第35話 やがて少し近づく二人

さて、今日の行動指針ですが。

「お風呂を大きくして下さい。近い将来、私達二人が仲良く入浴出来る様に。」

それは暇が有ればやっても良いけど。

だから何で言い出した君が照れているんですか?

「トールが断らなくなって来たから?」

飼い犬だって3日も飼えば情も移ります。

「ワンワン。クゥーン。」

いや、女の子が飼い犬呼ばわりされたら怒るとこでしょう。

なんで四つん這いになるの。土下座コンボとか私は求めてませんから。だからするな。

「私がトールの下僕である事を忘れたの?なんなら貴方の肉奴隷に堕ちても構わないんだからね。」

ああ、うちの女神様がどんどんおかしくなっていく。

「トールの調教のおかげなんだからね。」

その口調すっかり気に入った様ですね。

いい加減本題に入ろうよ。

「連泊するか出て行くかね。どうしよう。」

この旅に出てから初めてミズーリが私に判断を委ねて来たかも。

「連泊すると?」

「また攻めてくるかも知れない。」

「チェックアウトすると?」

「また攻めてくるかも知れない。」

どうしろと。この街を死体塗れにする事は簡単だけど、さすがにそれは

「面倒くさいなぁ。」

「右手動かすだけでしょ。大丈夫。何人殺しても地獄に落ちないから。最初天界で言われなかった?」

言われた。けど私の精神衛生上ねえ、

「その為にも私達は一緒に寝てるの。私が貴方に一方的に恩恵を受けているだけじゃないのよ。私達は一連托生。」

やっぱりそうだったか。そういえば、私が最初に人を殺した時にミズーリは私のベッドに潜り込んで来たんだった。

アレは女神としての行動だったわけだ。

「だからトールは私に隠し事は出来ないからね。浮気なんかしたらみてなさいよ。」

私の心の声はミズーリには全部筒抜けだったね、そういえば。

だから赤くならないの。私は別に恥ずかしい事何も考えてないよ。

「あからさまに受け入れられても恥ずかしいのよ!」

……

「今面倒くさい女って思ったな。泣くぞ。ホテル中に響く声で。コンチクショー」

こんなのが私達の日常なんでしょうけど。もう少し私好みに変えていけると嬉しいな。

「貴方好みの女になるから捨てないで。」

第二次性徴期前の童女のセリフですかこれ。

「光源氏計画が神の赦しの元でやれてるのよねえ。」

若紫は君なんですが。いいの?

「いいの。カモン!」


結局チェックアウトする事にした。

どんな高級ホテルでもトールが作る家の快適さに勝てない、あの家は私達の家。

とミズーリが宣言したからだ。 

ならば色々手を加えないといけないな。

アレはテントよりはマシだろうと、即興で作ったものだ、。まだまだ足りていない。

雨がしとしと降る中、昼過ぎに相合い傘の私達はスタフグロの街を出た。横断にはそれなりに時間がかかったが、それは私達を監視する意識を感じたからだ。

何度か裏通りを歩いたり誘ってみたのだか乗ってこない。万能さんなりミズーリさんなりがその意識を刈る事は容易いが、街中でそこまでやる必要も無かろうと判断した。

途中で興味をなくしたミズーリは昼飯の事しか考えなくなったし。

「どこでご飯食べよう?」

これは店の種類や場所を考えている訳ではなく、私達がどこでテーブルを出すか考えているのだ。

まだ街が近く人通りも多い。出来る限り人目のない場所が良いが、それには街道から結構離れなければならないんだけど

雨で原っぱ濡れてんだよね。ミズーリの我慢出来る時間もアレだし。

あれ?この女神様こんなに意地汚かったっけ?

「トールの調教のおかげなんだからね!」

しれっと言われたが、私にも自覚ある。責任取らにゃあかんか。

「あかんよ。」

分かりましたよ。

「ならどうしよう。バンガローを見えなくなる事が出来るなら、直ぐ脇で展開するけど。」

出来ました。さすが万能さん。ならばバンガローに入る前にちょっと一工夫。

を、終わらせて中に入ると、絨毯の上で寝転がったミズーリが早速ふひぃと溶けてたので一言。

「脱いだらご飯抜き。」

「……分かりました。」

その間はなんですか?

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