第7話 王道イケメン

 

目の前のホワイトボードには、

 『自然学校実行委員会』の文字。


同じ空間には他クラスの生徒たち。

隣に三木ともう1人。


どうしてこうなっているのか、僕にはわからない。


いや分かってはいるが、ただ不本意なのである。





「オレやりまーす!」


自然学校の実行委員決め。

三木が元気よく手を挙げたのはいいとして。


「あとー、こいつも一緒にやりまーす!」


と三木が僕の腕を掴んで叫ぶ。


「え?!無理無理!」


「じゃあとりあえずその2人は決定でー」


必死に首を横に振る僕をよそに、ついさっき決まったばかりの委員長が黒板に三木と僕の名前を書く。


周りから形式的な小さめの拍手が起こる。


マジか。そういうめんどくさい委員的なやつは今まで避けてきた人生だったのに。


「いいじゃん、楽しそうじゃん!」


「三木は知らないけど、なんで僕まで…」


「え、ゴサツ、まさか他の委員会入りたかったのか?!それはごめん!」


「……いや、違うけど」


下を向いて黙っている大半のクラスメイトと同じでただやりたくないだけなのだが、そんな理由は三木には通じないようだ。



「あと1人か2人誰かお願いします」


と、緊張気味に言いながらみんなを見渡す真面目そうな委員長に今更やりたくないとは言えない。


実行委員って何するんだよ、

今のところ面倒くさい将来しか見えないんだけど。


「あのーあと1人でいいので、誰かやりませんか」


重そうなメガネを鼻の上にずり上げながら遠慮気味に言う委員長。


かわいそうだけど、

誰もやりたくないよな。わかるわ。


そもそも最初に学級委員長がすんなり決まったのが奇跡だと思うのだが。


「じゃあ、いないようなら後回しにします…」


後回しにしたところで急にやりたくなることなどないとみんな分かっている。


こういう雰囲気で手挙げれるやつは本気ですごい奴だと思う。僕にはできない。



「じゃあオレやろっかなー」


少し間があり、スッと手を挙げたすごい奴は…

あの王道イケメンだった。


周りから起こるさっきより大きめな拍手。


委員長のホッとした顔を見て僕も安心する。


「生活委員かなんかやろうかなって思ってたんだけど、別になんでもよかったし全然やるよ!」


と爽やかな笑顔で爽やかなことを言う。


…性格もイケメンなんじゃねえか。



「えーと、自然学校の実行委員はこの3人で決定しますね。じゃあ3人は放課後会議室にお願いします」


「了解でっす!」

「はーい」

「……はい」



というよくわからない流れで僕は今会議室でパイプ椅子に座っている。


時間になるまで、配られた紙を読みつつ三木と王道イケメンの会話に耳を傾ける。


「まだ名前言ってなかったよな、高瀬レンです、よろしく!」


王道爽やかイケメンの名前はレンか。


レンって名前の奴はほぼ確でかっこいいというのが事実だということがこの瞬間判明した。


親が僕をレンと名づけないでくれてよかった、などとどうでもいいことを考える。


「オレは三木セイヤ!で、こいつは…」


三木は毎回自分と一緒に僕を紹介してくれる。

いい奴なんだろうが、まず本名で紹介してくれ。


「ゴサツくんでしょ?チアキから聞いたわー」


……うん。あ、そういう感じね。


もうだんだん広まっちゃってる感じね。


えっと、チアキ…って松井さんのことか。

松井さん、気に入ってるというか若干おもしろがってる感じね。


「そうそう!松井さんが名付け親的な感じだよな!てか、高瀬って松井さんと仲良いのか?」


名付け親…ね


「おう、同じ中学なんだよね。ゴサツくんっていうあだ名になった子がいるって言ってたわ笑」


松井さんから僕についての話題が出てきたことは喜ばしいが、なんか思ってたのとは違う。


「なあ、オレもゴサツって呼んでいい?」


「え、あ、うん…まあ」


そんな目を輝かせて言われたら断れない。


「オレはレンでいいよ!逆にそれしか呼ばれたことないし」


いや僕もこんな変わったあだ名は人生初だけれど。


「じゃあオレがレンにあだ名つけてやろうかー?」


「いや、遠慮しとくわ笑」


「そっか!オッケイ!」



あ、断られる場合もあるんだ…

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