奴を使い魔にしたな…」
アベル「確かにそうですね…普段は食い意地張った蝙蝠なのに」
よくよく考えたら…ウラドは逆召喚して契約したんでした…
つまり、本当は凄く強いんですよね
でも、今回は昨晩からご飯食べてなかったみたいでお腹すいて力出せないでいたからピンチになったんですよね…
ウラド「ところで主…あの餓鬼をどう始末する?
肝心の依頼人は………死亡しているから殺しても無意味だ」
ウラド以外『あ…』
そうでした…
依頼主である牧場主さんは今朝ウェスペルに殺されたんでした…
それに、依頼主が既に亡くなってから…どうなるのでしょう…
ネロ「仕方ありませんね…
カナに連絡してみますか」
その後…カナに連絡をした所ウェスペルを一旦連れて帰った後、事の次第を報告して、後日…というよりギルさんの風邪が治り次第相談するという事になりました
因みに、ウェスペルの処分が決まるまでの間ウラドがウェスペルを監視
まぁ…ウラド相手ならウェスペルも無闇に脱走出来ないですし…したら血を飲み尽くすと脅されてますからね
後……あの一件からウラドに対する見方を少しだけ変えてみて…少しウラドと仲良くなろうと思います
だって、よく考えてみたら使い魔契約してコレからも一緒にいる事が多くなるのにいつまでも嫌ってたら気分悪いですし…
何より契約時の事を何時までもズルズル引きずってたら小さいですからね
………今、十分小さいわ!とか聞こえた気がしましたが気のせいですよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます