第2話 まだ好きじゃない?
夏休みの間に籍も入れて結婚式など終え、私の彼女である高垣睦美は島田睦美となった。
お父さんと新しいお母さんの幸せそうな顔を見ていると同じように幸せな気持ちになる。
まだお母さんって呼ぶのはちょっと恥ずかしかったりするけど、これから慣れていけばいい。
私は高垣さんの呼び方を変えて睦美と呼んでいる、こちらも慣れるのはちょっと時間がかりそう。
睦美も私の事は希妃と呼んでいる。たまにお姉ちゃんと呼ばれたりもする。
絶対からかわれている。
夏休みが終わり、学校に行くとお父さんが連絡をしてくれていたみたいで、再婚の事は先生に伝わっているようだ。
学校では少し騒ぎになっていたが、騒がれているのは睦美の方で私はいつも通り大人しく過ごしていた。
たまにチラチラと見られたりはしたけど、ほとんど気にならなかった。
放課後図書委員会の当番の日なので、図書室で受け付けに座ってボーッとする。
図書室にくる人なんていないから楽ではある。
「今日は大変だった?」
「ん?なにが?」
隣に座っている同じ図書委員会の男の子、
「えっと、高垣さんの事で何かあったかなって思って。あ、今は島田さんだね」
「ああ、その事ね。私は何ともなかったよ。大変だったのは睦美の方だと思う。私はあんまり目立たないから」
「そうなんだ」
「うん、ありがとう」
ガラガラとドアが開いて滅多に人が来ない事で有名な図書室に一人の女生徒が入って来た。
「希妃、こんな所にいたんだ」
「あ、睦美。どうしたの?」
「別に、一緒に帰ろうかと思って」
「あー、私図書委員会の仕事があるから先に帰ってて。ごめんね」
「んー、じゃ待ってる」と言って適当な本を取って席についてペラペラと本をめくりだした。
「仲良いんだね」
「う、うん、まあね」
付き合ってる事は絶対に言えない。
バレないようにしないと。
「もう一緒に住んでるの?」
「いや、まだだよ。今週末に引っ越してくるみたい」
山河君と話しているとたまにではあるが睦美がこちらを見ていた。
時間が来たので後は先生に任せて図書室を出た。
山河君とはバイバイして待っていてくれた睦美と一緒に帰る。
今はまだ別々の所に帰るけど、もうすぐしたら一緒の家に帰ることになる。
楽しみだ。
「あの男の子と仲良いの?」
「山河君?図書委員が一緒だからその時に話すくらいだよ」
「ふうん」
「どうしたの?」
「うーん、なんかモヤっとしたというか...」
「そ、それって、ヤキモチとか?」
「どうだろうね」
「わ、私、睦美の事が好きだがら」と言って思い切って手を握る。
睦美は何も言わなかったが手を握り返してくれた。
沈みかけの太陽のせいなのかどうかは分からないが睦美の顔が赤く見えた。
睦美は誰かを好きになった事がないと言っていたけど、そうゆう感情に気付きにくいだけなのかも。
気付きにくいその感情に気付いたらいったいどうなるんだろうか。
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