僕が天才に勝つには。

かみむら。

第1話 『挫折した天才』

 あなたは『天才』に出会ったことがあるか?スポーツの天才。勉強の天才など、世の中には数多くいる。だが、僕が出会った『天才』は少し違った。彼は『言葉の天才』だった。


 僕は挫折した。理由は言いたくない。だが、生まれて16年の中でこんな気持ちになったことはないし、この先もこんな気持ちになることはないだろう。この気持ちを少しでも楽にしたく僕はスマホを開いた。いつものようにイヤホンをつけ適当に音楽を流す。

『君の夢はなんだ?大人の夢のために君がいるんじゃないよ?なら、一歩踏み出してごらん。君だけの道を』

 そんな歌詞の曲が流れてきた。いつもは適当に聴いているだけの曲。だが、その時だけは違った。僕はスマホを開き、曲ではなく、何故か作詞家を調べていた。〈作詞:春日隆〉この曲を書いた人物だ。彼の書いた曲を調べ聴くと目から涙が落ちていた。

 これが『言葉の天才』春日隆のことを初めて知った日だった。この時『作詞家』になりたい。そう思った。


 家に帰りすぐ部屋にいく。暗い部屋で僕は考えことをしていた。すると、脇に置いてあっスマホが明るくなる。

「光貴、大丈夫か?あんまり気にするなよ」春人からだ。親友からのメッセージですら、今は返したいと思えず、既読無視をしそのまま考え事を続けた。翌日、高校に向かうために駅にいると

「なに、無視してんだよ!わざわざ心配して連絡してやってるのによ」

いつものようにふざけた感じで話しかけてきた。春人のこういうところが好きじゃない。

「悪かったな。次から返すよ」

素っ気ない言葉で返す。春人はその空気を察したのか少し離れて歩いていた。僕は気にせずイヤホンをし音楽を聴いた。

 電車を降り歩いていると学校の前に沢山の人が集まっていた。イヤホンを外し近づくと

「キャー!健太君!こっち向いてー!」

いつもの光景だ。学校1のイケメン、秋山健太が登校すると女子がアリのように集まり毎日同じようにやっている。飽きないのかと毎回思うが、正直今はどうでもいい。その光景を横目に教室に向かった。この秋山健太がこの先、光貴の大きなライバルになるとはこの時本人はもちろん誰も知らなかった。


 これが『挫折した天才』山下光貴が作詞家を目指すための第一歩であり『天才』が誕生した瞬間だ。

 

 この作品はいつかノンフィクション作品になるかもしれない。

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