第60話 ミズーリの異常と一つの回答
歩いているうち雨が止んだので、傘と本格的にミズーリの腕の中で寝てしまったチビを万能さんにしまう。
ミズーリが少し惜しそうにしていたが、何あとでいくらでも遊べるから、眠い時は寝させなさい。
「何か」が沢山突き刺さっている丘をスルーし、本日のキャンプ地を探しながら歩く。
丘の方は万能さんに始末を任せようか。あの丘、多分地元の農家が里山として使ってそうだし。
はい、任されました。
…あなた最近明らかに意思、意識あるよね。
人家はたまにあるが、あまり近寄らないよう畑の畦に避難したりと道のりはちっとも進まない。進める気も特に無い。
「トール。」
何ですか?
「なんか疲れた。」
え?
「私、女神だし通常は肉体的疲労って感じないんだけど。なんか疲れた。」
ふむ。足が痛いとか、身体が重いとか自覚症状がありませんか?
「生まれてから今まで疲れた事が無いから分からない。」
万能さん…何故か無反応。
つまり、そっちのパターンか。
ならばさっさとキャンプ地を決めないと駄目だな。
しかし、ここだと畑の真ん中で家を展開する敷地がないし。空中に浮かべば良いけれど。
……思ってみるものだな。浮かんだよ、家が。なんならと中に入ったあと、更に高く浮かべてみる。固定しなさいと万能さんから指示が来たので、飛行船にアンカーを垂らすイメージで完了。
早速チビが尻尾を全力で振って私達を出迎えてくれた。
ミズーリには先に風呂へ行けとバスタオルを首にかけてあげると、素直に浴室に向かった。
女神の身体にどうかは分からないが、通常はぬるめのお湯にのんびり浸かり血行を良くする事で疲労回復効果がある。
あ、そうだ。
ミズーリ、ちょっと済まん。
「いやん。」
元気そうだ。というか、まだ脱衣所で脱いでないじゃないか。
慌てて隠すんじゃなく、慌てて脱ぎだすのは女の子としてあちこち間違えてるそ。
「やっと一緒に入ってくれるの?」
「ちょいとな。」
湯に漢方系生薬を溶かし、湯船にも細工。
ジェットバスにしてみた。シャワーもヘッドを変えて打たせ湯機能をつけてみた。
「とりあえず色々やってみた。晩御飯には夕べのでリクエスト通り、貝とキノコのバター焼きを作る。今は何も考えずグデっとしてなさい。」
「一緒に入ってくんないの?」
くんない。チビも遊ぼうと鳴いてるし。
部屋に戻るとまた少し拡張する。で、広げた部屋の隅にマッサージチェアを据え付ける。
それも、お値段お幾ら万円するか確かめもしなかった、家電量販店て味わったあの天国椅子だ。肩・背中だけでなく両手両足のストレッチまでしてくれる優れもの。
この世界には来て疲労と肩凝りには縁がなくなったとはいえ、気持ちいいものは気持ちいいのだ。
早速体験。ああ気持ちいい、眠くなる。うにうにうにうに。身体がうにになって居るとミズーリがお風呂から上がって来た。長風呂だった事があれこれやって正解だったと分かる。
まだ晩御飯前なのでパジャマではなく部屋着だ。
「ミズーリさん、ちょっとこちらへいらっしゃい。」
「?。」
トテトテと近寄ってくる女神さん。
「私はこれから一つ変な事をする。嫌なら断って構わない。いいね。」
私が変な椅子に座っている件が不思議そうだったが、基本ミズーリは私の言う事を拒まない。
「ミズーリ、足を見せてくれないか。」
「どうぞ。」
勢いよくズボンを脱いで下半身ぱんつ一丁になる女神。裾からたくし上げるという選択肢はなかったらしい。そんな女神の太腿に私はそっと触れる。
「ひゃん。」
ミズーリは悲鳴をあげるが、私の顔を見てふざける事は自重してくれた。
でも私は容赦なく宣告する。
「ミズーリ。足が太くなってる。」
「なななななななななんですってぇ!」
騎士アリスに続き、「な」の人がここにも一人。それはともかく、下半身ぱんつ一丁で私に掴み掛かる前に話を聞きなさい。あと、ズボン履いて。
「やだ。なんならぱんつも下げる。」
下半身すっぽんぽん女神が我が家の名物になっても困るので、ぱんつ一丁のままマッサージチェアに座らせてみた。たちまち溶け始める。チョロい。でも女の子がぱんつ一丁でマッサージチェアに飲み込まれるという絵面。
「毎日歩いているから筋肉がついちゃったって事なの?」
「いや、さっき脱衣所で君が脱ぎ始めた時に見えたんだけど。」
「見せたの!どうだ!」
「ハイハイ。」
「むうむう。」
ちょっと可愛い。
「足にね、脂肪が付いているんだ。」
「トールのせいよ。トールのご飯が美味し過ぎるからよ。責任とって。今すぐ結婚して。」
勿論放置。
「贅肉と言う意味の脂肪ではないよ。女性として身体に丸みを帯び始めてきてるんだ。」
「そうなの?だって別におっぱいもそのままだし、毛も生えてないし。」
ミズーリさん、言い方。
「つまり、若干ではあるが前回と同じく身体の成長が見受けられる。」
「!!!。」
私に抱きつこうとしたみたいだが、マッサージチェアから動けないミズーリは
身体の動く場所を使って喜びを表現する。
「それにしてもトール。よく分かったわね。私でも気が付かなかったのに。」
それはねミズーリ。君がしょっちゅう私に裸を見せていたからですよ。あと、毎晩私に足を絡ませてきますしね。
「ミズーリ。それで君の成長についで一つの共通点が見つかった。」
「それは何?」
それは、
「私達が人を沢山殺す事です。」
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