第36話 蕎麦食べながら殺戮してみた

寿司、鰻と来たから少し軽いものにしたいな。

「ラーメン。」

重いから嫌だ。とラーメン大好きミズーリさんのリクエストを無視して考えたのは蕎麦。お蕎麦。 

副菜の天ぷらを充実させれば、我が家の食いしん坊も大満足。

「本当に私を満足させてくれるの?」

任せない。ん?なんか今いやらしかったぞ童女ミズーリ。

珍妙なエロポーズ取るな。笑うな。

と言っても蕎麦は市販されている(どこで)二八蕎麦の乾麺を使うので茹でるだけ。

別の鍋に胡麻油をたっぷり入れて、鯵・烏賊・海老・蓮根・さつまいもの、ナスを溶いた小麦粉に潜らせたら熱い油へじゅう(あとは万能さんにお任せ)。

私用に山芋でとろろを擦っておく。とろろ芋でなく天然長芋なのが嬉しい。万能さんどこかで掘って来たのかな。

更にもう一品。出汁をたっぷり吸わせた油揚げを半分に切り、白胡麻まぶした酢飯を詰めて簡単お稲荷さんを二個ずつ。

お漬物に少し辛めに味付けられたきゅうりを3かけずつ添えて。美味しく出来ました。

私はシンプルな冷やしとろろ蕎麦を、ミズーリは天ざる蕎麦を。更に私のとろろも希望して持っていきやがった。私はただの冷やしかけ蕎麦になってしまった。ちくしょう。


「はふぅ。」

完食すると絨毯に寝転がる女神様。

これで全然太らないのは羨ましい。けど、スカート姿の女の子が床で大の字になるのはどうかと思う。捲れてるし。

「ねぇトール。」

「ん?」

「外静かになっちゃった。」

「何人だった?」

「60人丁度。」

そうか。じゃあ万能さん万能さん。

私がバンガローに入る前にした一工夫が見事にハマった様です。

大した事じゃあない。前世で観光に行った関東のとある城址。あれを再建してみた。

と言っても深さ5尋くらいの空堀をバンガローの周りに掘っただけ。食事の邪魔をされなけば良いだけだったのだけど、

私の行動を見ていたミズーリが幻覚の魔法を侵入者にかけて、万能さんが堀をグリグリ動かして全員堀に落としたんですね。

全員墜落死してるなこれ、空堀を埋め戻せば証拠隠滅。本来なら掘り起こされた土砂は土塁として利用されるが、そのまま空間転移させていたので、元ある場所に戻せば植生に変化もなくら土の色もおんなじ。ちょうど雨の日だし。

謎の侵入者が土中深く埋まっているだけだ。

「ねぇ、今分かったんだけど、これみんな衛兵の制服着てるわね。」

本物? 5ダースだし意図的な人数かもね。

「さあ?」

まぁ今更いいか。ん?

「なあに?」

「私が万能さんに念じた事は空堀を掘ってもらうだけだ。堀を動かして侵入者を落として欲しいまでは念じてない。」

「つまり?」

「つまり今日は積極的に万能さんが動いた。」

何故だ?昨日とどう違う?

「色々考えないといけない事はあるわ。ほら、丘陵地帯を離れたから消えたけど、あの変な気配もそう。何より。」

何より?

「今日は何処をキャンプ地として、晩御飯に何をたべるか!よ!」ばばん。

その効果音と演出は女神の力かも知れないけど、中身がへっぽこ過ぎてドリフです。

「荒井注が好きなの。」

君は一体何者ですか?

「死と転生を司る女神ミズーリです。」

なんかもう。


馬鹿をするのはいつもの日課。適切に食休みを取った私達は街道を離れて南へ向かう。

周りに気を使うのが面倒になったので、だだっ広い草原で正面から叩き潰す事にしたのだ。誰かを。

雨が小降りになって来たので傘を畳む。

馬のいななきが聞こえる。馬ねぇ。

「騎馬が大体100人。歩兵が200人。この領内の正規兵ほぼ全てかしら。」

私兵とかじゃないんだ。

「曲がりなりにもここを治めるのは王族だしね。」

「私達何かやったか?」

考える限りこちらからちょっかいかけたこの世界の人、皆無だと思うんだけど。

「どうするの?」

「一応、話は聞こう。」

「お話にならなかったら?」

「それはそれで。」

300人くらい瞬時に全滅させる手立てなんか幾らでもある。何しろこちらは不老不死の女神と、万能の力を操る女神の主だ。

でも余り殺したくないなぁ。正規兵減ったら隣の国が攻めてくるかも知れないじゃん。

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