男女共学とかありえねぇし

 そもそも悲劇の引き金は今年、この学校が共学になってしまったことだ。


 俺、高見律(たかみりつ)と矢口陽斗(やぐちはると)は幼馴染だ。


 俺は子供の頃からハルのことが好きだった。


 俺がハルのことを友人としてではなく、女の子を思うように好きだと意識し始めたのは小学校6年の修学旅行がきっかけだ。


 一緒に風呂に入ったときに女の子みたいに可愛いなと不覚にも思ってしまったのだ。


 ハルの妙にセクシーな下半身を見てドキドキしてしまった。


 綺麗な顔をしているハルは小学校時代から「王子」というあだ名をつけられモテていた。


 しかし、ハル本人はサッカーが好きで全く女には興味なさそうだった。


 俺たちは教育熱心な親を共に持ち、同じ進学塾に通っていた。


 女のように綺麗なハルに彼女ができるのがイヤだった俺は小学6年生のとき、ハルに一緒に男子校を受験しようと提案した。


 ハルの母親と俺の母親は仲の良いママ友だ。


 「名門校だし男子校のほうが恋愛沙汰で足を踏み外さなくていいかもね」と親たちは賛成してくれた。


 その恋愛沙汰で俺が男子校を受験したいと思ったとは夢にも思っていなかったらしい。


 俺たちは無事二人とも合格し、家も近いので常に登下校を共にした。


 これで俺がハルを毎日見張っておけば問題なしと思っていた。


 ところがである。


 去年、先代の理事長が死んで、その娘が新理事長に就任したんだが、そのおばんが男女平等の精神とかゆーマジでいらねー価値観を持ちこんで今年の春、この学校が男女共学になってしまったのだ。


 俺たちの高校一年の学年から高校受験組に女子が入学できるようになってしまった。


 大誤算だ……


 やっぱりというか、俺もモテるがハルもモテた。


 俺は女どもがハルにちょっかいを出さないように常に見張らねばならなくなった。


 でもこの前、学年一の美女と呼び声高い女が俺に話があると声をかけてきた。


 俺はしょっちゅうハルに近づいてくるこの女が大キライだった。


 もしハルが好きだから協力してほしいとかゆーお願いだったら叩きのめしてやろうと思い、俺はその女に指示された体育館の裏に行った。


 行くとその女は俺のことが好きだから付き合ってほしいと言った。


 拍子抜けしたが、即お断りした。


 ところが、その後だ。


 ちょっと目を離した隙に、ハルは別のところで女に捕まり、告白されていたらしい。


 くそっ! と思った。


 俺はつい先日起きてしまった悪夢を思い出してイライラしながら帰りの準備をしていた。


 うちの学校は成績順にクラス編成が行われている。


 成績の良いハルは絶対にトップクラスのA組だ。


 だから俺もハルと同じクラスになるために死に物狂いで毎日勉強だけはしている。


 帰りの会が終わり、「律! 帰ろう」とハルが言った。


 相変わらず全力で可愛いと笑顔を見て思った。


 帰りながらハルが言った。


 「あの律さぁ、相談があるんだけどさ」


 「何?」


 可愛いおまえの相談なら何でも聞くよ。


 「日曜日に恵ちゃんとデートすることになったんだけど、初めてで自信がないんだ。どういうとこに連れて行ったらいいと思う?」


 恥ずかしそうにハルが言う。


 前言撤回。


 そんな相談ぜってーのってやらねぇ。


 怒りでブチ切れそうだった。

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【BL小説】親友と予行練習 黒川蓮 @renku

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