第44話 午後はまるまるDIY
何かに接触されようと、女神のあからさまなツッコミ待ちにいちいち付き合ってあげようと、私のする事は変わらない。
バンガローの改築と食事の準備だ。
現実問題として私達は常に受け身なのだ。
ミズーリの悪ふざけも能動的な動きが取りようがない故の暇つぶしだ。多分。
さて、かねて(昨日)からの計画通りキッチンスペースの確保を始めよう。元々自動車2台分のスペースに合わせてシングルベッドを並べただけがスタートだったね。浴室スペースやトイレの別部屋を付け足したとはいえ、母屋スペースは一度だけ何の計画も無しに少し広げただけかな、テーブルセットを室内に置きたくなったので、座っていたミズーリごと放り込んたんだ。
シンクの横にシステムキッチン風設備を取り付けて、壁を一尋だけ奥に移動させる。
風と言うのは、別に私が全部用意して私が全部調理する訳では無いからだ。結局は万能さんにお任せがどんどん増えている。
床と絨毯が一緒になって広がって行くのが楽しい。テーブルの向きを変えてキッチン向きの席は私、反対側がミズーリ。
最近ミズーリが直ぐに溶け出す事と私の隣で世話焼き女房になった経験から、椅子を長椅子に置き換えた。ふかふかの座布団と枕代わりのクッションも置いておく。
服を脱いで絨毯で転がる事をお気に入りにされては堪らない。
ベッドの足の向きをキッチンにしておけば、寝起きでも甘ったれ女神は私の姿が直ぐ確認出来る。
これでミズーリの願いも叶う。少し恥ずかしい。空いた空間の壁にモニターを取り付けて、これまたお高い立派なソファを据える。
駄目人間ゾーンの出来上がり。
あとは、生前の自宅を思い出し冷蔵庫を置いてみた。中身は氷とアイス、水にジュース類、果物を含むデザート各種を入れておく
。
「何何何何何何何何何。」
何何何さんが風呂場の改装を完了させたか戻って来ました。
「どうしたのコレどうしたの?」
女神がリフレインしか叫ばなくなった。
君の希望通りに朝目が覚めても私が直ぐ見える様に改築しただけですが。
「ーーーーーー。」
ミズーリは私に抱きつくと私の背中をぱんぱん叩き出した。痛くはないけどくすぐったい。
「ずるいずるいずるいずるいずるい。」
いつからこんなに甘ったれ坊主になってしまったのだろう。この子。
「トールは私の予想を簡単に越えてきちゃう。」
いや、君がそうしてって朝騒いだじゃないの。女神に拘束されると逃げられそうにありませんし。
「逃がさないし。逃げる気なんか私の手管で無くして差し上げるザマス。」
また変なキャラが出てきた。反応が面白そうなので冷蔵庫を開けさせみた。中身を見た瞬間ミズーリは固まった。よく固まる女神様です。
あ、溶けた。跪いてる。
「トール、愛してる愛してる愛してる。だから私を愛して沢山愛して朝まで愛して腰が抜けるまで愛して。」
下ネタで返さないのならば、この子を気の済むまでいじってみたい。
「いじって良いわよ?ねえ早くぅ。」
言葉の選択って大切だなぁ。反省。
コーヒーを入れると、モニター前のソファに腰掛ける。万能さんがいつの間にか生前に愛用していたカップまで再現してくれた。
ミズーリは沢山用意しておいたデザートやジュースではなく、ただの水を抱えて私の隣に座る。思った以上に腰が沈み込んだせいか、変な声をあげながらも必死に水を一滴も溢さない様にコップを支えていた。
少し考えごとをしたかったのだけど、ミズーリを無碍にする訳にもいかない。
何故ならミズーリは私の腿に手を置いて私の顔をじっと見つめているからだ。
この女神はオンオフをわざと盛んに切り替えて、私達の空気を重くしないよう努めている。
ミズーリと同衾しているただの人間にも、それは伝わっているのだ。
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