第2話 挫折した天才の覚悟

 私は『天才』という言葉が嫌いだ。この言葉一つで私の努力を見ようともしないで、「あいつは生まれた時から天才だから努力なんかしてないだろ」と言われる。思われる。


 「春日さん、今日のお仕事は、、」

マネージャーがいつものように今日の予定を教えてくれている。作詞家になりやりたいことで飯が食えている。とても嬉しいことだ。だが、私自身、なにか胸に引っかかるものがある。それが何かは未だにわからない。

「それではバラエティー番組の収録があるので移動お願いします。」

マネージャーが案内してくれた。とてもいいマネージャーだ。こんな私のために色々してくれて。私がマネージャーなら1日でやめているだろう。そんなことを考えていると

「春日さん!この間はありがとうございました!流石天才は本を書かせても天才なんですね!」

テレビ局のお偉いさんがいつものごとくペコペコ挨拶してくる。だが、こいつは私のことをまた『天才』という言葉だけで評価した。

 収録が終わり楽屋へ戻り一冊のノートを開く。

「作詞ノート」

私の命だ。

『天才という言葉で評価するな。天才は凡人からスタートする。生まれながらに天才などいない。だから人間は必死に生きるんだ』

メモ感覚で書き留める。思ったことは書く。それが私の仕事だ。そんな時に春日は〈もしかしたら、世間に訴えかける曲をアイドルが歌えば世間は共感してくれるのではないか〉そんなことを思いつき、すぐに実行に移した。


 「作詞家になる方法」「作詞家オーディション」

暗い部屋にある液晶画面にこんな文字がズラリと並ぶ。光貴は昨日から部屋にこもりずっと調べ続けている。だが、どれもピンとこない。正直、今まで作詞の勉強なんかしたことないし、国語も苦手だ。歌も音痴だ。そんな俺がなんの知識もなくオーディションとかに応募して選ばれるのか。そんなことを考える光貴。ん?待てよ?光貴はなにかを思いついたのか慌てて誰か宛に手紙を書き出した。書き終えると、机に置いてあったスマホが震える。

「はい。山下です。なんでしょうか」

光貴は少しイライラしながら電話に出る。

「なんでわざわざ他人みたいな話し方するんだよー!久しぶりだな!光貴!」

「なんだよ。親父」

光貴は怒りからか小声になっていた。

「母さん元気してるか?父さん金なくなっちゃったんだよねー。母さんにまたお金貸してって言っておいてな?」

始まった。いつものことだ。こいつから電話来るときは金のことしかない。

「無理。じゃあな。」

光貴は電話をきる。ここまでクズになると人間終わってるよな。光貴の父親はギャンブル依存症で毎日パチンコ、競馬といったことをして金がなくなると母さんに頼み貰う。貰えなかったら母さんを殴る。ヤバいやつだった。そんな生活が辛く僕が母さんに頼み離婚してもらった。母さんは最後まで渋っていたが承諾して離婚してくれた。俺が母さんを守って金銭面でも楽にしてやる。そう決めたのだ。

 さっき書いた手紙を出しに行き、家に戻る。この手紙が日本中を震撼させる手紙になるのだ。

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